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第一話 黒き『仮』面の男




特務部隊『黒き翼』。
かつて黒き月の管理者であったノアにより結成された部隊。
その目的はロストテクノロジーの実験、不穏分子の排除である。
しかし、それは表の顔。
本当の目的は別にあった。

『CHAOS』

EDENのライブラリーにもその名のみしか刻まれていない謎の組織。
『黒き翼』はCHAOSへの抵抗するための部隊。
これがもう一つの顔である。



白き月謁見の間

仮面と付けた鎧の男とノアが話をしていた。

「で、俺様になんのようだ?ノア」
「相変わらず偉そうな態度ね。だれのお陰であなたがここに居られるかわかっているの?ドイステルベルグ少将?」
「なんだ?脅すつもりか?」
「ふん、全く変わらないわね。」
「それよりヤツらに何か動きは?」
「いまの所は何にも。正直ここまで何もないのって返って怖いものよ。」
「必ずCHAOSは動く。ここまでやってなにもしない相手じゃない。」
「今は警備を強化するしかないわね。」

ノアは一息つき話題を変える。

「ところであの二人はどうしてるの?」
「ああ、あいつらなら訓練場にいるはずだ。だがお前も正気か?お前と初めて会ったとき殴りにかかろうとしたヤツラだぜ。
しかも俺様の部隊に編入させるとは、普通ならその場で処分できたんだぞ。」
「でも、あの紋章機の性能は私達にとって切り札になりうるだけの可能性は秘めているわ。」
「プロイビートモデル『ムーンライトミラージュ』か。
確かにな…こっちの紋章機複数機相手に互角以上に戦ってのけやがったからな。」
「技術班の解析状況は?」
「まったく言ってシロだ。いくつもの紋章機を見てきた白き月の技術者達も旗振っていたさ。
動力機関からシステム。何もかも今まで見たことない系統を使っているらしい。」
「そう。でも、あなたには検討はついてるのでしょう?」
「まあな。あの紋章機とあの少女の服に描かれていた紋章。紛れもなくあの男のものだ。」
「B.K.ね。私も過去にスカイパレスで一度会った事がある程度だけど。
とは言え600年も前の話よ。本当に彼なの?」
「間違いないさ。あの男にとって時間なんて関係ないさ。
しかもご丁寧に色々とデータも送ってきやがって。」

ディアボロスは一枚のディスクをノアに渡す。

「内容は?」
「今までのやつらの動きだな。まったくあの紋章機のデータがあると思っていたが検討外れだったぜ。」

「それに…あの二人はもう一人の私を知っていた。」
「サティール・ディアブール…CHAOSの戦闘指揮官。俺様も一度も見たことない相手だぜ。
その実力はやつらの十天司に匹敵するとも言われてる。」
「そして何より白き月と黒き月の両方の管理代行者としての能力をもっている。
下手すらここも乗っ取られる可能性があるということね。」
「まったくシヴァやシャトヤーンが聞いたらどんな顔をするかって想像してね。」
「ちょうど二人とも留守でよかったな。」
「ならキュウィーとフリティの二人の様子でも見てくるさ。」

ディアボロスはその場を後にした。

「ウトナ・シュピトゥム…もう一人の私…か。」

ノアは天井を見上げ呟いた。




訓練場

「お〜い、アニ…っとリティ。」
「はい?なんでしょうか、ごしゅ…あっキュウィー様。」
「あ、まあな。まだしっくりこねぇな。フリティ・ラリア・アルストロメリアって名前には。」
「そうですね。私も…でも仕方ないです。」
「ああ、そうだな。」

==回想シーン==

二人が惑星ファルドを離れムーンライトミラージュ内にてB.K.から通信が入る。

『…という訳で今後はアニスはリティと呼んでやってくれないか?』
「B.K.なんか納得いかないんだが。」
『こればっかりは大人の事情じゃから仕方ないじゃろう。
アニスと言う名前、初めて読む方にはGA2のあの子と名前が被っていると勘違いしてしまう可能性もあるのじゃから。
あっちの方と性格も体格も全然違うのじゃからな〜』
「なんの話だ?一体。」
『本当ならこっちが先なんじゃぞ。先なんじゃ。所詮二次創作はオフィシャルには勝てない運命なのじゃ。』
「なに泣いているんだよ。」
『泣いてなんかいないわい。』
「お父様大丈夫ですか?」
『うう〜リティお前だけがわしの心のオアシスじゃ〜』

「それとリティ。」
「え、あ、はい。」
「今後はキュアンの事は『ご主人様』と呼ばない方がよいじゃろう。」
「?どうしてですか?」
「これからは正式に皇国軍に接触することになる。
それで相手側に余計な疑いを掛けないためじゃ。キュアン。お前さんもそっちの方が都合がいいじゃろう?」
「まあな。」
「…お父様とご主人様がそう言うのであるなら。分かりました。」
「えっとリティ。今後はキュウィーでよろしくな。」
「はい。分かりました。キュウィー様。」

==

黒い軍服を着た青年がキュウィー達に話しかける。

「おい!アンティーク!」
「ん、なんだ?」
「なんだじゃない。次の訓練は始まっているんだ早くこい!」
「あ、ごめんなさい。」
「あ、リティちゃんはいいよ。君はエンジェル隊と同じ扱いになるから。」
「私も黒き翼の一員ですから。」
「健気だね〜」
「なんだその目は!やればいいんだろ!」






訓練場の扉が開きディアボロスが姿を現す。

「お、やっているな。」
「あ、隊長。ご苦労様です。」
「なんだ、この化け物仮面男。」
「キュウィー様止めた方がいいですよ。あの時も隊長に捕まった訳だし。」
「ならリベンジだ!」
「まあ、俺様は別にかまわないが。お前のようなヒヨッコに負けてやるほど俺様は優しくないからな。」
「言わせておけば!」

キュウィーはディアボロスに殴りにかかる。

「ほらよ。」

しかし、それよりも早く、軽く足払いを。

「ぐっ。」

思わずつまずき転倒するキュウィー。

「はは、まだまだだな。」
「くそっ!」

すぐさまキュウィーは立ち上がり、ディアボロスを狙う。
しかし、その攻撃のことごとくを悠々に避けるディアボロスであった。

(なんて野郎だ。あれだけの鎧を着けておきながらこれだけの動きができるなんて。
これじゃまるで白騎士並じゃないか!?。下手すりゃあいつよりも強い!?)

「ゲームオーバーだぜ。」

ディアボロスはその拳をキュウィーの眼前にて寸止めした。
キュウィーはそのまま腰を崩し、その場に尻餅をついた。

「くっ。」
「あ〜言わんこっちゃ。」

「今日はサービスしてやったぞ、目の前にリティちゃんがいたからな。
まあ、二人ともここにも馴染んできたか?」
「ええ、そうですね。」
「ちっ、そうだな。」

「二人とも正式の軍人になったことになっている。そのあたりしっかり自覚するようにな。
特にキュウィー。」
「なんだその言い方は?俺限定か?」
「それなりの実力はあるからといって過信するなよ。お前より強いヤツはいくらでもいる。」
「そんなことわかったるよ。」
「ならいいが。
これだけはよく覚えておけ、ここ黒き翼の心得は「初志貫徹」「質実剛健」「戦場帰還」「家族の笑顔」だ!
この4つだ!」
「なんか無茶苦茶なこと言ってないか?それに最後「家族の笑顔」って何だよ!」
「なにを言う!恋人、妻、子供、兄弟、姉妹、これらを守ることこそが我々軍人の役目だ!」
「てっきり皇国軍人だから皇国万歳とかシャトヤーン様やらノア様敬愛とか言うかと思っていたのによ。」
「なにを言う俺様たちは軍人である以前に一人の人間なんだぞ!」
「さすが隊長!一生ついていきます!」
「お前達!!」

何故か抱き合うディアボロスと黒き翼の隊員達。

「まさか、こいつらバカ?」

キュウィーがそんなこと言っている間に胴上げされているディアボロス。

「っていつの間に胴上げ!?」



「それじゃ俺様は他の仕事が残っているので、皆、訓練ヨロシク!」
「「ラジャ〜!!」」


ディアボロスはそういい残すと訓練場を後にした。

「この感じ…いいかも。」
「ってリティ!」

思わずツッコミを入れるキュウィーであった。









「少将!ちょうど良かった。」

ディアボロスが口笛を吹きながら廊下を歩いていると一人の整備員が慌ててディアボロスに声を掛ける。

「ん?どうした。そんなに急いで?」
「はい。先ほどあの二人のH.A.L.O.の同調試験をしたのですが…とにかく早くこっちに来てください!」
「おいおい、そんなに引っ張らなくても今行くから。」

ディアボロスは整備員に連れられて操作室へ入った。

「これを見てください。」

整備員はモニターを表示させるとディアボロスは感嘆の声を上げた。

「何だ!?これは!!」

そこに表示されたのは常識では遥かに考えられない結果だった。

「フリティ・ラリア・アルストロメリア。
彼女の初のH.A.L.O.の試験においての同調率がすでに基準値を遥かに超えます。
それをはじめに紋章機操作時における反射神経・動体視力が異常な数値をはじき出しています。」
「信じられないな。」
「ええ、そでも更に驚くべきことがあるんです。」
「?なんだそれは?」
「今度はこれを。」

次の画面が表示される。

「!?なんだこれは。」
「あの二人を乗せて試験した時のこの紋章機の出力特性です。」
「この数値特性…単独運転か!?
ムーンエンジェル隊のエースパイロット、ミルフィーユ・桜葉以外に操作できるものはほとんどいないと聞いていたが…。」
「半分は正解ですね。」
「半分?」
「はい、これはただのクロノ・ストリングエンジンでは無いと思われます。
単基運転でも試験の状態でこれだけの出力は。」
「つまり、なにか手を加えたクロノストリングとでも言うのか?」
「はい、恐らくは…」
「まさに使い用だな。この出力。」
「ところでキュウィーの方は?」
「ええ、彼の場合、H.A.L.O.との同調は皆無です。
しかし、あの紋章機に乗っている間はアルストロメリアさんと意識を共有しているみたいです。」
「つまり操作の意思がキュウィーで実際に動かしているのがリティと言う事か。
それでキュウィーに紋章機の適正が出ないと言う理由か。」

整備員は驚いた様子でディアボロスを見上げた。

「さすがはドイステルベルグ少将ですね。私が答えを言う前に言ってしまうなんて。」

ディアボロスのクロノクリスタルに着信音が鳴り響く。

「ん?なんだ?」

ディアボロスはクロノクリスタルに触り通信をつなげる。

『ディアボロス。至急作戦室に集合よ。』
「ノアか。何があったのか?」
『ええ、現在第一方面軍にて正体不明の敵艦隊により襲撃を受けたという報告を受けたわ。』
「第一方面軍。惑星ファルドのあった方角だな。」
『ついに動きだしたわね。ヤツらが。』
「CHAOS!」


次回予告
ついに正式に戦線布告を行い攻撃を仕掛けるCHAOS。
ディアボロスは黒き翼を率い打って出た。
その中には天使達の姿も…
ガロム星系にて皇国軍とCHAOSとの戦いが今始まろうとしていた…

太陽と月光 第二話 黒き翼 出『陣』

続く
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