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華やかな場所にたたずむ君を。。。




〜プロローグ〜

ズドドドドドド

いきなりの轟音に思わず飛び上がった。

「なに・・・・?」

周りを見回せばそこは知らない場所。

絶え間なくなる轟音にすこし頭が痛くなってくる。

「ここは・・・どこでしょう・・・」

轟音に頭を押さえながら歩いた。

地面はごつごつとした岩が転がっている。

ふと目に灯りが差し込んだ。

灯りのする場所に近づいてみてふと気付いた。

「空間が割れてる・・・?」

何も無い空(くう)にひび割れがあり、そこから明かりが漏れている。

ザワザワ

小さな声が聞こえてきて、ふと覗き込んだ。

「あれは?!」

ひび割れの中には私の部屋が見えた。

私の部屋にエンジェル隊の皆さんがいて、騒いでいる。

みんなが誰かを囲んで騒いでいる・・・・・。

その真ん中にいるのは・・・・・・・・私だった。


華やかな場所にたたずむ君を。。。


それはいつもと同じ朝だった。

目覚ましでおきて、顔を洗って髪をとかす。軍服を着てタクトさんに会いに行く。

そんな朝だったはずなのに・・・・。

「どうしたの・・・ちとせ?まだ眠たい?」

後ろのほうから声が聞こえた。

「ちとせ?・・・・朦朧(もうろう)としているみたいだね・・・いいよ、もう少し寝ていて」

誰かが遠ざかっていく・・・足音も無く。

キン

痛っ!

静か過ぎて耳が痛い・・・・周りは真っ白、音がまったくしない。

布の擦れる音さえも聴こえない。

ずっと地面に座っているだけ・・・・本当にここが地面なのかもわからない。

真白の世界だから壁があるのか地面があるのか穴があるのか扉があるのかなんてわからない。

動けばこの空間から消えてしまいそうで怖かった。

「どうしたの、ちとせ?そんなにきょろきょろして」

それすらも気付かない。

自分の体が動いていることに気付かない。

「そっか・・・・君は・・・逝ってしまったんだね」

逝った・・・・・?

そうかもしれない・・・自分の鼓動を感じない。

呼吸をしているのかさえもわからない。

あぁ・・・・会いたい・・・・・・あの人に・・・。

「・・・・・・・もう無理だよちとせ・・・君にはもう会えないよ。」

会いたい・・・・会いたい・・・会いたいっ!!

ツー―

感じた・・・・温かい物を。

「ちとせ・・・・君はそんな事を考えちゃダメだ。」

あの人に・・・・・・・会いたいっ!!

温かさが増していく。

「っ・・・・・・ダメ・・だよちとせ・・・君は・・・もう・・・彼には会えないんだから。」

た・・・・くと・・・・・さん・・・・・・・・・・・・・・・。

―エルシオール(タクト視線)―

「・・・・・ちとせ?」

なんだ・・今の声は。

「レスターここは頼んだ!」

「ぉい!何処に行くんだ!タクト!ぉい!!」

タッタッタッタッタタタ!!

何だ・・・この違和感・・・ちとせ!

あれは・・・ミント達か・・・・。

「ミント!!!!」

「はぃぃ!!!????な・・なんでしょう・・タクトさん?」

ミントが耳を真横のピンと伸ばしている。

「はぁはぁ・・ミント・・・ちとせをしらないか?」

息を切らしながら俺は尋ねた。

「ちとせさんですか・・・?さぁ?今日はまだ見てませんが・・・・お部屋では?」

「そうか!ありがとう!!」

そういい残すと俺はちとせの部屋に走った。

ッダッダッダダダッ!!

「はぁ・・はぁ・・・ちとせ!!」

ドンドン!!

ちとせの部屋の扉を叩いた・・が、返事が無い。

「ちとせ!!・・・いるのか!ちとせ!!」

俺は急いでクリスタルに手を伸ばした。

「ちとせ!!何処にいるんだ?!ちとせ!!」

応答が無い。

シャー

別の部屋の扉が開いた。

「どうしたのタクト!!」

蘭花だ。

だが、今は返事をしていられない。

「ちとせ!!ちとせぇ!!」

ダンダン!!

扉をさっきより強く叩く。

「ちょっとタクト!!」

蘭花が手を握って叩くのをやめさせようとする・・・がそれでは止まらない。

「放してくれ!!ちとせぇ!!」

ダンダン!!

ダメだ・・・クソッ!!

「ちとせェ!!!!!!!」

ドゴン!!

俺は助走をつけて体当たりを始めた。

ドゴン!!ドゴン!!

「やめなよタクト!何があったかしらないけどそんなんじゃぁ扉は開かないわよ!!」

「そんなの!!やってみなきゃ!!わかんないだろ!!」

ドゴン!!ドゴン!!

バキュン!!

ビビビビ・・・・バン!!

「「ぇ・・・?!」」

俺と蘭花は同時に言葉を漏らした。

蘭花の後ろに銃を構えたフォルテが立っていた。

「うるさいねぇー扉を開けたきゃ壊せばいいんだよ。」

「ちょっとフォルテさん!!」

「サンキュ!フォルテ!!うぉらぁ!!」

最後のタックルだった。

それで扉は痺れを切らし開いた。

部屋の中は暗くて畳みの真ん中に布団が敷かれていた。

「ちとせ!!」

「うそ・・あの音でも起きないの?!」

ダッ!!

俺は布団に駆け寄った。

・・・・いない?!

「ちとせ・・・・・!!」

縁側で倒れこんでいるちとせを見つけて駆け寄った。

「ちとせ!!ちとせ?!」

返事が無い・・・というよりか・・・・呼吸をしていない・・・・いや・・微かにしている。

「蘭花!!電気を!!あとケーラ先生を!!フォルテはみんなを!!」

「は・・はぃ!」

「あいよ。」

二人は一言返事で返してきた。

俺はちとせを抱え布団に寝かせた。

「ちとせ・・・・」

ダッ!!

エンジェル隊が全員やってきた。

「ちとせ・・・どうしたんですか?」

「・・・わからない・・・俺が来た時にはもう・・・こうだったんだ・・・」

「タクトさん、すみません」

ヴァニラがちとせに近づいてナノマシンを起動させた。

スゥー

「・・・・・・・・・」

ヴァニラがゆっくりこっちを向いて小さく首を振った。

「そ・・そんな・・・ケーラ先生は!!」

ダダダ!!

「遅れてごめんなさい!!すぐに準備を整えるるから!」

ケーラ先生とヴァニラがテキパキと検査の準備を進めていく。

だが、ヴァニラの顔に元気が無い。

それは他のエンジェル隊もおなじだった。

〜数分後〜

「・・・・・マイヤーズ指令・・・・・」

重い声で名前を呼ばれた・・・それだけで内容がわかってしまう、そんな今がとても嫌だ。

「はい・・・・」

「ごめんなさい・・・・ちとせさんは・・・・今はもう・・・助かりません・・・」

俺は前が真白になった。

全員がちとせを囲んで立っている状況の中で俺だけは・・・・縁側を見ていた・・・・・・。

絶え間なく湧き上がる嗚咽(おえつ)を噛み締めながら。

漏れる涙に・・・気付かずに・・・・。

俺はそれからずっとちとせの部屋にいた。

時折ちとせの髪をなでキスをする・・・。

もしかしたらいつものように反応するんじゃないかと期待しながら。

「ち・・・・とせっ・・・・・・どうしたんだよ・・・・いったい・・・・・」

ほのかに温もりの残るちとせに触れている今が少し安心できる・・・でも・・少しでも離れると居なくなってしまいそうで不安に押し殺されてしまう。

「やっと・・・俺たち幸せになれたのに・・・・・なぁ・・ちとせ・・・愛してるよ・・・」

その言葉は今までにたくさん言った。

でも・・・今はこの言葉にはとても・・・悲しい・・・・・。

「ち・・とせぇっ・・・・くふ・・・・・ぅぅ・・・」

涙が溢れ出した・・・・。

縁側・・か・・・・花火したな・・・・あの時から俺はちとせが好きだったんだ・・・・・。

ふと光りが眼をさした。

「なんだ・・・・・?」

すっと立ち上がった。

「ちとせ、すぐ戻るからな」

ほんのそこまでの距離なのに・・言わずにはいられなかった。

光りがしたほうに歩いていくとそこには白い球体があった。

「・・・・これは・・・・たしか・・・・・。」

【白幽石(はくゆうせき)】

「昨日見つけたロストテクノロジーじゃないか・・・・・」

確かちとせが調べるって持っていったもの・・・・・まさか!!

ちとせ!!

−白(はく)の空間(ちとせ)−

・・・・・・・・・・ちとせ!!・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・たく・・・・とさん・・・・・の声・・・・・・・・?

たくとさん・・・・・・・・・・!!

「ちとせ?どうしたの・・・手なんか前に掲げ・・・・・!!」

聴こえる・・・・彼の声が・・・・・・。

たくとさん!!たくとさん!!!!!

「やめろ・・・・・・やめるんだちとせ!!!!!」

キュー−−−−−−−ン!!!

黒が現れる。

真白の世界に黒が見える。

「君は逝ってしまったんだ!!君の見るべき世界はこの白(はく)だ!!」

声が聞こえる・・・・しらない・・・・今はタクトさんの声が聞こえるんだから!!

たくとさん!

タクトさん!!

「タクトさん!!!」

キュー−ン!!

ピキ−−ン!!

空間が割れた。

「やめろーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

きゅぅぅぅぅん!!

割れ目が直っていく。

すぅー−−−−−−

たくとさん!!

たく・・・さん!!

た・・・さ・・・!!

た・・・・・・・・・・・?

私は誰の名前を呼んでいたんでしょう・・・・・・・?

「はぁ・・・はぁ・・・・ちとせ・・・少し休んだほうがいいよ・・・・・・」

気配が消えた・・・・・。

私は・・・・ち・・とせ・・・?

私は・・・・・誰の名前を・・・・・呼んでいたんでしょう・・・・?

た・・・・・?

だれ・・・・?

・・・・・・・・・・・・・ちとせ!!・・・・・・・・・・・

また聴こえた・・・・この声は誰・・・・?

・・・・・・・・・・・・・・・・ちとせぇ!!・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

うざったい・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・ちとせ!!・・・・・・・・・・・・・・・

うるさい・・・・・私の名前を呼ばないでぇ!!!

バタン

「・・・・・・耐え切れずぶっ倒れたか。白(はく)のやつもえげつねぇーな」

トン

トン

トンッ

「ふーん・・・・こういう女が好みなのか・・・・たいしたことねェな〜おい、女!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ぶっ倒れてるから返事は無しってか?ありぇねぇーな。ここで気絶なんてものはねぇからな。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ぉい、まぢで返事しねぇーよ。おーい、おーきーやーがーっれ!」

ドン!

ぅあっ

おなかに痛みを感じた・・・・・痛みを・・・・・?

「お、起きた起きた。女、動くなよ。」

真白な世界に人の形・・まだ年端も行かない子供の姿をした影が立っている。

そっとのどに触れられた。

グッ!

「ぁはぁっ!!けほ!」

「OKOK、声出るな。」

ふと影の言葉に気付きのどを触った。

「声・・・・?!でる・・・・・音が聴こえる!!」

「よっしゃ、まずいいことを教えてやる。」

影が喋ろうとしておもわず止めた。

「待ってください!あなた・・・お名前は?」

「・・・・・・・は?」

影がきょとんとした。

「名前です。」

「ぁー名前ね・・・変な女だな・・・俺の名前は・・そうだなぁ〜黒(こく)だ」

「黒さん・・・私はちとせです。烏丸ちとせ。女って名前じゃありません。」

「はぁ・・・・でだ、女。」

びしぃっ!!

思いっきり人差し指を伸ばした。

「"ちとせ"です!!」

「ぁーはぃ、でだ・・・ち・・・ちとせ。まずこの世界を教えてやろう。」

−エルシオール(タクト)−

カタカタカタカタ!!

シャー

「うぉ?!た・・タクト!どうした?!こんな夜中にそんなデスクワークなんて!!」

「・・・・・・・・・・」

カタカタカタカタ

「病気か・・・・?ん?これは・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

カタカタ・・・・・。

「レスター?!いつ入ってきたんだぁ?!」

顔を上げるとそこには書類を数枚持って読んでいるレスターがいた。

思わず驚いて後ろに飛んだ。

「ん?気付かなかったのか・・まったく。こりゃ本当に病気だな。自分からロストテクノロジーを解明しだすんだから」

そういうと書類を机に置いて隣に歩いてくる。

「どうした・・・?何をそんなに思いつめてる?」

レスターが心配そうに肩を叩いてきた。

「・・・・このロストテクノロジーが鍵なんだとおもうんだ」

すっと【白幽石】を持ち上げた。

「ちとせの話か・・・・・そういえばちとせの」

俺はそっと人差し指を立てた。

「それはまだ言わない約束だ、レスター」

レスターは「ふっ」とため息をついてPC画面を覗き込んだ。

「なるほどな・・まぁお前にしてはいい見解だが・・・ここはこうじゃないか?」

「なるほど・・・・だが、それだとしたらこの石の不可思議な点が増えるんだ」

「ロストテクノロジーだそれが普通だろう」

その晩、俺たちの話し合いは朝まで続いた・・・・・。

朝になって俺は蘭花とフォルテを呼んだ。

「二人に来てもらったのは少し手伝って欲しいことがあるんだ」

―白の世界(ちとせ)―

「ここは白(はく)の世界っていってな・・・まぁ、簡単にいうと精神世界だ」

「白の・・・世界??」

そっと周りを見回した。

名前の通りに回りは真白で頭がおかしくなりそうになる・・がその世界に黒が存在している。

白との区切りが真白な紙に水彩絵の具の黒を水で薄くしたものを一点にポタっと落としたようににじんでいる。

そこから多少離れて黒い影が私の前に存在する・・・名前は「黒(こく)」

「今、ちとせの体は死にかけてる。つか死んでる」

ふと違和感を感じる言葉がふりかかる。

「・・・・・ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!死んでるんでかぁ?!」

叫んだ私の口をむぐっと黒さんが押さえ込む。

「でけぇー声だすな!!・・・・・っち!見つかったか!」

黒さんが後ろを振り向いた。

「なんで君がここにいるんだい・・・・・・コク!」

すっと真白の世界から子供が現れる。

髪は後ろだけ長く綺麗な銀色をしている。

背は160位の痩せ型。

声はすっと通る美声。

「ハク・・・・お前の馬鹿な遊びに終止符をな!」

黒さんがすっと左手を前に出した。

「君に何が出来る・・・・この空間から消えるんだ!!!」

ハクと呼ばれた少年も右手を前に出した。

スゥー―――――キュイン!!!!!

いきなりお二方の真ん中に位置する空間が軋んだ。

「なぁ・・ハク。なんでちとせをこの空間に入れた」

入れた?

「・・・・・・君に言う必要なんて無い!!僕から全てを奪った君に!!あの幸せな場所を奪った君に!!」

幸せな場所を・・・奪った?

「・・・・・・本当はそう思ってない・・・・くせにぃ!!」

黒さんがグッと力をこめた。

すると軋んでいた空間に割れ目が生じた。

その割れ目に宇宙空間がみえた・・・・・。

「・・・・あれは!!紋章機?!」

「くっ!!みちゃダメだぁ!ちとせぇ!!」

ハクさんが叫んだ。

途端に空間の割れ目が戻っていく。

「コク・・・・君もここから消えるんだ!!」

ハクさんが叫ぶと黒さんの体が白に消されていく。

「っち、やっぱ本体無しじゃ無理か・・・頼むぜ・・・ムーンエンジェル!」

バシュン!!!

黒さんの姿が消えた。

「はぁ・・はぁ・・・・・・」

荒い息を吐いてるハクさんに近づいた。

「ハクさん・・・・」

ビクッ!!

ハクさんが肩を震わしている。

「こうなりたくなかったんだ・・・・・君が正気をもてば・・・きっと君は僕を叩く・・・・怒鳴るかもしれない・・・って。」

さっきまでの気丈な風陰気とは逆に、子供のように震えている。

そっと肩に触れると今にも泣きそうな顔をする。

「ハクさん・・・どうして私をこの世界に?怒りませんよ」

そっと微笑んでいた。

「・・・・・・・君が・・・・うらやましかったんだ・・・・」

「私が・・ですか?」

「ぅん・・・いつもたくさんの人に囲まれて笑っている君が。僕はこの世界に一人だけ・・・一緒に話せる友達もいない・・・華やかな場所にいつもたたずんでいる君を見ると・・・」

ハクさんの目から大粒の涙が流れ出した。

「嫉妬・・・ですか?」

「違うんだ・・・・ちとせの幸せを・・・・守りたくて」

守る・・・・・・。

「さっきコクさんが、ハクさんの幸せを奪ったって言ってましたが・・・どういう意味なんですか?」

「僕は・・・元々火星付近の辺境の小さな惑星に住んでいたんだ。そこに1艦の戦艦が不時着したんだ。その戦艦に乗っていたのは中央で起こっていた戦闘に参加していたものだったんだ。僕たちは戦艦の中で生き延びていた人たちを温かく迎え入れて世話をしたんだ。」

「やさしい人たちだったんですね」

「その中に・・彼がいたんだ・・・」

ハクさんはきゅっと手を強く握った。

「コクは僕と年が同じですぐに仲良くなったんだ。僕は彼を親に頼んで同じ家に住ませたんだ。親は喜んで許してくれたよ、コクも毎日楽しそうに暮らしてた・・・まるで本当の兄弟のように・・・でも・・・そんな僕達の恩を仇(あだ)で返してきたんだ!奴等は街人を襲って何人もの人を殺した。僕の両親も殺された!!!!」

またハクさんの目から涙が溢れ出した。

「僕は・・・自分の星の宝でもある【白黒石(はっこくせき)】を持ち出したんだ。」

「白黒石・・・・?」

なぜか頭に残った・・・・。

「白幽石・・・・・・・・」

「そうだよ・・・ちとせ。白幽石だ。白黒石の片割れ・・・この世界の本当の名前だ」

―ナイト・ウィッシュ(タクト)―

ピピ

『タクト?ここは・・?』

「ここはね、フォルテ・・・数年前に滅んだ星・・・カルナックだ・・・・・とっても悲しい話が残るね」

そう言うと俺は二人と星に降り立った。

―滅びた惑星・カルナック(タクト)―

「ねぇータークト―ここに何があるわけぇ〜?」

蘭花がぼやぼやと後ろをついて歩いている。

「俺の考えが間違ってなかったらここにあるんだ」

「だから何があるってーのよー!」

「タクト・・・言ってくれてもいいんじゃないかい?私たちはついてきてくれって事しか言われてないよ」

グッと手を握り締めて二人に振り向いた。

「ちとせは白幽石の中にいる!ここには白幽石の片割れがあるんだ」

二人は驚いたのか目を丸くしている。

「で・・でもちとせは部屋で今も安静状態でねてるじゃない!!」

「ぁぁ、体はね。石の中にいるのは精神だ」

「ふぅーん・・・でも、それとここに来たのには意味があるのかい?」

フォルテが指揮棒をビシッ!!と立てた。

「まぁ、意味の無い事をあんたがするはずないけどね・・・で?片割れを探すのかい?どんなだい?言ってみな。」

「真っ黒の水晶だよ。急いで見つけるんだ!ちとせがあの石に完全に取り込まれてしまう前に!!」

そう言うと二人は走りだした。

「・・・急ごう・・・ちとせの為にも・・・子供の為にも」

〜数十分後〜

見つからない。

いろんな場所を探した。

広場も、家も、祭壇も・・・・。

半分諦めかけた時に何かに呼ばれた気がした。

俺は声のしたほうに駆け出した。

「・・・・・・ここか・・・・」

そこには朽ち果てた家があった。

庭には子供が遊んだであろうオモチャや手作りのブランコがある・・・。

ゆっくりとその家の中に足を踏み入れた。

ボロボロだ・・・でも、そこはとても暖かな空気がした。

!!・・・・・思わず涙がでた・・・。

家族の写真が地面に散らばっていた。

とても仲良さそうに肩を組んだ銀髪の少年と黒髪の少年。

部屋の奥に呼ばれた・・・・。

写真を持って奥にすすんだ・・・。

そこは・・・子供部屋だった。

ベットが仲良く並び、まさに今まで遊んでいたかのようにオモチャが散乱している。

スゥー

ふと暖かな感じがした・・・・。

眼をあけるとそこは真っ黒な空間。

地面には岩がごつごつとしていて轟音が聞こえる。

それもすぐ無くなった。

真っ黒で前も後ろも上も下もわからなくなってきた、そのとき。

「はじめまして、タクト・マイヤーズ」

少年が現れた。

写真に写っていた黒髪の少年だ。

「貴方が来てくれる事を信じてた。」

「君は・・・いったい」

「タクト・マイヤーズ・・・・助けて欲しい。俺の親友を・・・貴方の・・奥さんを」

「・・・・やっぱり、そういうことだったんだね・・・コク・マイヤーズ君」

コクは涙を流し始めた。

「父さん・・・・・・・」

「行こう・・・・・・二人を助けに」

―エルシオール(タクト)―

「レスター今戻った!」

レスターは待ってましたという顔で振り向いた。

「どうだった・・・間違いは無かったんだな?」

「あぁ、間違いなかったよ」

レスターは眼に涙を浮かべ始めた。

「こんなことで・・・お前の最後を知っちまうとわな・・・」

「レスター・・・俺がそんな簡単に死ぬかよ!たとえ俺たちの考えが間違ってなかったからって未来を変えて見せるさ」

俺はグッ!!と親指を立てた。

「・・・・だな!お前は殺してもしにゃせんからな!さぁ!ちとせを助けるぞ!」

レスターはちとせの部屋に駆け出した。

俺も一緒に駆けた。

―ちとせの部屋(タクト)―

「みんな・・・行って来る」

そういうと俺は黒幽石を地面に置いた。

すると光りが俺を包んだ。

眼をあけるとまたあの空間だ。

「コク・・・・行くか」

コクが俺の隣に現れてうなずいた。

キュゥゥゥィン!!

―白の世界(ちとせ)―

いきなり空間が歪んだ。

黒だ、黒が現れた。

真白の世界が黒と混ざって灰色になる。

そして、一つの家の中になった。

すっと眼をあけるとコクと・・・タクトさん?!

「タクトさん!!!」

「やぁ、ちとせ・・・助けに来たよ」

タクトさんはそう言うとハクさんに近づいた。

「ハク・・・お疲れ様・・・今まで俺たちの記憶を大切に思ってくれて。もう休んでいいんだ、こんな石にいつまでも閉じ込められるべきじゃないんだ。」

「・・・・父さん・・・・」

ハクさんがタクトさんに抱きついた。

「・・・・・驚かないんだね」

コクさんがよこで尋ねてきた。

「はぃ・・・・私も気付きましたから。どうして忘れてたんでしょう」

「ちがうぜ、今から始まることなんだ。忘れてたんじゃないよ、知らないだけなんだよ・・母さん」



〜エピローグ〜

―エルシオール(ちとせ)―

「タクトさん・・・・二人はちゃんと逝けたんでしょうか?」

宇宙空間を見ながら隣に立っているタクトさんに訪ねた。

「逝けたよ・・・・そして、これから俺たちの前に現れるんだ。」

「いまだに少し信じられません・・・・あの石が過去から来た物だって・・・・コクさんが言うには戦艦に乗ってた人たちの裏切りの中、ハクさんが持ってきた石に全てのひとを閉じ込めてハクさんも一緒に閉じ込めて過去の空間を出現させるロストテクノロジーで送ってきたなんて」

「ハクは・・・君を守りたかったんだね。偶然にもちとせに拾われて、今から数十年後に起きる惨劇を避けさせる為に・・・・下手をしたら自分の存在がなくなってしまうのに・・・過去を変えると言う禁忌を犯してまでも・・・自分の母親を守りたかったんだろう・・・」

タクトさんは私のおなかにそっと触れた。

「今ここにいるのにな・・・・」

「未来は・・・私たちが変えましょう・・・あんな裏切りが起きないように・・・・ゆっくり考えていきましょう・・・・このこが・・・安心して暮らせる世界を作る為に・・・・」

タクトさんはうなずいてこっちを向いた。

「・・・・・あの惑星・・・コクが一時的に未来から送ってきたんだろうか・・・・今見たら宇宙図に存在しないんだ。」

「・・・・・気にしないようにしましょう・・・タクトさん」

「・・・・・・そうだな」

そう言うとタクトさんはそっと唇を重ねた。

そして・・・ふたりで広大な宇宙を眺めた。

窓の外の宇宙空間を仲良く流れる白と黒の石を見送りながら。

二人に・・・会える時を楽しみにして・・・・・・・。

        ――――END――――

−最終章へ−

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