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リアルorシュミレーション?

白き月、シュミレーションルームにて…

「は〜〜」

緑の髪の少女がモニターを一目みると深くため息をついていた。
彼女の名前は翡翠 瑠兎。
トランスバールとは別の銀河から来たハーフエルフの少女である。

「は〜〜」

隣にいた茶色の三つ編みの少女もモニターを一目みるとまた深くため息をついていた。
彼女の名前はプディニール・ハッテンハイマー。
何かしろ不幸というものに取り付かれた少女である。

今度は二人同時にモニターを見つめた。

「「は〜〜〜」」

そこに茶髪のショートカットの少女がやってきた。
軍の施設内にもかかわらずブレザーを着ている少女。
彼女の名前はエレ・エリナ・F・プレッツェル。
瑠兎と共にきた別銀河のエルフの少女である。

「どうしたのよ。どうしたの〜。ひ〜ちゃんにティニーちゃん。
そんな顔されるとこっちまで滅入っちゃうじゃない〜」

二人はほぼ同時に顔を上げエリナの顔を見た。

「あ、エリナちゃん。」
「プレッツェルさん。」
「「は〜〜」」

そして再び顔を下げ大きくため息をつく。
そんな二人に短気なエリナは怒りの形相を浮かべ口を開いた。

「あ〜イライラするわね〜!!なにがあったのよ!
なにがあったか知らないけどね。せっかくあたいが心配して上げてんのよ!
何かいいなさい!!」

「「わ、ごめんなさい」」

またもや二人同じ反応。

「で、なんなの?」

エリナは不機嫌そうに二人に問いかけた。

「うん、実は…」

瑠兎はモニターを指差した。
そこには何かランキングと点数が表示されていた。
エリナも見覚えのあるものあるものだ。
なぜなら数時間前に彼女もこの場にいたのだから。

「これっていつものシュミレーションのランキングじゃない。これが?」

そう、新しき天使たちには実戦の経験をもったものが少ない。
これを解消すべく軍はシュミレーションを行い、さらに競わせることで解消しようとした。
しかし、問題が発生した。
いつもランキングの上位と下位が決まったメンバーになってしまったのである。
戦闘の経験があるメンバーはやはり上位に、武術や特殊な能力を持つ人たちは中に、そして普通以下の人は下位に。
ついでに3人の成績は…

「え〜っと、ひーちゃんが30位でスコアは9760点。
ティニーちゃんは37位でスコアはスコアは4240点。」
「エリナちゃんは24位で32870点か〜」

瑠兎はうらやましそうに答えた。

「は〜、私どうしても。」
「あれ?でもあなたよりまだ下に誰かいるのね。」

―シュン―
その時、ドアが開きシュミレーションルームに明るい声が鳴り響いた。

「あ〜、瑠兎ちゃんにティニーちゃん、エリナちゃんもいる〜
ちょうどよかった〜ちょっとお菓子つくり過ぎたから食べてくれない?」

バスケットから溢れんばかりのクッキーを持ったオレンジ色の髪の少女。

「「「ティファ・ヴァレンシア…」」」

38位 ティファ・ヴァレンシア  スコア 920
このシュミレーションをまじめにやって唯一3桁をはじきだしたツワモノ(?)である。

「はい、どうぞ〜」

ティファは半分無理やりにクッキーを渡した後に近くの椅子に腰掛けた。

「あの…ティファさん。」
「ん?な〜に、ティニーちゃん?」
「これ気にならないんですか?」

ティニーは例のモニターを指差した。
それを見たティファは自分の作ったクッキーを食べながら答えた。

「あ〜それね。実戦とシュミレーションは違うから別に気にしなくてもいいんじゃない?」

実際ティファはシュミレーションでは常に最下位をキープしているが本当の戦闘ではそれなりの戦果をあげていた。
紋章機の性能も理由の一つだが、シュミレーションと実戦では彼女の戦いでの動きはまるで違った。

「そんなものでよく紋章機一機で巡洋艦3隻も落とせたわね。シュミレーションじゃ1分ももってなかったのに。」
「なんでなんだろうね。私にもよく分からないわね〜ただの生命の防衛本能だったりして〜」

ティファは冗談交じりに答えた。

―シュン―
再びドアが開いた。

「あ…、ティファ、ここにいたんですね。それに皆さんも…」

今度は黒髪の女性。その手には空になったバスケットがあった。

「最下位の次はトップですか。」

次に入ってきた女性。彼女の名前はファーウェル・クロディバル。
ティファとは逆に常にトップクラスのいる女性である。
今回のシュミレーションでも機械がその動きに追いつけずにオーバーヒート。これで6度目である。
例のモニターには測定不能の文字が浮かびあがっていた。

「フェル。おかえり〜どうだった?」
「はい…。大変好評でしたよ…」
「そっか〜それなら良かった〜」

今度はエリナがクッキーを食べながらフェルに尋ねた。

「どうやったらあんなことが出来るの?まったく生き物の域を超えているわよ。」
「そうですね…やはり日々の訓練かしら…」
「日々の訓練…」

そんな一言でまとめていいものかと3人は思った。

「そういえばティファちゃんはフェルさんの幼馴染なんでしょ。昔のフェルさんってどうだったの?」
「う〜ん、そうね〜ルーちゃんを少し無口にし感じかな〜だからルーちゃんをはじめてみた時フェルかと思ったよ〜」
「へ〜そうなんだ。」
「当時のフェルはとにかく特訓に明け暮れてたな〜」
「特訓?」
「うん、私たちいた惑星には強〜い動物がたくさんいてね〜それを毎日倒してたのよ。
私もたま〜に倒していたけどさ。おかげさまでお肉には困らなかったな〜」
「強〜い動物っていったい…」
「角が6本ある牛とか、炎を吐く鶏とか。」
「すごいですね…」

「そ、それってまさか…」
「どうしたのエリナちゃん?」
「幻のシックスホーンバッファローにファイヤーコカトリス!!」
「幻?」
「ええ、珍味・グルメハンターの間でもいまだに数人しか食したことがない幻の食材よ。
栄養価が高いうえ、太らない、美容にもいいまさに幻よ!
ただね…」

急に目つきを変えたエリナ。
その目は今から怪談を始めんとする様子だった。

「ただ?」
「ただ、この動物達は異常なまでな戦闘能力を持つ動物なの。
これを追って食べる前に食べられるのがほとんどのハンターのオチね。
それゆえに幻…」
「幻…」

一同はゴクリと息を飲み込んだ。

「そんなすごいものだったんだ〜」

これまた事実の話であるがティファの身体能力は確かに一際目立つものがあった。
以前自主参加の新たなる天使達の格闘技大会の時も達人達と互角に渡り合っていた。

「そうみたいですね…」

そんな二人をみてエリナの中で何かが燃え上がっていった。
(あたいも強くなって幻の食材を食して見せるわ!)

「というわけで特訓よ!特訓!決まったからには即実行〜!」
「どういうわけなんだろ?」
「はい、そこ黙ってなさい!」
「…はい。」

エリナはすかさず瑠兎にツッコミ(?)を入れた。

「私もやんなきゃダメ?」
「当然!!ティファ。最下位になってるのに何も思わないの?」
「う〜ん、別に。私、機械苦手だし〜」
「幻の食材のためよ!」
「それならいいかも。」

よく分からないが納得するティファ。

「なんだかよく分かりませんけど、わ、私、がんばります!」
「よ〜しティニーちゃん。その意気よ!」

「…私は、何をしましょうか?」
「トップのフェルさんはコーチをよろしくね。ビシバシお願いしますね。」
「はい…。分かりました…」
 
 

こうして5人は特訓をはじめることとなった。
しかしこの特訓にて思いもよらないことが起きるのであった…
 

続く…