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リアルorシュミレーション?

実戦の特訓を始めて1週間。

「は〜くたくた。」

5人は格納庫に居た。

「お疲れ様です…」

フェルはスポーツドリンクの缶を4本と天然水の入ったコップを持ってきてみんなに手渡した。

「ほんと、あなたって無茶苦茶ね。」
「そう…ですか?」

エリナは横目で自分の紋章機を見る。
ペイント弾で真っ赤になった自分の紋章機を。
もちろん他の紋章機も同様であった。
フェルの紋章機を除き…
今日も整備班のメンバーが掃除している最中である。

「実戦だったら何回やられたんだろ…」

不吉な数字を数えようと考えるティニー

「私は10回以上は撃墜されてる。」
「「は〜〜」」

「ドンマイ、ドンマイ。また明日がんばろうよ。」
「そういってるあんたが一番落とされてるのよ。」
「えっ、そうなの?」
「はい…50回分くらいです…」
「さすがフェル。私もがんばらないと!」

「あんた、あれだけコテンパンにされてよくへこまないわね〜」
「それが私の取り柄ですから〜」
「それだけでしょ。」
「ひど〜い!エリナちゃん。もう瑠兎ちゃんもティニーちゃんもなにか言ってよ〜」

しかし二人は深くため息をつくだけだった。

「お〜い、ひーちゃんにティニーちゃん聞こえてる?」

再びため息。

「う〜」

怒りがたまっていくエリナ。

「ちょ…!」

エリナが声に出す前に先にティファが動いた。

ドン

ティファは後ろから二人の背中を押した。

「「きゃ。」」
「こ〜ら!二人ともしっかりしなさい!」
「でも…。」

「そんなんでどうするの。せっかく多忙の中時間を割いてきてくれてるフェルに悪いわよ。」

事実この2週間近くフェルは自分の仕事を削りこの特訓に付き合ってくれている。
軍の大将となれば一日の仕事量も少ないとはいえない。
そのなかでこれだけの日数特訓に協力してくれる大将なぞ彼女くらいであろう…

「別に私は…」
「フェルは黙ってて。」

ティファは再び2人に説教を続けた。

「いい、あなた達。今は気が付いてないかもしれないけどあなた達正直かなり腕が上達してるのよ。」
「「えっ?」」

二人は声を合わせて答えた。

「私は機械がダメだから腕はなかなか上達しないけどさ。
今の二人は間違いなく2週間前の二人とは違う。
もちろんエリナちゃんもだよ。」
「…」
「だからさ。がんばろうよ。ねっ。」
 

「うん。そうだよね。そうだよ。がんばらないと!」
「このままじゃ終われないよ。」
「うんうん、その調子だよ。せーの、がんばるぞ」

「「「お〜!!!」」」
 
 

「ティファ、あなたってすごいのね。」
「エリナちゃん、どうしたの急に?私が足の引っ張りようの事?」
「確かにそれもあるんだけどさ。さっきの二人への応援よ。」
「ん?私はただ思ったことを言っただけよ。いつものあなたも同じようなものでよ。」
「あたいの場合は余計に落ち込んでいたかもな〜って思ってね。
あなたの場合、なんと言うか本当に元気が出るような気がしてね。」
「エリナちゃんも人のことほめるんだ〜。」
「それじゃいつもあたいが普段自分勝手なことと皮肉しか言わないとでも言いたいの?」
「あれ、違った?」
「こいつ〜!!」
「きゃ〜ケダモノが襲ってくる〜」
「誰がケダモノだ〜!!」

逃げるティファとそれを追いかけるエリナ。
その様子に…

「ふふ。」
「あはは。」
「くす。」

「あ〜こいつら〜笑ったな〜!!」

エリナの標的が無差別化する。

「わ〜逃げろ〜。」
「こら〜!まて〜!!」
 
 
 
 

次の日…

「皆さん…特訓は今日で終わりです…」
「えっ急にどうして?」
「今朝、軍の命令で…なにやら一騒ぎがあったので…」
「そんな。せっかく調子出てきたのに。」
「ひーちゃんなに弱気になったてるの。今日で終わらせるわよ。ティニーちゃん、ティファ気合入れていくわよ〜!!」
「「「はい!!」」」
「それでは…特訓開始!!」

4機は同時に散開し、小惑星の中へとその姿を消す。

「!これは…」

先に攻撃を仕掛けたのはエリナのサテライトイージスだった。
多数のレーザーファランクスがデイブレイクスターを襲う。
しかし、これは昨日までと同じく急旋回により回避される。

「昨日より反応が格段にあがってる…さすがですね。」
「まだまだよ。」

エリナはそう言い放った後、シールドを全周囲展開でペイント防ぎながら通過する。
そして入れ替わるように今度はティファのアナザーサンシャインが現れる。

「せいや〜!」

次は多数の火炎弾を放つ。
フェルはまたしても急旋回により回避。
そして迎撃のためペイント弾の入った銃口を向ける。そのときだった。
急にモニターにいっぱいに映し出される巨大な塊。

「くっ…」

ティニーの紋章機ドライアドブレスだった。
フェルは瞬時に後退し回避。
ティニーの紋章機は何もせず通り過ぎていった。
フェルはそこへとペイント弾を放つ。
しかし、命中と同時にその塊は光を放ち消え去った。

「…!ナノマシン!」

今度は背後に一つに機影が映る。
また、ティニーの紋章機だ。

「ナノマシン…いえ、今度は本物!」

フェルの予想は的中。
ドライアドブレスより巨大な鉄球が宙を舞う。
フェルはそれを回避しペイント弾を発射する。
ペイント弾がティニーの紋章機に当たる寸前。
それは瞬時に蒸発した。

「へへ〜ん」

ティファだった。
アナザーサンシャインのリングオブアポロンの高熱によるシールドだった。

「ひ〜ちゃん、行くわよ〜!!」
「うん。エリナちゃん!」

次に現れたのはグリューナインスとサテライトイージスの2機だった。
周囲にナノマシンを散布しながらだった。

「これは…」

2人の極度の集中状態の後…

「「ツインネット!!」」

ナノマシンが蜘蛛の糸のようにデイブレイクスターの周囲全てに張り巡らせられる。
さすがのフェルもこれは予想できずに幾多もある糸の数本に引っかかる。

「さ〜、いまよ!!」

エリナの合図で4機は攻撃態勢に入る。

「考えましたね…でも…」

フェルは左上のコンソールを操作した。
それと同時にデイブレイクスターの武装の一部が変形していく。

「高速戦闘モード……起動。」

エリナ達の攻撃が放たれた瞬間。
デイブレイクスターの姿はそこには無かった。
それとほぼ同時に…

「きゃああ!」

ティニーの紋章機のモニターが真っ赤に染まる。
よく見れば他の3機にもペイント弾が打ち込まれていた。

「大丈夫。ティニーちゃん。」
「うん。」
「一体いつの間に…あっ、それよりフェルさんは?」
「レーダーに反応あり。って6時方向距離9500!!!」

3機が反転するかどうかその瞬間。
再びデイブレイクスターの姿が消える。

「「「きゃあああ」」」

今度は3機同時だった。
あっという間の出来事に理解に苦しむ4人。
分かることは一つ。
自分達はまたしてもフェルにやられたことだった。

「一体なんなのよあの速度は〜〜!!」
「うう〜〜」

そこでフェルから通信が入る。

「ご苦労様です…」
「さすがフェルだね。手も足も出ないや。」
「いえ…皆さんいい動きでしたよ…ですから私も少し本気でやらせてもらいました。」
「その形態のことですか?」
「はい…」

瞬時にナノマシンの糸を切り、さらには4人の動体視力を超える動きをした形態。
それがこれデイブレイクスター高速戦闘モード。
瞬間的に発揮できるスピードは紋章機の中でもトップクラスとまで言える代物である。
しかし、その速度の中での極めて高い命中率をだしたフェルがいかにすさまじいか4人は即理解した。

「これはトップな訳だわ。」
「そうですね。」
「参りました。」

「結局、特訓は不合格か〜」

ティファが少し残念そうに言い放った。

「あっ今日が最終日だったもんね。そういうことになるね。」
「残念です。」

「でも、いい特訓になったよ。」
「うん。」
「フェルさん。また特訓してくださいね。今度は合格してみせますよ!」
 

「あっ…今回の特訓は合格ですよ…」
「「「「えっ!!」」」」

4人同じリアクション。

「だって…さっきの蜘蛛さん攻撃に私。当たってしまいましたから…」

確かに瑠兎とエリナのツインネットでフェルを捉えたのは間違いないことだが、それを攻撃と呼ぶべきか微妙なところでもある。
まあ、フェルにとっては攻撃に一種と認識していたらしいが…

「それじゃ、最後のアレは?」

恐る恐るエリナがフェルに尋ねる。

「私の気まぐれです…」

「「「そんな〜〜〜」」」

3人は紋章機の中で脱力した。

「う〜ん、さすがフェル。あのころの遊び心は健在だね♪」

「帰りましょうか…」

「「「「は〜い」」」」

5機は帰路へと着こうとしたそのときだった。

「まって、ドライブ反応が出てる…」

ティニーの一言で他の4人もモニターを見る。

「本当だ…。」
「お迎えかな〜」
「いえ…この宙域は規定のドライブコースじゃなかったはずですが…」
「それじゃ…」

そこにドライブアウトしてきたのは…

「これってまさか。」
「間違いありませんね…」
「最悪のタイミングだわ。」
「どうしよ。」
「どうしたんですか?皆さん〜」

そして4人は声を合わせ…

「ヴァル・ファスク!!」
「?」
 
 
 
 

続く…