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月の導き


最終話 「月へ…」


B.K.の宇宙船内…


「今日も目を覚まさんか。」

B.K.は深くため息をつく。

「あれからもうすでに1ヶ月はたったかのう…」

ベッドに眠り続ける二人を見つめる。
しかし二人は今だに起きる兆しすら見せてはいなかった…








ほぼ同時刻…
サティ達の黒い戦艦内…
彼女は自室で目を覚ます。

「くっ、またあの夢か…」

汗だくの自分の身体を見るとショワー室へと足を運ぶ。
シャワーを浴びながらサティは思う。

「最近は負けばかり続いているな…」

やはりアニスに負けたことにショックを隠しきれない様子であった。
そんな自分が腹立たしく、思わず壁を叩きつける。

シャワーを浴び終え、着替えると通信が入ってきた。

「本国からか…」

急いでブリッジにもどりモニターを開く。
そこには一人の男の姿が映し出される。

『久しぶりじゃない。サティール。』
「お前はクウェン!十天司のお前がなんの様だ。」
『なにって、最近調子が悪いみたいじゃない?だから少し見に来ただけよ。』
「…」
『まあ、お互い目を覚ましたばかりだからしょうがない点はあると思うけど。
でも、CHAOSの本部では少し騒ぎになりそうな感じよ。』
「わかっているつもりだ…」
『そこで提案があるの。』
「…どうせお前のことだろくなことじゃないんだろ?」
『ひどいこと言うわね。まあいいわ。
今この銀河最大の国はトランスバール。』
「それくらい分かっている。」
『そして、人々の信仰の象徴『白き月』、そしてあの忌々しいEDENの『スカイパレス』。
コイツを私とあなたで落としてあげるの。』
「…白き月とスカイパレス…」
『あたしがスカイパレスに行くわ。あなたは白き月に向かってちょうだい。
そこならあなたの能力を存分に使えるでしょうしね。』
「ああ、分かった。」

通信は途切れる。














再びB.K.の宇宙船…

「う、う〜ん。」

アニスは目を開き、ベッドから起き上がる。

「アニス!!目を覚ましたのか。大丈夫か?心配しぞい。」

「おい、俺のことも忘れんなよ。」


「まあ、ともあれ二人とも無事でよかったわい。」

「…B.K.俺達の居たあの街は…」

「…今、お前さんが想像した通りじゃよ。跡形もなく消滅しておる…」
「…そうか。」

するとB.K.は少し驚いた様子だった。

「お前さんのことじゃから殴りにかかってくると思っておったのじゃがな。」
「…それよりアイツらはどうなったんだ?」
「アニスが倒したよ。」
「アニスが!?」
「…ああ。」
「サティーは?」
「あやつは生きておるよ。」
「…そうか。」
「思った以上に冷静じゃな。」
「…俺も色々見たからな…。」
「まさかお前さん、アナザーライブラリーに行ったのか?」
「ん、まあな。」
「まさか信じられん。あの空間で生き残り、さらにはアナザーライブラリーを閲覧するとは…」

B.K.は驚いた様子でキュアンを見た。

「ああ、メリアとか言う子にもあったぜ。」
「あのヒネクレ娘にも会ったのか…これはもしかしたら…」
「お父様?」

「お前さんら。これから如何する?」

アニスとキャアンは同時に息を飲む込むと。

「CHAOSと戦います!」
「CHAOSをぶっ潰す!!」

B.K.は二人の決意のその言葉を聞くと…

「…分かった。付いてきなさい。」

B.K.は二人を格納庫に連れて行った。

「こいつは!!」

そこにはその両翼に巨大な盾を取り付けたムーンライトミラージュがあった。

「わしもこの1ヶ月遊んでいたわけではない。
ついにコイツも完成じゃ。」
「お父様この盾は?」
「リフレクションシールドじゃ。元々ムーンライトミラージュは完全防御型の紋章機じゃった。
じゃがこれの調整にてこずってな。
結局これが取り付ける前に出撃状態になってしまった。
では少し説明するぞ。
このリフレクションシールドはその表面上に正位相もしくは逆位相のクロノ・フィールドを発生させることにより物理・エネルギーさらには重力波さえも遮断できる。
理論上ではコイツの耐久性でアルテミスの攻撃も防げる。」
「つまり最強の盾ということですか?」
「その通りじゃよアニス。ただコイツのエネルギーの消費量はかなり高い。その分の燃費は悪くなるのが弱点じゃ。
一応対策の一つとしてコイツにも別にエネルギーパックも付けておいたが。」
「長期戦向きじゃないってか。」
「まあ、そんな所じゃ。ほかにも一時的にではあるが空間に強力な歪みを発生させて相手をかく乱させるミラージュミストも付いておる。」
「強力な盾とかく乱か。なるほどこれならいけるかもしれねえな。」
「それとアニス。」
「なんですか?」

B.K.は一つの腕輪を取り出しアニスに渡す。

「この腕輪は?」
「クロウの腕輪といってな。あの能力を封印するものじゃ。アニス。お前にはまだあの力は強大すぎる。
じゃからそれまではこの腕輪で使えないようにするんじゃ。」
「…はい。わかりました。」
「おい、そしたらヤツラとの戦いはどうするんだ?」
「お前さんにもある。」

今度はキュアンに一つの鉄のケースを渡す。

「なんだこれは?」

中を開けると注射が3本入っていた。
それぞれ赤黒く光る液体が封入されていた。

「一時的にお前さんの能力を飛躍的に上昇させる薬じゃよ。
じゃが取り扱いにはくれぐれも細心の注意をはらってくれ。
お前さんの身体でもって3分ぐらいが限界じゃからな。」

「アニスと違ってえらく危なそうだな。」

「1ヶ月でここまでやったんじゃぞ。寧ろ感謝してほしいわい。」

「それでこれから俺達はどうすればいい?」

「お前さん達は白き月へ行くとよい。」

「白き月?何でまた。それに俺達みたいな民間人が入れるのかよ。」

「その点は気にしなくてもよい。この紋章機がある。それにあそこにはわしの知り合いもおる。」

「お父様は来ないのですか?」

「わしには少し調べないといけないことが出来た。じゃからキュアン。しばらくお前さんにアニスを預けるぞ。」

「ああ。わかった。」
ふたたびサティ達の黒い戦艦

「手を出すんじゃないぞ。」
窓越しで宇宙を見つめるサティ。

「だれが出すか!」
「…今度こそ仕留めてみせる。ファーウェル、B.K.、そしてあの娘。」

「どうしたんですか?二人とも…。」
決意を新たにし、その手を握り締める。

「なんでもねぇよ。」
「白騎士聞こえるか?」

「しばしの別れじゃ、アニス。」
「…はい。」

B.K.はアニスの額に軽くキスをする。
音もなく現れる白騎士。

そして二人は再びムーンライトミラージュに乗り込む。
「次の作戦は今までと違ってトランスバールと直接戦闘になる。

戦いの準備をしておけ。」

「全システム良好。ご主人様いつでも行けます。」
「…承知。」

「ああ、じゃあ行くぜ。」
「次の目標は…


「「白き月へ!!」」

白き月だ!」










あとがき
なんだかんだやっとのことで完結しました。
一時は休止期間もあり、書き終えるのに約1年もかかってしまいました。
とはいえ、実はこれも私の長編作品の一部分でしかありません。
この『月の導き』も第2部として書きました。
まだまだ3部、4部と用意しておりますので楽しんでいただければ光栄です。

それではこの小説を最後まで読んでいただいた方、創造天使工房の管理人様方々に深く感謝いたしましてあとがきとさせていただきます。