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第0章
Stage3:どうしようもない僕に天使が降りてきた




他に誰もいない孤独。



四方八方の暗闇。



一寸先さえ危うい。



そんな大宇宙の片隅で。



「暇だ。暇でしかたねぇ。」

あれからどれだけの時間が経ったろう。

何も出来ずただ宇宙を漂う巨体。


「あ、テレビかこれ?」


ホコリまみれで気づかなかったが、目の前にテレビのような液晶画面がある。

「へへ、こいつぁいい暇つぶしになりそーだ。」

電源を入れる。


液晶に映ったのはど真ん中にある一つの黄色い「点」。
そして画面の上部に映る赤い「点」。


「なんだこれ?いしこっ!」


そんな「いしこい」画面の上にあった「点」がどんどんと真ん中の「点」に近づいてい く。


そして


「・・・?なんだありゃ?」

目の前から何かが迫ってくる。


「誰かが助けにきてくれたんかな?」


迫ってくる物体は間違いなく人造のものであると遠目からでもわかった。
問題はその人工物が何者かということだ。
その緑色の物体が何者なのか。







その頃




「カズミさん!」
「見えたか?エリアーデ。」
「はい!ミュートラル、30体を確認。その先に浮遊している巨大物体が攻撃目標みた い!」

紋章機のモニターに映し出された巨大物体を見て5人の天使達は驚愕した。

「な・・・なんじゃこれは・・・。」
荘厳な巨体を見てただ呆然とするカズミ。
「すごいすごいすごいー!!」
【パピーさん、落ち着いてください。】
「あれ何!?何なの!?」
「わしに聞かれてもわからんわ!」

パピーの好奇心旺盛ぶりはどんな状況でも変わらない。

「てかわからないから驚いてるんじゃん。」

冷静にツッコミを入れる朱磨莉。

【どこかの国が開発した新型兵器でしょうか?】
「そうだとしても、少し古ぼけすぎなような・・・。」

朱磨莉の分析は続く。


「もしかして・・・もしかしてよ。あれは、実は古代の超科学文明が残した遺産なんじゃ ・・。」
「ガロメアのことですか!!?」

パピーがものすごい勢いで食いついてくる。

「が、ガロメア?それについてあんた何か知ってるの?」
「知ってるも何も超有名ですよ!!ガロメアは原始宇宙の時代に存在したといわれている 超科学文明でその文明力の高さは現在の比ではないんですよ!人々は常に科学で空を飛 び、科学で商いをし、科学で政治を行ったっていいます!そしてそして・・・」
「わかったからもうやめ。もうやめて。」

あまりにも熱いパピーの主張に朱磨莉も若干ヒキぎみ。

「すごいなぁ!やっぱり科学の力でプロレスもやるの!?」
「もちろん!森羅万象が人間によって生み出された科学の叡智で支配されていたんです よ!」

バカの話に食いつくのはやはりもう一人のバカである。

「とにかく、その文明の遺産だとうればなおさら守らなくてはならんな。」
【急ぎましょう】













巨体にミュートラルが迫る。

乗るはミュートラルそのものを知らない哀れな男。



一閃の光が走る。

それは、巨体の体を抉り取っていった。


「だぁぁぁぁぁぁっ!」


コクピット内を衝撃が襲う。

巨体は「攻撃」された。


「ななな、何だよぉ!もう!」


あわてて巨体を動かそうとする。
しかし、閃光は容赦なく巨体を襲う。



「うひぃぃぃ!たじげて〜!」



今日この時に出会ったばかりの「なにか」に攻撃されて気が動転しているのか。


「おあああああああぁぁぁあああ!」


その時。

何かが心の中に走った。


「ああああ・・・・・・・・・・・・・・!」







急に頭の中が白くなる。




意識が飛びそうになる。




巨体が戦慄く。









熱い
熱い
熱い
全身の血が沸騰しそうになる。






脳が
目玉が
鼻が
口が
耳が
胸が
肘が
親指が
人差し指が
中指が
薬指が
小指が
腰が
腹が
太腿が
膝小僧が
脛が
踝が

躍動する。







「戦え」とこだまする。








戦え







戦え





戦え




戦え戦え闘え戦え闘え戦え戦え闘え闘えタタカエタタカエタタカエタタカエ



「ああああああああああああああああああああああああああ!!」



何かが











切れた






何かが











生まれた















「な・・・何なのよこれ!?」
再び驚愕する天使達。


そこには異様な風景が広がっていた。

そこらじゅうに散らかる機械の残骸。

その中心には例の「遺産」。


その手には「最後の一体」が握り締められている。



ぐべしゃっ


その刹那、「最後の一体」は「遺産」によって握りつぶされた。


ミュートラルは、もうここにはいない。


「・・・応答してくだい。・・・応答願います・・・。」

「・・・ん?あれ・・・?どったのこれ・・・?」


意識が戻った男。


「わわっ!お前ら誰だ!?」

突然目の前に映った美少女に仰天する男。

「わしらはワイバーンエンジェル隊というものだ。」

「ああ、ああー!あんたらが最強の天使かぁ!」

「そうだよ!私達は最強の天使で〜っす!」
「それよりこの状況、何があったの?」

「知らん。」

「知らないって・・・そこまで簡単に否定されても。」

「これ、結局どったの?誰がやったんかいね?」

「いや、あんたがそれやったのよ!」
「自分で憶えてないんですか?」

「んや・・・憶えてない・・・。なんだか攻撃されて、なんだか体が熱くなって・・・そ の後はよく知らね。」




これが、シュートとエンジェル隊との始めての出会いであった。





The angel has gotten off in me helpless.



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