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月の導き


第6話 「消える時間」



キュアンたちの住んでいる惑星周辺に皇国軍の艦隊があった。
その中の一隻の戦艦の廊下にて…

「まったくなんで我々がこんな辺境にこないといけないのだ。」
「指令、仕方ありませんよ。3ヶ月前の紋章機騒ぎに続き、謎の爆発事件の多発。
さらには民間船の失踪が相次いで起っているのですから。調査は必要です。」
「分かっているつもりではあるのだがな。だが今回の仕事は嫌な予感がする…」
「いつもの指令らしくありませんね。どうしたんですか?」
「いや、何でも無いさ…」

ブリッジより通信が入る

「指令!至急ブリッジにお願いします!」

「妙に慌ただしいですね。」
「急ぎましょう!」

2人はブリッジへ急ぎ向かった。

「どうした?」
「こ、これを!!」

ブリッジに一つのウインドウが展開される。

「なんだこれは!!」

そこに映し出されているのは多数の黒き戦艦であった。
しかもその数は軽く500隻を越えていた。

「馬鹿な!!すでにエオニアの残党は殲滅されたはずだぞ!!」
「指令…」
「至急本星に連絡を!!」
「さっきからやっていますが通信障害で…」
「一番近い基地でもいい!繋がらないなら何隻か基地へ送れ!」


一方黒き戦艦内
一人の少女と白き鎧の男がいた。

「愚かな…私達が見逃すとでも思ったか。」
「攻撃…開始。」





同時刻キュアンたちはいつものトレーニングに励んでいた。

「お〜いB.K.どうしたんだ?」

急にB.K.の動きが止まり空を見上げていた。

「…ついに来たか…」
「来た?なんのことだ?」
「キュアン、今日のトレーニングはこれで終了じゃ。家に戻るぞ。」
「なんだよ急によ。」
「やつらが来るぞい。」
「まさか…白騎士か!」
「おそらくな。そしてサティも来るじゃろう。」
「あの少女か…前にあったときは恐怖で体が動かなかった…。」
「白騎士より手ごわい相手じゃぞ。」
「…ああ。わかった。」

空は段々と荒れ模様に変わっていっていた。



家に戻るとベルギーとアニスがいた。

「お帰り兄貴〜今日は早いね〜何かあったのかい?」
「まあな。」
「ベルギー敵の攻撃が始まる。」
「えっ!?」
「じゃからパイナを連れてシェルターに避難するんじゃ。」
「うん、わかったよ。でもどうして分かったんだい?」
「わしの秘密通信じゃ。」
「あんまり説明になってないぞ。」
「とにかくパイナ姉ちゃんを呼んでくるね。」
「わしらは他の人にも教えて来るから先に行ってくれんか?」
「うん!」

ベルギーはそう言い残すと走って出て行った。

「お父様…」
「アニス。すまんな。また敵が現れた。」
「そう心配するんじゃねえよ。さっさと片付けるぜ!」
「はい。」

3人はB.K.の宇宙船へと向かった。

「キュアン今回は前回を違って白騎士のほかにも複数の艦隊で来ておるようじゃ。
くれぐれも気をつけるんじゃぞ。特にサティが一番厄介じゃ。今のお前には勝てる相手ではない。」
「じゃあ、どうするんだよ?」
「今回はわしも出る。なんとかルナティックの修理も完了したんでな。」
「ああ、わかったぜ。」

3人は宇宙船に到着。そして乗り込んだ。

「宇宙に上がるぞ。」
「おう!」
「はい。」

宇宙船は勢い良く飛び立ち宇宙へと舞い上がる。
その間にキュアンとアニスは紋章機の元へと急ぐ。

「3ヶ月の訓練の成果を見せてやるぜ!」
「ご主人様、油断は禁物ですよ。」
「ああ、分かってる。」

2人は紋章機に乗り込みシステムを立ち上げる。
そしてキュアンはサークレットを被り操縦桿に手を添える。

「各パラメータ値正常。いつでもいけます、ご主人様。」
「おう、わかったぜ!B.K.先に出るぜ!!」

宇宙船のカタパルトが開きムーンライトミラージュは勢いよく飛び立っていく。


「さて、わしも行くとするかのう。」

B.K.は格納庫へと向かい漆黒の紋章機へと乗り込む。

「データ再確認…」

周囲にモニターを埋め尽くすほどのパラメータが表示される。

「うむ、万事OKじゃな。ルナティック発進じゃ。」

続いてB.K.のルナティックドラグーンが飛び立っていく。



キュアンは一通りレーダーを確認し…

「おい、B.K.どこにも敵なんて居ないぞ?」
「そう、焦るでない。」
「ご主人様。前方15000の距離にドライブ反応です。」
「今度こそ敵か!?」

そして一隻の戦艦がドライブアウトする。
しかし…

「おい、あれってトランスバール皇国の戦艦じゃないのか?まさかあれが敵とか言うんじゃないだろうな?」
「バカ言うでない。おかしいと思わんのか?皇国の戦艦一隻でいること自体が…」
「さらに反応です。距離25000。」
「くるぞ!」
「でも…これ…。」
「どうした?アニス。」
「ドライブ反応拡大!超広域ドライブです!」
「なんじゃと!!」
「おいおいなんだよ。2人で驚きやがって。」
「見れば分かるわい…」

そして皇国軍の戦艦の後方に巨大な歪みが発生した後…

「おい…、なんなんだよこれはよ!!」
「これが超広域ドライブじゃよ。」

「本機正面10時方向より3時方向までの間、敵艦数約500です。」

淡々とアニスは答える。
そして、正面には見覚えのある紋章機があった。

「白騎士!!」



「戦闘開始…」

黒き艦隊が一斉に動き始める。

そして亡霊もまた動き出す。


不気味な光が皇国軍の戦艦の横を通り過ぎる。


「そんな馬鹿な!」

キュアンは自分の目を疑った。
皇国軍の戦艦はほぼ一瞬で葬りさったのであった。

「キュアン。油断するでない!くるぞ!!」



一方パイナとベルギーはB.K.の言う通りシェルター内に避難していた。
他の一般民もかなりの数避難している。

「兄貴達遅いね〜」
「大丈夫よ。キューちゃんはゴキブリ並みの生命力持っているんだから。」
「そうだよね。他のシェルターに行ったのかもしれないね。」
「だからキューちゃんのことは心配しない!いい?」
「うん、そうだね。」

そう言いつつもパイナは妙な胸騒ぎを感じていた。

街は今まで無い嵐に襲われていた。






「B.K.白騎士の相手は俺に任せてくれないか?」
「お前さんじゃ辛い相手じゃぞ。」
「ああ、分かっている。だが前の借りだけはしっかり返しておきたいんだ。」
「…分かった。しかし、危ないと思ったらわしも参戦させていただくぞ。」
「おう、好きにしやがれ。いくぞアニス!!」
「はい!」

ムーンライトミラージュはクロノスファントムに向けて速度を上げた。


「白騎士!!」
「…」

ムーンライトミラージュとクロノスファントムの激闘が始まる。

「ちっ!!補足しきれねえ!」

クロノスファントムは得意の機動性でキュアンたちを翻弄する。
しかし、ムーンライトミラージュの方もバリアと特殊装甲を巧みに使いダメージを極力少なくしている。

「く、これじゃキリがねえ!アニス一気に行くぜ!」
「はい!」

ムーンライトミラージュよりミラーフェアリーが放たれる。
それを感じてか白騎士もファントムウイングを展開する。

「先手必勝!!行くぜミラージュリフレクター!!」

ムーンライトミラージュより多数のレーザーファランクスが放たれる。
そしてミラーフェアリーにより複雑に屈折させる。

それとほぼ同時白騎士もファントムウイングからビームが放たれる。

「これくらいなら!」

アニスはすぐさまミラーフェアリーを呼び出しファントムウイングの攻撃も跳ね返す。

「ナイス!アニス。」
「えへへ」

さすがにこれは白騎士も計算に入っていなかったらしく、攻撃を回避するが何発かは当たる。

「これで引いた?」

クロノスファントムが引き下がっていく。

「逃がすか!」

それを追いかけるようにキュアンは操縦桿を強く握り締めた。





「妙じゃな。敵の動きに冴えが無い…まさか!!」

B.K.は再びレーダーを確認する。
敵の陣形は左右に大きく展開し、中央がポッカリ開いたような状態になっていた。
そして…



「ご主人様!ドライブ反応!正面距離12000です。」
「なに!!」

そこに現れたのは全長700mを越える巨大な戦艦であった。
そしてその先端には巨大な砲門が…

「これで終わりだなB.K.よ。ガーン・デーヴァ発射!」

戦艦から狂気の閃光が解き放たれる。

「マズイ!!」
「緊急回避します!」

ムーンライトミラージュは大きく急旋回する。


「はぁはぁ、なんとか回避できたか…
アニス、B.K.に通信を。」
「はい。」

アニスはB.K.に通信を入れる。

「B.K.お前も無事だったみたいだな。」
『ああ…』

珍しくB.K.は屈辱に満ちたような顔をしていた。

「なんだよB.K.生き残っているのに浮かばない顔しやがって。」
『くっ、わしとしたことが。ヤツの狙いはわしらではなかったんじゃ!!』
「なっ!!アニス!!もう一回ヤツの射撃ルートは!!」
「はい!」

アニスはいつもよりすばやくコンソールを叩き付ける。

「まさか…!!!」
「ヤツの狙いはあの街じゃ。」

モニターに表示されているのは惑星に残った巨大なクレーターだった。

「嘘だろ…だってあそこにはパイナが…、ベルギーがよ…居るんだぜ…」
『残念じゃが、あれでは無理じゃろう…』

キュアンはその拳を叩きつけた。

「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

キュアンの叫び声が宇宙に響きわたる。
怒りと悲しみに満ちた叫び声が…




次回予告
消える街。消える命。
もう帰らぬあの場所。あの人。
青年の怒りが…少女の悲しみが…
第7話「覚醒」
大いなる月の加護があらんことを…