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第1章
Stage3:ワーク・ワーク【砂漠に見えた諸行無常】




その世界に終わりはないはずだった




永遠という言葉を信じてた




でも永遠なんてなかった





もうだめかもしれない・・・






シュート「ふんがー!なんつー砂埃じゃあ!」

ワイバーンエンジェル隊とあと一人は、予定通り惑星ヴァイスへと向かっている。
しかし、大気圏にまで及ぶ猛烈な砂嵐にてこずらされていた。


カズミ「こん(ガガッ)ところ(ガガガッ)ほ(ガピーッ)る(ザァーッ・・・)」
シュート「んな!?何!?聞こえんわい!」
セアラ【どうや(ガガッ)らすさまじい磁気(ガピーッ)嵐も起きてい(ガガガッ)るようで(ガッ)す。なので(ガッガ)通信機(ガガピーッ)能に異常をきた(ガガッ)しているのでし(ガッ)ょう。】
シュート「んん?なんだかよく見えんよぉ!」

とにかく、この砂嵐を抜けなくてはまともに会話すらできない。
しかしこの惑星は、全表面の85%以上が砂塵に埋もれている砂の惑星である。
だからこそこのような惑星に文明はおろか、生命体が存在したかさえわからない。

シュート「・・・あっ!見っけたっ!!!」

そんな砂嵐の中に、ひときわ目立つ大きな穴が一つ、ポッカリと空いていた。
一同、その穴の中へと入っていくことにした。



シュート「ここす!ここでこいつを見っけたすよ!」
カズミ「本当か!?」
シュート「もちのローンす!確かに、壁に変な模様がビッシリと描かれてた部屋で見っけたのんすよ!」


そこは、シュートが巨体と出会った部屋であった。
天井に空いた大きな穴から多量の砂埃が入ってきて、たいそう積もっていたが。


朱磨莉「しっかし、ホコリっぽい部屋ねぇ・・・。」
カズミ「全くだ・・・。」

部屋の中のあまりのホコリっぽさに2人はうんざりしていたが・・・。

パピー「すごいすごいすごーーーーーーい!!!!」
エリアーデ「パピー、涙とよだれと鼻血が同時に出ているよ!でもすごーい!!」


好奇心のカタマリのパピーは、感動の涙・あこがれのよだれ・興奮の鼻血と、顔中の体液を噴出させていた。

朱磨莉「あいつらったら・・・。」
カズミ「緊張のかけらもないな・・・。」

とにかく、女の子であるパピーの体液をふき取ってやろうと朱磨莉が近づこうとしたとき、




コツン




ドサッ



朱磨莉は頭から砂に落ちた。


朱磨莉「った〜ぁっ!もう何なのよこれっ!!」

砂が積もっていたので、顔を損傷しなかったのは幸いであった。
しかし、代わりに大量の砂の味を噛みしめることになった。
足元を見ると、何か四角い物体が転がっていた。


パピー「これ・・・大昔の本みたいですよ!」
カズミ「本?なんでそんなものが。」
エリアーデ「それきっと、古代帝国の遺産に違いないよ〜!」
パピー「ウッソ!?すごーいっ!!」

謎の遺跡の謎の本。
嫌がおうにもテンションがあがるバカ2人。

カズミ「ばかもの、まだそうとは決まったことじゃぁ・・・。」

カズミは頑なに超科学文明の存在を否定し続けている。
しかし、この発見には些か動揺を隠せなかった。
そのとき、セアラが本をパピーの手から抜き取り、ぱらぱらとめくりはじめた。
中には、意味不明な記号が一面に羅列されていた。


シュート「うは・・・わけわからん記号ばかりさね・・・。」
エリアーデ「なんて書いてあるのっ!?」

記号の正体は如何なるものなのか。
この場にいる全員が今知りたがっていることだ。
セアラはいつもの如く、持参したノートに書き記していく。

セアラ【わかりません。私は筆談をコミュニケーションの手段としている以上、全宇宙のほぼ全ての言語を習得していますがこのような文字列は見たことがありません。】
パピー「見たことないって・・・まさか!?」

この時点でパピーの期待は、確信に変わったらしい。

セアラは続けて記す。

セアラ【はい。これはすでに滅びた文明の文字とみて違いはありません。だから、エリアーデさんの言うように、もしかするとこの遺跡を中心に繁栄していた文明の、何らかのメッセージが書いてある可能性は高いですね。】
パピー「うわぁっ!すごーい!」
エリアーデ「やっぱりこれは古代文明の遺産なんだよ!きっと宝物のありかがわかるかも〜!」
カズミ「まさか・・・本当に・・・?」

「これは超科学文明の遺産だよ」派の2人は大いに喜んだ。
一方、確定的な証拠を目にして、カズミは狼狽した。
まさか、これは夢に違いないと言わんばかりの表情である。

朱磨莉「宝物・・・財宝・・・金銀パール・・・(じゅるり)」
カズミ「貴様、また金に目がくらんだか。」
セアラ【でも、それが必ずしも宝物のありかを示すものとは限りませんよ。なにせ解読しない限りはただのボロ紙の束に書かれた落書きでしかないんですから。】
パピー「なぁ〜んだ・・・(しゅん・・・)」


その後一同は、その本のほかにも、多数のガラクタを回収し、帰路に着くことになった。


シュート「あ〜・・・やっと帰れるわな・・・。」
カズミ「しかし、ガラクタばっかり持ってきおって・・・。」
パピー「何言ってるんですか!これは貴重なものなんですよ!」
朱磨莉「そうそう、売ったら何千万もするんだから!」
セアラ【まだそうと決まったわけではありません。ですが、これらがあの遺跡の研究に大いに役立つことは確かです。】
エリアーデ「そーだそーだ!」



宇宙は果てしない。
永遠に続きそうな黒い景色。
数多に光る点。
音も聞こえない不気味な世界。
そんな中で、彼女たちは闘う。

黒の中を泳ぐように進む紋章機と、巨体。


音の聞こえない世界であっても、それでも静かだと思うような、そんな黒。

そんな中を、暇つぶしに語らいながら進む紋章機と、巨体。


平和すぎる談笑。
それをも戦火の渦は、許さない。
戦いは、いつ始まってもおかしくはない。
そんな時代だった。


パピー「っ!!敵です!ミュートラルの大群が迫ってます!!」
シュート「えええええ!?」
カズミ「くっ、このような辺鄙なところにまで・・・。」
シュート「どどどどーすんの!?」

シュートは完全に狼狽していた。
なにせ数日前まではなんのことはない一般人であったのだから、当然であろうか。

カズミ「貴様はただ見ていればいい。」
シュート「へ・・・?」

きょとんとしているシュート。
カズミのことだから「しっかりせい!」などと一喝されるのだと思っていたのだろう。
やけにあっさりとした返事には、確かな力強さも感じられていた。

エリアーデ「アレやろう!朱磨莉!」
朱磨莉「本当はアレやるのいやだけど、本気の本気を見せてあげないと!」
シュート「アレ・・・?」


5人「「「「【ワイバーンエンジェル隊紋章機 完全稼動体 変形!!】」」」」


閃光が走る。


紋章が浮かぶ。



そして機体が動き始める。


腕が生える。
脚が生える。
顔が出てくる。

その姿、まさに人間に限りなく近し。


これぞ自立歩行形体『完全稼動体』。


紋章機もこの頃になると変形するようになっていたが、いかんせん辺鄙な場所の出身であるシュートは知る由もなかった。
シュートはただ、変形の瞬間を目を見開いて見ていた。


朱磨莉「シュート・・・これが本当のワイバーンエンジェル隊よ!」



5体の人型は、目前に迫ってきたミュートラルの群れの中へと消えていった。




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