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第五話 干渉『者』と代行『者』




白き月内部

そこでは、兵士達が防衛の為に待機していた。

「Dエリア突破されました!!」
「信じられない…非戦闘員の避難はまだか!」
「最低でもあと20分は必要です。」

周囲に爆音が鳴り響き、機械兵士の群れが現れる。

「くっ、ついにここまで来たか。
だがここは絶対に通すわけには行かない!!
全員構え!!」

隊長の声に隊員も合わせ、それぞれの武器を構える。

「撃て!!」

そして一斉射撃。
周囲は再び激しい爆音と爆煙に包まれる。

「どうだ!」

爆音が終わると、再び不気味な機械兵士の足音が聞こえ始めた。

「一体どれだけいるんだ…こいつら。」
「隊長!次の命令を!」
「ああ、第二射だ!」



謁見の間
そこにはノアが一人襲撃の様子を見つめていた。

「こんな時に限ってシャトヤーンもシヴァもいないなんて。
私じゃ、防衛設備を動かせないのに!!」

なにも出来ず悔しがるノアだった。
そして別のモニターを見つめる。

「ディアボロスのバカは、なにやってるのよ。」



再び白き月内部。

「なんとか持ち耐えましたね。」
「だがこれ以上は持たない。」

実際に兵士達の疲労もピークに達していた。

「次が来ました!」
「えっ。」
「どうした?」
「敵は一体です。」

それは怪しく輝く白く鎧。
それは怪しく奏でる殺意の戦慄。
鉄の仮面を被る一人の男。

「なんだこの気配は!?」
「空気が凍てついているみたいだ…。」
「何をしている!攻撃開始だ!!」

兵士は攻撃を開始する。

この回廊に風が吹く。

「ウソだろ…」

白騎士は、狭い通路の中を飛び交う弾道を全てかわし、防衛線の内部へと侵入する。
そして無言で剣を抜く。
相手の鎧ごと切り裂き、その通路は鮮血に染まる。

「隊長!!うわぁぁ!!!」

半狂乱となりながら、部下であった兵士は銃を白騎士へ向ける。
しかし兵士が引き金を引く前にその手ごと切り落とす。
そしてその返し刃にて止めを刺す。

「ば、化け物だ!!」

残った兵士は、その惨状に恐れをなし、自らの武器をその場に捨て逃げ出す。
白騎士の鉄化面が怪しく輝いた…。








ヴァルムンクはそのまま白き月に突撃。
その先端部分は奥深くまで突き刺さる。

「よし!突入だ!!」

ディアボロスの合図で一斉に黒き翼の隊員は内部へと侵入していく。

「こ、これは!!」

白き月の内部は大量の機械と、人の残骸が周囲に散らばっている状態だった。

「酷い…」
「……状況は思っている以上に深刻だ!。全員気を引き締めていけ!!」

(この傷跡…新しいな…。白騎士との距離はそれほど遠くないということか。)





一方キュウィー達は…。

「アイツらがここに来てるというのに、俺は救助活動かよ。」

愚痴をこぼしながらも、周囲を確認しながら進むキュウィー達。

「キュウィー様、これも大事な任務ですよ。」
「そうそう。私達の助けを誰かが待っているはずです。」
「そうね。」


「ちっ、全くやってられないぜ。」

キュウィーが思い切り床を殴りつけると…

「えっ!?」

床が突然崩れキュウィーとリティはそのまま落下。

「うわぁぁ!!」
「きゃぁぁ!!」

そして地面に叩きつけられる。

「痛って〜」

そして、キュウィーが立ち上がろうとした途端にリティがその上に落下。

「うわっ!?」

「ご、ごめんなさい。キュウィー様。」


「大丈夫〜?」

遠くからティファの声が聞こえた。
キュウィーはそれに答える。

「ああ。たいしたことはない。」
「よかった〜」

「俺達は出口を探すから、ティファたちは先に行っていてくれ。」
「了解。任せて。」

キュウィー達の足音が遠くまで行ったこと確認した後、ティファが周囲を見渡す。

「あれ?リディアさんは?」

リディアはまた、こつぜんと姿を消していた…。

「どうしよ〜!」

ティファの叫び声が回廊に響く。

その後一息ついて手を叩く。

「とにかく救助作業ね。」

ティファもその場を離れた。






白騎士は回廊を歩いていた。

「よし!今だ!」

そして背後から一人の兵士が狙い撃つ。

「後方より敵接近を確認。」

白騎士は銃弾に当たることなく反転し、短刀をその兵士に投げつける。

「ひっ!」

金属と金属のぶつかり合う音が周囲に響く。
白騎士の投げつけた短刀は音をたてて、床に落ちた。

「久しぶりだなデク人形!」

そこにはディアボロスが立っていた。
そして、バハムートティアを振りかざす。

「…」

白騎士は無言のままもう一方の剣を構える。
先に仕掛けたのは白騎士だった。

ぶつかり合う二つの力に空気が響きあう。
そして二人とも、鎧を着ているとは思えない速度で動きまわる。
その中でも白騎士は落ちている短刀を拾い上げディアボロスの攻撃をかわす。

「隊長とここまでやりあえるなんて…あの鎧のヤツ何者なんだ!?」
「コイツは俺様が相手をする。お前達は他のところに回れ。」
「了解しました。私達では足手まといになりそうですね。ご無事で!」

ディアボロスの命令で他の隊員は敬礼をした後、移動する。
他の隊員がいなくなったことを確認すると、白騎士は口を開く。

「また邪魔をするか…」
「当たり前だ!お前らこそさっさと帰りな!
ここはお前のような輩が来ていいほど、汚れた場所じゃないんだよ!!」

ディアボロスは携えていた斧槍、バハムートティアを大きく振り下ろす。
白騎士は2本の剣で抑えるがその衝撃に膝をつく。
しかしすぐさまディアボロスと距離をとり構える。

「ふん、相変わらずじゃないか。さすがにこの程度じゃ無理か。」

白騎士は無言でディアボロスに襲いかかる。
ディアボロスは巧みにその攻撃を避ける。
しかし、剣撃に交えて白騎士はディアボロスに蹴りを加える。

「くっ。」

ディアボロスは激しく吹き飛ばされ壁に激突する。

「ちっ、やってくれる。」

ディアボロスもまたすぐさま立ち上がり、バハムートティアを握り再び構えた。






その頃ティファは…

「大丈夫ですか?」

瓦礫に埋もれた兵士を助け声をかける。

「うう…あんたは?」
「私はティファ。天使って言えばわかりやすいかな?」
「そうか…すまない。」

ティファは手際よく鞄から薬草と包帯を取り出し、応急措置を施す。
その間に兵士は周囲を見渡す。
周囲には、数多くの兵士の亡骸と、同じ位の数と思われる、機械兵士の残骸があった。

「自分以外は全滅ですか…」
「他に生存者がいるかもしれません。私、探してきます。」
「しかし…」
「諦めちゃったら本当にそれで終わりだもの。」
「そうだな…。」

兵士は傷ついた体を起こし、立ち上がった。

「あ、あなたはまだ動いちゃダメですよ。」

ティファが、その兵士に声をかけた時である。
彼女の背後にいた、機械兵士の残骸が動きだしたのだ。

「危ない!!」
「えっ。」

突然兵士に突き放される。
それと同時に兵士その場に倒れる。

「いった〜あっ。」

ティファは身代わりとなった兵士とそれを撃った機械兵士に気が付く。

「これって大ピンチ?」

ティファは一つの異変に気が付く。
彼女の耳、いや、頭に響くような、何かがあることを。

「これは…歌?」

ティファはどこからとも無く歌が聞こえた気がした。

(この歌、どこかで聞いたことが…)

ハッと気が付くと機械兵士は、その銃口をティファへと向けていた。

「しまった!」


しかし時間がたっても何も起こらない。
ティファは恐る恐る目を開けた。

「大丈夫ですか?お嬢さん。」

そこには一人の美しい金髪の美青年が立っていた。
厳かな雰囲気に包まれた不思議な服装に巨大な十字架を持っていた。
それはまるで中世の聖騎士か、聖職者を連想させるものだった。
思いもしていなかった様子に半分パニック状態になるティファ。

「え?あれ?どうして?あなたは?」

美青年はティファに手を差し出す。

「私はクエーサ。ただの傭兵です。」
「ありがとう。」

ティファはクエーサの手を取り立ち上げる。

「つっ!」

するとクエーサは突然手を離す。
まるで、何かの電撃が走ったかのような驚いた様子で、ティファを見る。

「どうしたのですか?」
「あ、すみません。」
「クエーサさん…その左目…」

クエーサの左目には全くといっていいほどに光を宿していなかった。

「ごめんなさい。驚かせて。」
「義眼なんですか?」
「いえ、生まれつき極端に視力が無いだけです。」
(それにしても久しぶりだ…この感覚。一体この少女は何者だ?)
クエーサは彼女に奇妙な感情を抱いたが、落ち着いた表情を取り戻し、こう言った。

「それよりここは危険です。私が安全な場所に案内しますよ。」
「いいえ。私は怪我人を探します。まだいっぱい、いると思うから。」
「わかりました。私が護衛を致しましょう。」
「え?いいの?」
「はい。女性一人にこんな所を歩かせるわけには、ゆきませんから。」
「ありがとう♪」

ティファはかばってくれた兵士を見つめた。

「助けられなくてごめんね。」

そして二人はその場を後にした。




一方ディアボロスと白騎士の戦いはまだ続いていた。

(くっ、こっちはデク人形相手しているわけには行かないのに。)

ディアボロスはそう思いつつも、白騎士を振り払うことが出来ずにいた。

(まだアレを使う訳にもいかないしな…)

激しくぶつかり合う双剣と斧槍。

(なにかきっかけがあればいいんだが。)

「今よ!」

その掛け声と同時に白騎士の動きが止まる。

(その声はリディアか。よし!今なら。)

ディアボロスは精神を集中させる。
そしてバハムートティアを強く握り締めた。

「我が声に答えよ焔の竜よ!」

ディアボロスの声に呼応する如く、バハムートティアが真紅の炎に包まれる。

「白騎士!これで吹き飛びな!!」

白騎士は直撃を受ける寸前に動きを取り戻し、剣で防御体勢をとる。
しかしディアボロスの一撃により白騎士は燃え上がり、吹き飛ばされる。
そしてそのまま幾層もの壁を突き破っていく。
そのうち白騎士の姿に見えなくなっていった。

「全く手間かけさせやがって。」
「お疲れ。」

後ろからリディアが現れる。

「おう、助かったぜリディア。
お前、意外にやるものだな。」
「ええ、昔に結構鍛えられたおかげでね。
ところで今のはどうやって?」

リディアは炎が止んだバハムートティアを指す。

「ああ、この武器も一種のロストテクノロジーでな。
俺様に共鳴して炎を発生させることが出来る。
だけどこれをやるのにはどうしても隙が大きく出てしまう。」
「なるほどね。ところであの相手は?」

リディアは今度は何枚も崩れ去った壁の先を見る。

「あれぐらいでは死なないだろうな。」
「止めを刺さないの?」
「今はそれよりノアが気になる。
しばらくは瓦礫の下だろう、動くことも無いだろう。トドメはその後でもいい。」
「了解。」

ディアボロスとリディアは、ノアのいる謁見の間へと急いだ。






キュウィー達は出口を探しながら、白き月の中を進んでいた。

「一体どこまで行けば出口があるんだ?」
「ここ…」
「どうした?リティ。何か見つけたか?」

「あれ。」

リティの指した方向には、大型の機械が何かを作っている途中のまま、停止している様子が見えた。

「白き月が兵器工場というのは、本当だったんだな。」
「はい。」
「それよりよく分かったな。この暗い中で。」
「あの出来事から、暗い中でもよく物が見えるんです。」
「動物の勘か?」
「ご主人様ひどいです。」
「「あっ」」

思わず昔の呼び方をしてしまうリティだった。
そして少し赤面になるリティ

「あっ、すみません。」
「別に謝らなくても。」

(二人っきりだから、別にいいか。)

「あれは…」
「どうしたリティ?」

今度はリフトのようなものが目の前に広がってきた。

「ここでは、こんなもの見たこと無いぞ。」
「きっと工場が動いていた時代のものだと思います。」
「わかるのか?」
「はい。大体ですけど。」

リティが操作盤に触るとリフトは降下し始める。

「おい。下に降りてるぞ!」
「これで良いんです。下に転移式エレベーターがあります。」
「ん?なんでそんなこと知っているだ?」
「あれ?本当ですね。」

リティは、疑問に思った口調ではあったが、特に気にしていない様子だった。
リフトはそのまま降下を続けた。







謁見の間では、二人の少女が対峙していた。
同じ髪の色、同じ顔、だが、その瞳はまったく異なるものだった。

「はじめまして。お姉さん。」

一人の少女、サティはノアに歩み寄る。

「あなたが私のクローンね。」

「ええ、そうよ。」

サティはゆっくりと自分の武器を構える。

「そうね。最期にいいことを教えてあげるわ。
せっかくの姉妹ですもの。
なぜ私がここに来たと思う?」

「そんなこと知らないわよ!
それにここは白き月よ。
私のクローンなら、黒き月しか操作できない。
でもアレはもう、この世界に存在しない。」

「ふふ、私の思ったとおり。
貴女は何も知らないのね。」

サティはゆっくりと右手を上げた。
すると謁見の間に光があふれ出す。

「どうして貴女が白き月の機能を!!」

「ふふ、私は『代行者』なのよ。」

「『代行者』!?嘘!あの計画は道徳的な問題で中止されたはず!!」

「道徳的?ふふ、黒き月の管理者である、貴女の台詞じゃないわね。」

「もしそれが本当なら、貴女は…」

「おしゃべりはココまでね。
さようなら。お姉さん…」

自分の武器を取り出しノアに向けるサティ。
そして引金に指をかける。

「させるか!!」

巨大な戦斧が飛翔し床に突き刺さる。
サティの背後にはディアボロスたちが立っていた。
その斧の存在で全てを把握したサティは、その顔を歪める。

「くっ、追いつかれたか!白騎士は一体何をやっていたんだ!!
まあいい。私がここに来たことで、決着はついたのだからな。」

「やってみなきゃ分からないぜ?サティール・ディアブール!!」

ディアボロスは風の如く床に刺さったバハムートティアを引き抜き、容赦なくサティへと振りかざした。
しかしサティは笑みを浮かべていた。

バハムートティアがサティに触れようとした瞬間に激しい衝撃がディアボロスに襲い掛かる。
ディアボロスはそのまま柱を数本砕き、最後には壁へと打ち付けられる。

「く、どうなっているんだ!?」

「ふふ、白き月は良い子ね。
しっかり代行者も守ってくれるのだから。」

「あなた、なにを言っているの?」

「あなた達には関係ないことよ。
だってあなた達は、ココで死ぬのだから。」

「これって結構な確率でマジヤバってこと?」




一方キュウィーとリティは…

「おい一体どこまで降りるんだよ。リティ。」
「あともう少しです。」

リフトが止まり扉が開く。

「ここは一体…」

見たことも無い、奇怪な装置が周囲に浮かび上がる空間。

「白き月の禁断区域です。」

「なんでそんなことを知っているんだよお前!?さっきと言い、どうなっているんだ?」
「分かりません。でも知っているんです。この場所を。」

(このことB.K.なら、何か知っているかも知れないな。)

リティが機械に触れると、周囲に浮かんでいた機械が道を作り出した。

「全くなにがなんだかわからねえ。」

次から次へと変化していく状況に、全くついて行けないキュウィーであった。

「行きましょう。キュウィー様。」
「ああ、それしかなさそうだな。」

二人が奥まで行くと、そこには巨大な円形の水槽が立っていた。

「おい。リティ、これが何か分かるのか?」
「はい。恐らくこれは、白き月の中枢機関の一つだと思います。」
「つまりコレで白き月が操作できるのか?」
「やってみないとわかりませんけど。たぶん出来ます。」
「それなら、ここは頼む。今、あいつらを追い払うには白き月が起動しないと、まず無理だ。」
「はい。分かりました。」

リティは水槽の近くにある操作盤に触る。
すると操作盤は光を放ち動き始める。
空中に巨大な文字が赤く表示される。

「どうだ?」
「これは…」
「?リティ?」
「これH.A.L.O.と同じ原理です。これならいけます。」
「そうか!よしさっさとやっちまえ。」
「はい。」

リティは操作盤に手を当てる。

「我、『干渉者』により命ずる。

人の意思により生まれし双子の白。

今『管理者』に代わり『干渉者』にその権限を与え給え。

我が名はフリティ・ラリア・アルストロメリア。

魔より生まれ、闇の力を執るものである。」


周囲が閃光に包まれる。



そしてどこからか声が聞こえる。


『貴女は一体なにものですか?
今、この白き月の『管理者』はシャトヤーンただ一人。
それ以外の命令は『代行者』でない限りその権限は与えられない。』

「あなたが白き月ですね。
私はお父様いえ、B.K.により生み出された者です。」

『B.K.懐かしい名だな。』

「そして私は『干渉者』としてここにいます。」

『干渉者!?
なるほど、どうりで眠りについていた私を起こすことが出来た訳か…』

「はい、お父様達に作られたあなたならご存知でしょう。
『干渉者』の意味が。』

『一時的ではあるが、全ての者より優先され、全ての権限に介入することが出来る唯一の存在。』

「はい。」

『いいでしょう。あなたにわずかの時間ですが、全ての権限を与えましょう。』


閃光が止む。

リティが気が付くとキュウィーの腕の中にいた。

「おい、リティ大丈夫か?」
「あっ、はい。」
「いきなり光ってから、お前がぶっ倒れるから、ビックリしたぞ。」
「ごめんなさい。」

リティは身を起こし再び操作盤に触れる。

「大丈夫か?」
「はい。問題ありません。」

再び巨大な文字が表示される。

「今度は青で表示されているぞ。なんでだ?」
「全ての項目が使用可能になっている。」

正直リティも自分自身がこれだけの事が出来たことに驚いていた。

「干渉者の名にて命じる、白き欠片に光の力を…」


その言葉に合わせ、再び光が放たれる。




白き月外部では…

「あれは!?」
「白き月が光ってる。」

白き月から光が放たれる。
その光はシーラたちの紋章機へと向かっていった。

「きゃあ!一体なんなの?」

そして光は3人の紋章機を包み込む。

「こ、これは!!」

レモネスは自分の紋章機のステータスパラメータを見て思わず息を飲んだ。

「この出力!?さっきまでの2倍以上じゃない!!」
「それにこれって…」

そう、3人の紋章機の背中には、白き光の翼が現れていたのだった。

「これが噂の紋章機の光の翼…凄い。」
「なんだかよく分からないけど、やってやろうじゃないか!!」
「そうだね〜こんなビックチャンスないもんね!!」


光の翼の紋章機の前に、もはや無人艦では相手にはならなかった。
3機の紋章機は次々と敵艦を撃墜していく。



謁見の間

「そんなバカな!?白き月の管理者不在の今、ここの機能を動かせる者なんていないはずだ!!」

「今がチャンスだ!!リディア!」
「はい!!」

ディアボロスが再び攻撃を仕掛ける。
そしてリディアは銃にて援護射撃をする。

「くっ、制圧は無理か…なら!!」

サティは閃光弾を放つ。

「しまった!」

光が止んだときにはサティの姿はどこにもいなかった。

「ちっ!逃げたか…」

「何か落ちてるよ?」

リディアは床に落ちている装置を拾い上げた。

「こいつは!!」
「ディアボロスさんは何か分かりますか?」
「CHAOSの連中が使っている遠隔操作用のスイッチだ。」

「占拠が無理なら、破壊するってわけね。」
「そういうことだろうな。」

ディアボロスはクロノクリスタルで外で戦っている3人に通信を繋げた。

「ディアボロスだ。お前ら聞こえるか?」
『どうしたんだよ〜急に?』
「敵の旗艦を今すぐ落とせ!このままだと白き月が破壊されるぞ!!」
『え!?どういうことだい?』
「今は事情を説明している暇は無い。急いでくれ!!」
『よくわからないけど了解!』

3人はサティの旗艦へと向かった。




サティの旗艦へと急ぐ3人だったが、相手も黙ってはいなかった。
搭載されていた艦載機を全て放ち、紋章機の迎撃に向かわせる。

「邪魔するなよ〜!!」
「なんて数なんだ!」

驚く3人の通信に、一人の男からの通信が入る。
『俺が突破口を開く。お嬢さん達は後ろについて来な。』

「あなたはさっきの傭兵さん。」
「でも大丈夫?あんなに敵がいるのに。」

『ふっ、俺も修羅場を潜ってきているものでな。』

「わかった。あんたに付いていくよ!」

『それならついてきな!敵の旗艦まで案内してやる。
全機最大出力だ!取り残されるなよ!』

そして彼、カルトンは敵の軍勢へと突き進む。

「いくよ!シナモ。シーラ!」

レモネスの号令に合わせてカルトンの背後に付く。

『押して通る!!』

カルトンの乗るシルエットファルコンから放たれる高軌道ミサイルは、
前方の敵機を破壊し、敵の艦載機網に穴を開ける。
そしてそこから一気にサティの旗艦を目指す。
カルトンは最大速度を出しつつ、敵の攻撃を回避し、的確なルートで突き走る。

「凄い動体視力…」
「修羅場潜っるって本当みたいだね。」



4機がサティの旗艦に来たときにはすでに充電が完了していた。

「まずいぞ!アレを白き月に撃つつもりだ!お嬢さん達、いくぞ!」

カルトンの合図で一斉に攻撃を開始する。

「間に合え!!」
「くらえ!!」
「おちろよ〜!!」

3人の攻撃によりわずかに軌道を外し、主砲が発射される。
そしてその砲撃は白き月の上方の一部分を削り取って行った。

「なんて破壊力なの…」
「もしアレが直撃していたら。」




「くっ、破壊し損ねたか…
だが、しばらくは白き月も動くことは出来ないだろう。
戦力の無力化という意味では成功だな。撤退するぞ。」

サティは一斉に艦隊を退却させた。


「ディアボロス司令、追いますか?」
「やめておけ。こっちの方がダメージが大きい。」
「了解しました。」





次回予告
シナモだよ〜
なんとかかんとかで白き月の防衛に成功してよかった〜
ん?あ〜!!ディアボロスさんが軍法会議で大変なことに!!
黒き翼も一時解散!?
どうなるんだよ〜
え、新しい司令官さん?今度はどんな人なのかな??。
次回 太陽と月光 第六話 新造『艦』フォルティオール
またまた大波乱の予感。

続く
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