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第四話 白き月『襲』撃




ヴァルムンクに帰還した6人。
格納庫ではディアボロスとティファが待っていた。

「作戦成功おめでとう!」

ティファはレモネスに近づき手をタッチした。

「ああ。自分でも思う通りにいって驚いているさ。
ただ。後退させただけで撃墜は出来なかったのは悔しいね。」
「次がありますよ。」
「シーラあんたねぇ。」
「成功祝いに記念写真〜」



皆が喜んでいる中、リティは少し考え込んだ様子であった。

「どうしたんだ?リティ?壊れた右のシールドのことでも気にしているのか?」
「それも少しあるのですけど…」
「じゃあ、なんだ?」
「今回の戦いであの二人の姿がありませんでした。」
「サティールと白騎士か?」
「はい。普通に考えれば同じCHAOSですから、合流していると思ったのですが…」
「しかし、ここにはいなかった…か。」

後ろからディアボロスの声が聞こえた。

「おい、驚かすなよ。」
「もしかしたらあの部隊そのものが、俺様達同様に陽動なのかもしれないな…」
「どういうことだ?」
「こっちで雷鳴作戦を展開している同時刻にスカイパレスが襲われた。」
「なに!?」
「そこでも十天司を名乗るものが現れたという話だ。
本人はクウェン・サインと名乗った…と。」
「スカイパレスはどうなったんだ?」
「向こうの部隊と謎の応援により撃退させることが出来たと言う話だ。」
ディアボロスの言葉に、リティは言葉を漏らす。
「お父様だ…」
「誰なの?その人。」

シーラも興味有り気にキュウィー達に尋ねる。

「ああ、リティを作り、この紋章機を作り上げた人物さ。」
「その話が本当なら、その人、ロストテクノロジーに関して相当な知識の持ち主ね。
ロストテクノロジーの結晶である紋章機を製造できるなんて…
実に興味深いわね。」

リディアが笑みを浮かべている所にシナモが。

「リディアのキャラ変わってる〜」
「まあ、いつものことですよ。」




格納庫にブリッジからの緊急放送が流れる。

『ディアボロス司令!ブリッジに至急来てください!』

その声は明らかに慌てている様子だった。

「緊急事態か。わかった今、行く。」


ディアボロスはブリッジへと急いで向かった。

「何があった。」

ディアボロスがブリッジへ戻るとブリッジ内は騒然としていた。

「現在、白き月が攻撃されています!」
「何!?」

モニターには白き月がCHAOSの艦隊に攻撃されている様子が映し出されていた。

「あの艦は…サティールの艦!?」
「やはり…俺様の嫌な予感が当たってしまったか…。
あそこにはノアが残っている…」

「司令。」
「進路を白き月へ!全速で向かう!艦列が崩れても構わん!白き月に向かうことを第一に!!」
「了解しました。」

そして再びヴァルムンクはクロノドライブに入った。










「ドライブアウトします!」

ヴァルムンクはクロノスペースから通常空間に戻る。

「状況は!?」

「はい。現在皇国近衛隊が交戦中です。」

「なんとか間に合ったか。ルフトのおっさんがこっちに残っていて本当に助かったぜ。」
「しかし状態はこちらが圧倒的に劣勢です。」
「もちろんわかっているさ。お前達分かっているだろうな。」
『ああ、敵をぶっ潰せばいいんだな?』
「今度はお前たちの好きにやって構わない。何かあったらこっちから通信を入れる。」
『了解したよ。まあ任せな。』
『なるようになりますよ。』
『そうだね〜』
「それと今回はティファも出るから援護は頼んだぞ。」
『みんなよろしくね。』





「よし!紋章機部隊、全機発進だ!」


ヴァルムンクの格納庫が開き紋章機が戦場へと舞っていく。



「ルフト将軍がここまで追い詰められているなんて…
こいつらタダモノじゃないね。」
「ええ、気を引き締めないとね〜」
「ティファ。あなた、危なくなったらすぐにヴァルムンクに戻るのよ。」
「は〜い。」

「それじゃ、いこっか。」

リディアのダブルフェイスは高機動型へ変形すると一目散に敵へ攻撃を開始した。

「今回はとにかく敵をやっつければいいから、楽といえば楽よね。」

続いてシーラのシューティングスターが飛び出していく。

「そう言うことなら負けてられないね!」

レモネスのワイヤートゥワイン。

「バリバリ倒しちゃうぞ〜」

シナモのライトスナイパーも続く。

「ファイト〜一発〜」

気合を入れてティファも飛び出していく。

「キュウィー様、私達はどうしますか?」
「ああ、決まっている。俺達はあの戦艦を潰す!!」
「はい!!」

キュウィーとリティの乗るムーンライトミラージュは遥か彼方にあるサティの戦艦を目指す。


「将軍!あの艦隊は!」
「黒き翼か!やっと来たか。これで少しはマシになるな。」
「しかしアレだけの艦隊だけでは…」
「黒き翼は精鋭部隊じゃよ。見ていれば分かる。」



ヴァルムンク

「さあこっちもおっぱじめるか!!陣形はフェンリルの鎖だ!あとからついたヤツラにも伝えておけ!」
「了解しました。」

黒き翼。そして天使達の参加によって戦況は大きく変化していった。
特にディアボロスの流れるような陣形は凄まじい速さで敵の艦隊を打ち砕いていく。









再びヴァルムンク

「敵の旗艦から一機の戦闘機を確認しました。…これは!?」

オペレーターが一度驚いた様子であった。

「紋章機!?」

ブリッジは一時騒然となった。

「なに!?」
「該当データ無し。しかし…」
「どうした?」
「形状がこちらの所属のクロノスフュージョンに極めて酷似しています。」
「クロノスフュージョンにだと!?」
「はい。見た限り武装が酷似しています。」

(ついに現れやがったか…白騎士のデク人形め。
しかもアレを使ってくるとはな…まったく言ってタチが悪い。)

「紋章機部隊のヤツに通達。あの白い紋章機にうかつに近づくなってな。」
「は、はい了解しました。」



同時刻、ムーンライトミラージュもその状況を捉えていた。

「キュウィー様!」
「ああ、白騎士のヤロウだ!今度こそ落とすぞ!」
「はい!今の位置なら1分後にはいけます!」
「今度こそ決着をつけてやるぜ!」
「ミラーフェアリー展開します!」

ムーンライトミラージュからミラーフェアリーが分離する。


その様子にレモネスは。

「ちょっとアレには近づくなって!」
「悪いな。コレだけは譲れないんだ。」
「おい…」

キュウィーはレモネスの通信を切り白騎士の紋章機へと向かった。




「白騎士!覚悟!!」

ムーンライトミラージュから放たれたレーザーファンランクスを軽々しくエネルギーフィールドで弾くクロノスファントム。

「敵機確認…」

「フィールドの出力、前よりも上がっています!」
「あっちも強化しているって事かよ。」


今度はクロノスファントムの砲台よりレールガンが放たれる。

「この程度!」

残った左のシールドでその攻撃を受け止める。

「くっ、さっきの戦いでこっちの出力は下がっているのか!?」
「キュウィー様、上!」

ムーンライトミラージュの上部にクロノスファントムのファントムウィングが数基待機していた。
それを瞬時にフィールドとミラーフェアリーで防ぐ。

「は〜危なかった。」
「キュウィー様!まだです!」

気が付けばファントムウィングによって包囲されていた。

「これもヤツの想定範囲内って事か!くっ、癪に障る!」
「3時方向から一気に抜けます!」
「おう!」

ムーンライトミラージュはファントムウィングの攻撃の中一気に突っ切り艦体の残骸に身を隠す。

「前よりも強くなっていないか?あいつ。」
「はい、以前より攻撃に移る反応が格段に上がっています。」
「ちっ、せっかくこっちも訓練していたって言うのによ。」
「そうですね。…!?」
「どうした?リティ?」
「回避してください!!」

リティのいわれるままに回避行動を取った直後に、艦体の残骸が跡形も無く吹き飛ぶ。

「例のマイクロブラックホールキャノンかよ…あぶねえ」

しかし白騎士の攻撃はそれだけでは終わっていなかった。
多数のミサイルランチャーとレールガンの同時攻撃。
ムーンライトミラージュは再び片方のシールドで攻撃を防ぐ。

「シールドの出力低下。エネルギーが!?」
「なっ!?こんな大事な時に。」

続けてミサイルランチャーとファントムウィングが放たれた。

「ダメ!回避間に合いません。」
「くっ!」

周囲に爆音が響きわたった。




「生きている…」


キュウィーとリティは周囲を即座に確認する。
大規模にわたり敵の艦隊が破壊されていた。

「これは一体…どういうこと?」
「キュウィー様!後ろ!」

リティの声に反射的に紋章機を動かす。

案の定上から白騎士の攻撃が襲いかかる。


ドーーーーン


「えっ!?」

それはクロノスファントムの後部にミサイルが当たる音であった。
そして一つの通信が割り込まれてくる。


『おい、そこの紋章機のパイロット。』

サングラスを掛けた男から通信が入る。

「あんたは誰だ?」
『俺はただの傭兵だ。ここは俺達に任せてお前たちはヴァルムンクへ戻れ。』
「俺達?」
「7時方向にドライブ反応。これは…」

そこに現れたのは一隻の戦艦だった。

「「「タルタロス!?」」」



タルタロス ブリッジ


「どうやらピンチには間に合ったみたいですね。」

水色の髪の女性が艦長席に座っていた。
彼女の名前はアクアビット・リュトン。
リュトン家のエリート軍人である。

「いいタイミングだろ?まだ僕の腕も捨てたものじゃない。」
「そうね。イーグレット。」

操舵兼射撃席に座っている茶髪の男性。
彼はイーグレット・ハッテンハイマー。
かつて『閃光の鷹(ライトニング・イーグル)』と呼ばれていたエースパイロットである。

「それにしてもカルトンも無茶をするな。クロノスペース内で発進をしてしまうなんて。」
「本当に、アイツと同じ、無茶ばかりするんだから。」

その様子を少し不安げに見つめるのは銀髪の女性。
彼女はカルトンとコンビを組んでいる傭兵のエル・チェルギである。

「まあエルさん。しかしカルトンさんの腕は間違いないことは確かですし。」
「CHAOSね。まさかまた戦うことになるなんて…全く。」

意味深気にエルはCHAOSの戦艦を見つめた。



「キュウィー様、ここは彼らに任せて一度ヴァルムンクに戻りましょう。」
「ちっ。この状態なら仕方ないか…」

キュウィー達は紋章機を反転させヴァルムンクを目指す。

「…」

白騎士は追撃を仕掛けようとするが、カルトンの乗るシルエットコンドルにより妨害される。

「お前の相手は俺だぜ?」

白騎士はシルエットコンドルに攻撃を仕掛ける。

「ふっ、遅いな。」
「速い…」

その攻撃を回避するとカルトンは反撃に移る。

「その機体の特性はよくわかっているんでね!」

絶妙なタイミングで放たれるミサイルとビーム砲。
クロノスファントムはエネルギーフィールドを張る。
だがミサイルの衝撃より、わずかに穴が開く。
そこにビーム砲がすり抜けクロノスファントムに一撃を与える。

「損傷確認…許容範囲内。」

「ちっ。さすがに頑丈だな。」

白騎士はカルトンと戦いつつも周囲のレーダーを確認する。

「頃合か…」

今度はクロノスファントムが反転し退却する。

「今は深追いしない方が良さそうだな。
タルタロス。補給に戻る。」

カルトンもその場を離れ補給に戻った。



キュウィー達がヴァルムンクに戻る

「あれ?キュウィー様、ほかに戻ってきている紋章機があるみたいですよ。」
「本当だな。あれはリディアとティファのだったのか。」

格納庫では補給中のダブルフェイスと修理中のアナザーサンシャインがあった。

「まったくバカですわね。」
「う〜そんなこと言わないでよ。リディアの意地悪〜」
「バカバカバカ〜♪」
「歌わないで下さい〜残骸に当たって航行不能になっただけなんですから〜」

「…バカだな。」
「…は、はい」

「あ〜キュウィーさんにリティちゃんもひどい〜」

そこに困り果てた顔をした整備員がやってきた。

「ひどいのはそっちの方ですよ。」

「なにかあったの?」

「アナザーサンシャインの装甲は他の紋章機とは全く違う素材で出来ているのです。」
「つまり修理できないの?」
「そうです。今も仮に耐久・耐熱性の補修材で塞いでいますが、アレの熱でどれだけまで持つか…」

そういうと整備員は格納庫内の一つのアームを指した。

「溶けてますね。」

率直に答えるリティ。

「どれだけの熱量持ってたんだよ。」
「あははは〜」

「笑って誤魔化さないで下さいよ〜」












ヴァルムンク ブリッジ

「ラフォタン・カルトン。元ワッサー傭兵団のナンバー2。噂に聞いていた以上の腕前だな。」
「はい。驚きました。あの反応速度そして、操縦テクニックは尋常じゃありません。」

そこに一つの通信文が届く。

「これは…
大変です!最終防衛ライン突破されました!!
敵主力戦力は白き月に突入した模様です。」

「まずいな…白き月の装備では、あのデク人形の集団はキツイぞ。」
「はい…」
「仕方ないか…」

ディアボロスは少し考えた様子をしたが、
しかし次の瞬間。

「艦内に通達!襲の型!
黒き翼戦闘員は第ニ種強襲装備に待機!」

「第二種強襲装備!?司令…まさか…。」

「白き月に、大穴を空けるおつもりですか!?」

「始末書ならいくらでも書いてやるよ。
白き月が奪われたらたまったものじゃない!!
絶対に死守しなければいけない。」

「了解しました。」

オペレーターは艦内に通信を流す。

『黒き翼全隊員に通達する。これよりヴァルムンクは白き月に突撃し、内部の敵部隊を殲滅します。
そのためヴァルムンクは『襲の型』を実行します。戦闘員は第ニ種強襲装備で待機。』



格納庫

「今の放送…」
「キュウィー様、急ぎましょう。第二種強襲装備といったら、要塞攻略用装備の事ですよ。」
「よく覚えているなお前。」
「あ、はい。一度聞いたことは大体覚えていますので。」
「それってかなり凄いことじゃない。私なんか、全然覚えようとしても覚えられないのに。」
「ティファと一緒にしちゃいけないわよ。ティファはおバカさんなんだから。」
「う〜まだいいますか〜」

「お前らも、いい加減にしたらどうだ?」

後ろより声が聞こえ、振り向くとそこにはディアボロスがいた。
普段の鎧姿に加え巨大な斧槍を持っていた。

「今回の作戦だがお前達には内部での救助作業に移ってもらう。」
「俺達が救助作業?何故だ?。サティールがいるかもしれないんだろ?。」
「ああ、俺様達にはやり方がある。正直新人のお前達を即戦力として使うほど甘くないと言う訳だ。」

「あの〜私達は?」

ティファも念のためにディアボロスに尋ねてみる。

「言ってなかった?お前達と。」

「へ?」

4人は同時に顔を合わせた。

「「「「ええ〜〜!!」」」」

次回予告
どうもシーラです。
黒き翼の皆さんは白き月で白兵戦みたいですね。
私は引き続き紋章機で戦闘中です。
あれ?なぜかリディアさんとティファちゃんも白兵戦?。
黒き翼じゃないのに。
つまりは、次回は私の出番が少ない!?
う〜んなんとかなるかな?
と言うことで次回 太陽と月光 第五話 干渉『者』と代行『者』
いつになったら釣りにいけるのかなぁ?

続く
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