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リアルorシュミレーション?

「え〜そのバルなんとかってなに?」

一人状況がまるで見えていないティファ。

「分かりやすく言えば敵よ。」
「ああ〜なるほど。」

ポンっと手を叩くティファ。

「…数は?」
「戦艦タイプ2と、突撃艦タイプが3よ。」

フェルの問いにすばやく答えるエリナ。

「これって私の不幸が呼んだのかな。」

不安がるティニー。

「偶然だって。ドンマイ♪」

それを励ますティファ。

実際、状況は悪い。
フェルの紋章機は特訓用ということでペイント弾しか積んでいない。
他の4人はそのペイント弾によりメインスクリーンが真っ赤でろくに物が見えない。
しかも敵の布陣はちょうどよくこちらの帰路の方向である。

「…エリナさん。例の機能は今でも使えますか?」
「!…なるほどね。」

その一言で全てを理解したエリナ。

「ひーちゃん。お許しが出たわよ〜。」
「ということは…」

二人の目の色が変わる。

「皆さんここはあたいたち二人に任せてください。」
「え、二人だけで大丈夫なんですか?」
「当然。」

自身ありげに答えるエリナ。

「気をつけてね。」
「大丈夫だよ。」

いつもと違い少し強気の瑠兎。

「それじゃ〜いくわよ〜リアルじゃないと使えない技といった所よ。」
「それでは、いきます!シュミレーションじゃ見せれない私をお見せします。」

二人は声を合わせ敵の方向へと紋章機を動かす。
そしてサブモニターをじっくり見つめながら…

「10秒後ポイントf0508で行きます!」
「了解!」

「10・9・8・7・6…」
「5・4・3・2・1…」

緑色の閃光が2機を包みこみそして放たれる。

「「融合」」
 

「一体なにが起きてるの?」

目の前の状況に慌てふためくティニー。

「綺麗〜」

その光に見惚れるティファ。
 

閃光がしずんだ時、そこには2機あったはずの紋章機が1機のみとなっていた。
エリナのサテライトイージスはその姿を完全に消していた。
そして瑠兎のグリューナインスの姿が変化している。

「これって。まさか…」
「合体?」

そこでエリナから通信が入る。

「正しく言えば融合よ。」

「エリナさん」
「エリナちゃん」

「あたいのサテライトイージスはこのグリューナインスと同質で出来てるからこんなことが出来るのだ。」
「「へ〜」」

「エリナちゃん。説明は後で。今は敵を!」
「分かってるって。」

今の融合によってコックピットも大きく変化していた。
エリナが前に座り特殊なコンソールを目の前に展開させる。
そして中央には何かを刺すため台座が設置されており、その少し上のほうに瑠兎が居る。
メインモニターにはしっかりと周囲の様子が映しだされ、さらに様々なデータが表示されている。

「パラメータ展開…」

エリナは手元のコンソールを手際よく打ち込む。

「PPの出力値、及びED機関正常可動。
Eシールド出力値安定。
適応率82%
感応率76%
負荷率11.4%
ノイズ率2.2%
やっぱりさっきの戦いでやっぱパラメータ下がってるわね。」
「どこまでいける?」
「性能の120%は引き出してあげるわ。」
「さすがエリナちゃん。武装構築はどこまでいける?」
「クラスAを3回って所よ。」
「わかったよ。」

それを聞いた後、瑠兎は操縦桿を握り、エリナはコンソールを打ち込む。
姿を変えたグリューナインスは一番近くの突撃艦へと進路を向ける。

「武装構築!収束電子砲!」

瑠兎が叫ぶと同時に紋章機の中央に砲台のようなものが造られていく。
そして砲台より放たれる光が目の前の敵艦を貫いた。

「まさかあれって…」

ティニーが予想していたものは間違いは無いだろう、それは…

「高出力ビームキャノン!!」

なんとこの二人、ナノマシンで造ってしまったのである。

「ナノマシンで武器造るなんて聞いたこともない。」

呆然とするティニーだった。

落とすまでには至らなかったが致命傷を与える。
そして敵艦は過ぎ去ったグリューナインスに狙いを定める。
それと同時に今度は雨のように閃光が降り注ぐ。
通過後に放ったレーザーファランスだ。

さすがにこの攻撃には耐えられず撃沈。

「楽勝〜♪」
「次!」

多少は頭脳があるのか残りの突撃艦は左右に別れ挟撃を始める。
しかし、グリューナインスの強固なシールドの前にはほぼ無意味と化していた。

「エリナちゃん。こういう場合どうする?」
「各個撃破でしょ。」

再び操縦桿を強く握り締め、右方向の突撃艦に高出力ビームキャノンの3連撃を撃ち込む。
とうぜんながらこれにて撃沈。
そして後ろからくる攻撃を機体を反らせながら回避。
このときに瑠兎の頭の中で鉄棒の特訓の様子が回った。

「ああ、なるほど…」
「ん、どうしたのひーちゃん?」
「ううん、なんでもない。」

無事に攻撃を回避した後、標準を敵艦の動力部に向ける。
そして再び高出力ビームキャノンとレーザーファランクスを放つ。
今度はさっきとは違い動力部だけを見事に貫く。

「やるじゃ〜ん。」
「うん。」

瑠兎は軽くうなずくと残りの戦艦2隻を見つめる。
敵は密集陣形をとりこちらに向かっている。

「ちょっち困ることしてくれるわね〜」
「エリナちゃん。エーテルブラストは使える?」
「えっ、アレを使うの!?」
「うん。今のグリューナインスでも戦艦2隻の攻撃は辛いから。」
「わかったわ。少し待ってね。」

再びエリナがコンソールを打ち込む。

「残りエネルギーから逆算して最大出力の21%しか出せないわよ。」
「それだけあれば十分です。」

グリューナインスは敵艦正面にて停止。
そしてさっきまでの高出力ビームキャノンをナノマシンに戻していった。

「一体なにが始まるというの…」

ただその様子を見ているだけしか出来ないティニーたちだった。

グリューナインスの中では二人が詠唱らしきものを唱えていた。

「宇宙に封じられし翠の結晶…」

「其は無限なり…其は零なり…」

「我が呼び声が聞こえるならば…」

コックピット内に次々と魔方陣が浮かび出す…

「その大いなる力を!」

瑠兎の手に一振りの大剣が出現する。
妖精の装飾が施されている美しき大剣。
そして、神聖な雰囲気をかもし出す大剣。
それを一度大きく振りかざした後…

「精霊剣パルティオンの名において!」

中央の台座に剣を刺しこむ。

「「解き放て!!」」

瑠兎は剣の刺さった台座をまるで鍵を回すかのごとく動かした。
それと同時に今度はグリューナインスの正面に多数の魔方陣が出現する。

「何?あれは…。」
「すごい…」

相変わらず目の前に起きている現象に驚くだけの面々。

そして、多数の魔方陣が重なり合う。
その瞬間。
2機が融合した時とは比べ物にならないほどの光が周囲に広がる。
そして光は放たれる。
緑色の閃光。
光は正面の戦艦を飲み込んでいく。
敵艦もシールドを張っていたがまるでそれもすり抜けるように…
まさに光だった。
爆音すらかき消す光…
 
 

光は止み、敵の戦艦2隻は消滅していた。
文字通りチリ一つ残さずに…

「はぁ、はぁ。」

グリューナインスの中では息使いがかなり荒くなっていた二人。

「さすがに堪えるわね〜」
「うん。もうふらふら。」
 

「なんて破壊力なの…」
「すごい…」

ただ驚きの中に居るティニーとティファ。
しかし同時にティニーはその威力に恐怖を感じるほどだった。

「みなさん…敵もいなくなったので帰りますよ…」

フェルの一言で現実に戻る4人。

「そうね。また、敵に襲われちゃたまったものじゃないわ。」
「うん。」

グリューナインスとサテライトイージスは分離し、再び2機に分かれた。
そして5機はその宙域を抜け、白き月へと戻った…
 
 

白き月、格納庫…

何かあったのか出撃していたほかの天使たちも戻ってきている様子だった。
そして5人も紋章機から降りる。

「みんな帰ってきてる〜珍しい〜」
「本当だ。」

格納庫内に紋章機が十数台。
普段これだけそろうことはめったに無い為、圧倒的な迫力感がある。

「なにかあったのかしら…」
「例のヴァルファスクかな?」
「きっとそうね。」

何人かの天使も格納庫にいるのが見える。
そのうちの一人がこちらを見るなり全力でこちらに走ってくる。
ベレー帽と黒いマントを羽織った少女。
ルーチェ・ビーンズだった。

「あら…ルーチェ。お久しぶりね…」
「おひさ〜」

そんな様子はお構い無しにルーチェはいきなり…

「母さん!なんて格好してるんだ!」

自分の格好を改めてみるフェル。
体操服にブルマ…

「?あ…これですか…特訓をしていたもので…」

ルーチェは頭に手を当て、半分呆れた様子だった。
耳まで真っ赤な様子が誰が見ても一目でわかった。

「誰がそんな格好して特訓するか!」
「えっ…違うのですか?」
 

「ルーちゃんもそんな怒り方するんだ〜」
「初めてみます。」
「母親には弱いってか〜」
「止めなくていいんですか?」

普段冷静で無口なルーチャがこう叫ぶ様子に驚きながら楽しむ面々。

「はやく着替えて!俺が恥ずかしい!」
「あ、ルーチェ…そんなに引っ張らなくても…」

無理やりフェルの腕を引っ張り、更衣室へと連れ込もうとするルーチェ。

「それじゃ…また後で…」
「母さん!早く!」

フェルは会釈をした後、ルーチェに連れられ更衣室に消えた。
 
 
 
 
 
 
 

数日後、シュミレーションルームにてメインモニター前。

「やった〜。またスコア更新しました〜」

喜ぶティニーの姿があった。
スコアの表示も8530点とあがっていた。

「あたしも。」

同じく瑠兎も21580点。

「ふん。あたいに手にかかればこのくらいよ。」

エリナは45230点。

「やった〜!!」

ティファの大きな声を聴き3人が駆け寄る。

「みてみて〜」
「どうしたのティファちゃん。ついに最下位脱出?」

問題の彼女の表示は…

「「「1010点…」」」

「ついに3桁突破だよ〜」
「…ティファ?」
「?どうしたのエリナちゃん?」
「あれだけ特訓しておいて100点も上がってないってどういうこと!?」
「え〜、ダメなものはダメなんだもの〜」

顔を膨らませ答えるティファだった。

―シュン―
ドアが開き、フェルが入ってきた。

「どうですか…みなさん…」
「はい、調子いいです。フェルさん。ありがとうございます。」
「どういたしまして…」

ケンカしているティファとエリナをよそにティニーと瑠兎はフェルに話かける。

「会議のほうはどうだったのですか?」
「はい…ヴァルファスクは局所的、かつ突発的に出現しているらしいです…
今は各基地の警戒態勢を布きつつ調査中です…。」
「そうなんですか…また戦いが始まるのかな…。」
「近いうちに…間違いないでしょうね…」
 

「そういえば前の特訓の初めの一週間。あれは一体どんな意味があったんですか?」
「ああ…あれですね。
スーパーボールは反射神経・動体視力…
鉄棒は回転・回避のイメージ…
迷路と探し物は直感鍛えるものでした…」
「「そのメニューだった理由は?」」

恐る恐るフェルに聞く二人…
 

「私の…遊び心です…」
「「そんな〜〜〜」」
 
 
 
 

こうして、特訓は終わった。
シュミレーションの実力。
リアル(現実)の実力。
フェルは知っていた。
彼女達は間違いなくリアルでしか発揮できない実力を持つだろう。
その証拠に自分に攻撃を当てたことだった。

「彼女達は伸びますよ…これから…」

フェルは顔に笑みが浮かんだ…
 

突如現れたあのヴァルファスクの軍勢は一体なんだったのだろうか…
それはまた別のお話で…
 
 
 
 
 

あとがき
どうもくじらんです。
半分ノリだけで書いてしまった小説です〜
初めは2話完結のつもりでしたが、気が付くと長々と4話になってしまいました。
すみません…
小説を書いてて、ファーウェルさんが結構天然系になってしまったと少し反省。
プディニール嬢の出番も少なかった…
などなど読み返して失敗点が多くありました。

最後にこんな作品を読んでもらえた方々と載せて頂いた管理人様達には深く感謝いたします。

くじらん