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第一章 翼を手に入れた少女



 皇国暦411年――


青い髪の少女が一人、ポカンと穴のあいた天井を見上げため息を付いた。
「私って本当にドジよね…」
先ほどまでいた場所にはもう戻れず、途方にくれている。
肩よりも少し伸ばした髪。ぱっと見、整った顔立ちをしているが、
大きな瞳が彼女を形容する言葉を「かわいい」か「美人」なのか微妙なところにする。
見た目では、「美しい」部類されるかもしれないが、彼女を知るものは「かわいい」部類にいれるだろう。
そういう、そそっかしい、悪く言えばドジな人間だった。
少女の名は名雪しぐれといった。
彼女はLT(ロストテクノロジー)学科に在学していた。
課外授業でロストテクノロジーを探索することになり、とある遺跡の中にはいったのだが、いつものドジっぷりと発揮し、
地盤のもろいところで転んでしまい、見事に未探索のエリアに落ちてしまったのだ。
幸いなことに、怪我などは一切なかった。こういうときの悪運だけは強いのである。
一緒にいた生徒は引率の教師に知らせるためにいなくなった。まわりには落ちたときの瓦礫だけ。
辺りは暗くまだ生きている電源の光がぼうっと見える。
「とりあえず、動かないほうがいいのかしら…」
そう思ったとき、遠くで一瞬、白い光が輝いた。
「……やっぱり調査ってものは行動力が大事よね、うん」
そうして自分を言い聞かせる。何か意図的なものを感じた気がしたが、自分の好奇心には勝てず、
すっと立ち上がると白い光が輝いた方向へと向かった。


「ふぅ…やはり、この激甘アミノ酸ドリンクは美味しいですわね…」
探索隊の船の一室。ミント・ブラマンシュが間食をとっていた。
彼女はこの探索隊の護衛を任されている。普段は隊全員で行くのだが、フォルテは別任務中、
ヴァニラは操縦訓練、結果、一人で行くことになったのである。
エンジェル隊が結成されて一ヶ月弱。ミントとヴァニラが来るまでは、フォルテが別の隊で働いていたのだが、
紋章機のありあまる性能のため、通常の戦闘機ではついていけず、配置に困っていた。
そこへ丁度よく紋章機の適正のあるミントとヴァニラが現れた。それを期に前々から考案されていた白き月の警護を主任務とする、
紋章機を運用する部隊、ムーン・エンジェル隊を結成したのだ。
紋章機は古くからあるが、それを扱える者はごくわずかである。そのため現存する5機が全て機動することは無いに等しい。
だから、エンジェル隊のような存在は古くからあるものの、人数不足で結成されることはほとんど無かったのであった。
(…誰か、来ますわね…)
ミントはピクンと白い耳を立てた。彼女の白い耳はテレパス能力をもたらすもので、彼女は人の心が読める。
部屋に近づいてくる誰かの思念を感じ取ることも簡単なことだ。ミントを呼びに来るということは、何か起きたのだろう。
そして思ったとおりにインターフォンの電子音が鳴り、女性の声が響いてくる。
「ミント・ブラマンシュ少尉、いますでしょうか?至急、ブリッジまで来て頂きたいのですが」
「了解しましたわ。すぐに参ります」
ミントはおやつを片付けて、ブリッジに向うことにした。

「来たかね、少尉」
「何かあったのですか?」
ミントはブリッジにつくと初老の船長に尋ねた。
「うむ。まずはこれを見てくれ」
船長はオペレーターに指示を出し、メインスクリーンに映像を出した。
スクリーンに映ったのは一隻の戦艦である。が、ただの戦艦ではなかった。
「これは、また…なんと趣味的と言いますか…」
ミントはスクリーンを見て詰まった。
その戦艦の外見は、まるで水上船、それも海賊船そのものだった。マストや、人魚を象ったオブジェのような物もある。
「見て分かるとおり、これは海賊船だ。それも、ロストテクノロジーを強奪する、ブルーコスモスだ。君も聞いたことはあるだろう?」
「ええ…蒼き宇宙海賊、ですわね…」
ブルーコスモスは、最近名を挙げている宇宙海賊である。白き月に移送される前の
ロストテクノロジーを主なターゲットとしている。しかもそれだけではなく、自らもロストテクノロジーの探索・研究もしているらしい。
「この船は足は速いが、生徒達や月の巫女達を収容するのには時間がかかる。それに、できればここで落として欲しい」
紋章機の性能を知っているから言えることだ。通常の戦闘機ならまず勝てない。だが紋章機なら、あるいは。
「……分かりましたわ。やってみましょう」
そう言ってミントは微笑んだ。
「後で駄菓子とお茶をたくさんおごっていただきますわ」
「う…、覚えておこう」


そのころ、しぐれは光が発した場所についていた。そしてそこには――
「これって、戦闘…機…?」
そこに待っていたのは銀色の装甲、鳥の頭のような先端、そして、
「この紋章…」
天使を模した金色に輝く紋章。これが光の原因である。
そして、しぐれはある言葉が頭に浮かんだ。
(天使の紋章…紋章機…?)
銀河最強とも言われる戦闘兵器。多数のロストテクノロジーを搭載した大型戦闘機。
しぐれが呆然と見ていると、突然、コクピットが開いた。
「ふぇ!?…乗れって、こと……?」
しぐれの問いに答えるものはいない。しかし、呼ばれている気がした。
「乗らなくちゃ…!」
導かれるままにコクピットへと向かった。


暗い宇宙にミサイルやレーザー光が飛び交う。1機の戦闘機と海賊達が戦っていた。ミントの駆るトリックマスターである。
戦況は芳しくなかった。実戦経験の少なさと敵の数に押されていたのである。
敵の戦闘機のパイロットの腕もよく、紋章機の性能で何とか勝っているというところだ。
いくら1機で何機もの敵と渡り合えるといっても、その力を発揮できるだけの技量を持っていないと意味が無い。
今のミントには紋章機の性能をフルに引き出せるだけの技量は無かった。
「このままではいけませんわね…」
一度に多数の敵を全方位で攻撃できるトリックマスターだから防衛できるものの、このままではいずれ突破されてしまう。
(しかたありませんわね…ここは、前から考えていたアレを使いましょう…)
アレ=必殺技である。ミントはラベルの貼ってあるボタンをポチっと押した。
すると、トリックマスターに収納されていた残りのフライヤーが次々に飛び出た。
「いきますわよ。”フライヤーダンス”!」
掛け声とともにフライヤーは超高速で宇宙空間を駆け回り、次々と敵の戦闘機に致命傷を与えていった。
被弾した戦闘機は母艦”スター・オーシャン”へ戻っていく。
(そう…そうやって戻れば…)
ミントはスター・オーシャンを射程内に補足すると、対空迎撃を振り切りながら、
防御フィールドを展開する暇も与えず、格納された戦闘機のハッチを次々に壊していった。
これでしばらくは発進できない。袋のねずみだ。
スター・オーシャンとすれ違い、船の後ろにまわった。
今度は母艦の武装を破壊しなければ…
そう思ったときだった。
レーダーに1機、戦闘機と思われる反応が近づいてくるのが見えた。どうやら先ほどとは違うタイプのようだ。
出撃前にもらったデータには無く、Unkown‐識別不明‐と表示されている。
「新型ですの…?ですが、たった一機でくるなんて、無謀ですわね…」
ミントはトリックマスターのスラスターをテンポよく使用し、くるりと旋回した。遠くから戦闘機が近づいてきてるのが分かる。
戦闘機のデータをとるために別ウィンドウを開き、拡大した。
そこには先ほどの戦闘機の形状に似た、赤い大型戦闘機が凄まじい勢いで接近していた。
見た目こそ派手だが、その分火力は高そうに見える。特に両側に装備された二門のリボルバーキャノンがそれを強調させていた。
しかし、ミントは何か違和感を感じていた。まるで違う気体のはずなのに、なぜか「紋章機」に似ているような気がした。

それはほんの数分前の事。
「艦長?艦長!もうっ、蒼奈姉、聞いてる!?」
一人の少女がモニター越しに叫んでいる。
赤毛の髪と真紅の瞳。腰まで伸びる長い髪。
整った顔立ちで、キリッとした姿から気が強よそうなことが感じられる。
服装はケープを羽織い、裾が短めのフリルのついたワンピースのような服を着ている。
性格と服のセンスは異なるものの、決して似合っていないわけではない。
ここは海賊船スター・オーシャンの格納庫だ。外ではトリックマスターが飛び回っている。
「叫ばなくても聞こえています。何事ですか?」
艦長と呼ばれた女性は澄ました声で答えた。
別に少女を無視していたわけではなく、戦艦の迎撃、回避などの命令を下していたのである。
「早く発進許可を出してよ。部下に示しがつかないじゃない!」
少女はぷうっと頬をふくらます。
「いけません。あなたはまだその機体に慣れてないでしょう?」
「実戦経験なら、他の奴らに負けないわよ」
「ですが…!…はぁ…わかりました。好きになさい……」
女性はため息を付いて許可を出した。
「ありがと、蒼奈姉!」
「外には3番機がいます。できれば持ち帰ってください。パイロットもです。」
「了〜解、了〜解!パイレーツコメット、発進!」
スター・オーシャン艦長、星海蒼奈は掛け声と共に発進していく機体を見送ると、すぐ後ろにいる女性に気づいた。
「あの子、行かせてよかったの?私としては、もっと機体をいたわってほしいんだけど」
後ろにいた女性――リディア・デリカテッセンは蒼奈に声をかけた。
「データ収集も兼ねてます。それに、3番機の性能も気になりますし」
「ま、あたしはどっちの味方でもないからいいんだけど。私の邪魔さえしなければ、ね」
「あなたは意外と容赦がないですからね。邪魔になれば私のことも消すのでしょう?」
蒼奈は微笑んでいるが真剣な空気を発している。
「邪魔になればの話よ。今はデータ収集として利用させてもらうわ。だからそっちも私をたっぷりと利用していいから」
そう言ってリディアは外の様子を見た。丁度、トリックマスターとパイレーツコメットが対面しているところだった。


「この戦闘機は…?」
その真紅の機体からは他の機体とはまるで違う印象を受けた。紋章機に似ているということが頭から離れない。
トリックマスターは感応能力に優れてる分、強くそう感じた。
「え〜っと、GA-003のパイロット、聞こえる?返事しなさーい」
敵の機体から通信が入ってくる。
(!…なぜ、こちらの通信に割り込めるんですの?)
紋章機の専用通信回線につながると言うことは、こちらのデータも持っているようだ。
ウィンドウが開いて、赤い髪の少女の映像が現れる。
「…あなたは一体、何者なんですの?」
「私はプリュレ。プリュレ・トリスティア。海賊よ」
赤い髪の少女は自信たっぷりに言った。
「私はミント・ブラマンシュですわ…」
「単刀直入に言うわ。あなたとその機体をこっちに渡しなさい。そうすればあの船には手を出さないわ」
「要求をのまない場合は…?」
そんなものは決まっている。しかし、ミントは一応尋ねた。
「決まってるでしょ?力ずくでいくし、あの船も痛い目にあってもらうわ」
ミントは回答に困った。敵の能力は未知数だ。フライヤーダンスが使えれば何とかなるかもしれないが、
今それを使ったら、敵を倒す前に自分が倒れてしまう。ここは時間を稼いで船を脱出させることを優先しよう。
そう思ったが――
「時間を稼ごうなんて思わないことね。あと10秒以内に答えなさい。でないと攻撃を開始するわ」
どうやら手の内は読まれているようだ。こちらに選択肢は無い。
「仕方ありませんわね……要求をのみましょう」
敵はロストテクノロジーの調査をしている。ならばそれを扱える自分をそう簡単には殺したりはしないだろう。
「賢明な判断ね。武装を解除してこっちに来なさい。変なことしたら、わかってるわね?」
ミントはそれに応じて武装を解除しようとした。
しかし、紋章機の警報アラームがコクピット内に響いた。
「なんですの!?」
またも、一機の戦闘機がこちらに近づいてくるではないか。
しかもそれは、自分や仲間が乗る戦闘機、紋章機にそっくりだった。


しぐれはコクピットへとたどりついていた。しぐれが乗るといきなり動力がオンになり、勝手にコンピュータが動き出す。
「ふぇぇぇ!?どどど、どうしたの〜?」
目の前に幾つものウィンドウが表示される。
――Main system set up. H.A.L.O. standby.――
そう表示されると、全周囲モニターが起動し、機体が透明になったように周りが見えた。
「システムの立ち上げがすごく早い…モニターも高性能だわ……これ、全部ロストテクノロジーなの…?」
興奮気味につぶやく。ロストテクノロジーを研究する者として、これだけの装置は非常に興味深い。
「なんでだろう…戦闘機なんてはじめて乗るのに…なんだかわかる…」
動かせる。
しぐれは一人乗りの宇宙船くらいしか動かしたことが無い。しかも機械オンチだからまともに動かせたものじゃないのに。
そのときだった。しぐれの通信機のアラームが鳴り響いた。
「しぐれちゃん!?今どこにいるの!?大変なの、すぐ戻ってきて!」
その声はしぐれと一緒にいた友達のものだ。
「どうしたの?いったい…」
「近くに海賊が来てるんだって!ここを狙ってるらしいの。遺跡があるからそう簡単には手を出さないけど、危険だって!!」
「海…賊…?」
「そうなの。早く戻ってきて!」
(海賊って事は…悪い人たちよね……ここを狙ってるってことは、この戦闘機が持っていかれちゃう!?)
「しぐれちゃん…?」
「ごめんなさい…ちょっとすぐには戻れないかも…」
「え!?しぐれちゃん!?しぐ―――」
言い終える前に通信機をオフにした。
辺りを見るといつのまにか発進用のカタパルトへと到着している。
「なんだか、都合のいいことになってるわね…」
やはり、”発進しろ”ということなのだろう。
(ロストテクノロジーは皆のためにあるもの。海賊なんかに渡させないから!)
その瞬間、H.A.L.O.が――――天使の輪が輝きを増し、
停止していたはずのエンジンが、勢いよく起動した。
――Chrno black hole engine, ignition.――
メインノズルから眩い光を放ち、しぐれの乗る戦闘機は発進した。


「ふぇぇぇぇぇ〜!!!!?」
情けない声が通信から聞こえる。こちらは専用回線ではなく全周波数に飛ばしている。大音量で走り回る車状態だ。
(一体なんなんですの!?海賊にしても、あの機体にしても!?)
とりあえず、ミントは通信を入れることにした。
「もしもし、聞こえますか?そちらの所属と名前を教えていただきたいのですが?」
ウィンドウが開き、少女の顔が映る。
「ふぇぇっ!つ、通信回線開かれてる!!」
少女はえらく驚いている。ミントも戸惑った。
「あ、あの…お名前を…?」
「あ、えっと…な、名雪しぐれでっ、〜〜〜〜〜……」
「?」
しぐれと名乗った少女は急に口を押さえた。
「ど、どうしたんですの…?」
ミントが不審そうに尋ねる。
すると涙目で、
「舌噛んじゃったわ〜……」
と答えた。
ミントはひどく頭痛をおぼえた。
「あ〜〜〜もうっ!なんなのよ!?あんた!」
しぐれとミントのやり取りを見ていたプリュレは我慢できず叫んだ。
「〜〜…私は、名雪しぐれ。ロステク科の3‐Cで出席番号は37番・・・」
「あの学校の生徒!?ということは、あの遺跡からその機体を発見したんですの!?」
「ふぅん…遺跡から……悪いけど、その機体こっちによこしなさい!」
プリュレが言う。しかし、しぐれは即答した。
「嫌!ロストテクノロジーをあなた達みたいな海賊に渡さないわ!」
そうは言っても、しぐれの乗る戦闘機に武器は無かった。
機体は骨組み――メインフレームに最低限の装甲が装着されているだけで、
攻撃を受ければすぐにも沈みそうだった。
唯一の装備といえば、機体の両脇についた、円状の盾のような物だけだ。
それを見てプリュレは、しぐれが大した戦力でないことを予測した。
仮に武器が装備されていたも、素人では彼女に太刀打ちできないだろうが。
「そう…じゃあ、人質をとらせてもらおうかしら!」
ミントとしぐれを振り切って脱出しようとしている船に近づく。
「やられましたわ…!!」
ミントは急いでプリュレの後を追う。しぐれもそれになんとか続く。
フライヤーのプラズマレーザーでプリュレを狙うが、一向に当たらない。敵の機動力はあなどれない。
そして、とうとう船を射程内に捕捉されてしまった。
「もらったわ!」
プリュレは船を捕捉するとわざと外して弾幕を張った。
「うわぁぁぁぁぁぁっ!!!」
船の周りにミサイルが飛び交う。船体は大きく揺れた。
プリュレは船を横切ると旋回し、今度は航行不能になるだけのミサイルを当たるように発射した。
「だめですわ!このままでは…!!」
トリックマスターのスピードでは追いつけない。この位置ではミサイルを撃ち落とすことも無理だ。
(そんなこと…させないっ!!)
しぐれの機体の出力が一気に上がり、ミサイルの軌道へと突き進む。
「無茶ですわ!ミサイルを防いでも、あなたが捕まってしまいます!」
ミントが叫ぶがしぐれは聞かない。
ミサイルが船のすぐ手前まで来ていた。
「だめぇぇぇぇぇ!!!」
その瞬間――
しぐれの機体の紋章が輝きを増し、機体後部から純白の翼が二枚、現れた。
「なによ…これ…」
「雪…?」
プリュレ、ミントは目を見張った。
その翼はミサイルの群を払いのけるようにはばたき、エネルギーフィールドが広がっていく。そして、羽ばたいた後には羽と雪が舞い散るのだった。
全てのミサイルを防いだときには2機の戦闘機は完全に沈黙し、翼も、そして紋章も消えていた――


「……プリュレ機を回収。完了次第この宙域から撤退します」
命令を下して、蒼奈は腰をおろした。
「いいの?あっちのも捕まえられそうだけど」
「3番機はまだ動けます。プリュレを急いで回収し、増援を呼ばれないうちに撤退しなければなりません」
もっとも、しぐれの戦闘機が動けず、船のこともあるため、攻撃はしてこないだろう。
「リディアさん、あの機体に何がおこったんでしょうか?」
「分からない。あの機体の機能かもしれないね……あ、あとさ…」
「なんですか…?」
「今の映像の記録、すぐ見たんだけど、初めから最後まで、翼も紋章も映ってなかったんだよね」
蒼奈は驚いた顔をした。
「パイレーツコメットと一緒ということですか…」
リディアは頷く。
「私はこれから白き月に行くよ。あの機体のことが気になるし。もしかすれば5機も見れるかもしれないしね。
データ、よろしくお願いね」
「わかりました…」
プリュレのパイレーツコメットを回収すると、海賊は蒼い銀河に消えていった…


「助かった、の…?」
エネルギーが切れ、暗くなったコクピットで呆然としているしぐれがつぶやいた。
「大丈夫ですか?」
しぐれの通信機から声が聞こえる。
「私はミント・ブラマンシュと申します。あなたは…しぐれさんでしたね?」
ミントはしぐれに自分のことを紹介した。
「はい、そうです…」
「本来なら、未調査のロストテクノロジーの無断使用で捕まえなければいけないのですが、とりあえずあなたは学校に戻ってください」
「あの…わたし、死刑とかになっちゃうんですか?」
「大丈夫ですわ。ただ…」
「ただ…?」
「天使になってもらうかもしれませんね…」
「ふぇ…?」
「それでは、縁があったらまたお会いしましょう♪」
しぐれにはその言葉の意味が分からなかった。
(天使になるって死ぬってことじゃ…)
そんなことを考えながら、しぐれは回収されいていった――



続く