戻る

第0章
Stage2:天が定めし道を行かんとす




無鉄砲男が宇宙をあても無く泳いでいた頃・・・




トランスバール帝国。

かつて、動乱のたびに無敵の天使達が活躍していた。





最近5年間、平穏を保っていたと思われていた。


しかし、新たなる敵が現れる。
その名は「リボルドイビル」。
「復讐鬼」の意である。



リボルドイビルはひたすらに「破壊」と「殺戮」を行っている。
まるで機械の如く。
革命が目的でもない。
独立が目的でもない。
何も欲さず、ただ「破壊」と「殺戮」を行う様はまさに「異様」であった。










そんな際に再び、かの「天使達」が結成された。








ワイバーンエンジェル隊。








新型紋章機を駆り、大宇宙を駆け巡る姿はかの「最強の天使達」に匹敵すると言われてい る。


・・・が、かつて「最強の天使達」が一癖も二癖もある面子であったように、新たなる天 使達も問題児が勢ぞろいだったのは皮肉だろうか。










「みなさん、どこか食べに行きません?私、おいしい牛丼屋をみつけたんですよ!」

ヘンテコな髪型の少女、パヴィヨンルージュ・ボルカンが切り出す。

「牛丼なら・・・。」

ひときわ背の高い黒髪、カズミ・御坊・アンティーヴが返す。

「パピーのオゴリならいいけど。」

めがねをかけた和風少女、伊達朱磨莉が言う。

「ええー!?昨日も私だったじゃないですか!」
「そーだった?」
「そーですよ!ねー、カズミさん。」
「うむ。そもそも貴様はそういっていつも他人に任せようとする。そういう根性が気に喰 わん。」
「なにを!?あんただってハンバーグすら食べられないくせによく言うわよ!」
「今は関係無いだろう。」
「あーもー!こーなったら勝負よ!勝負!」
「よし・・・今日こそこの刀のサビにしたるわ。」
「あたしの符術は無敵よ!」
「また勝負ですか?これで何回目ですか?」
「276回目!しかも全部引き分け!」
「よく憶えてますね。」

しょうもない理由で黒髪とめがねが争いはじめる。
相も変わらず、これが新たなる天使達の日常である。

「一刀両断にするぞ・・・。」

カズミは、傍らに置いていた日本刀を抜く。

「今日は勝つわよ・・・。」

符を構える朱磨莉。



緊張が辺りを覆う。


くだらない理由かもしれない。
しかし、彼女達にとってはまじめな問題だ。

自分の名誉を守るための闘いである。





お互いにじり寄る。
互いの「空間」へ切り込む機会をうかがっているのだ。


人は自分自身の「空間」を持っている。
自分自身が最も安らげる、そして最も有利に動ける「空間」。



「空間」に不用意に入ることは無謀である。





二人の空間が重なった瞬間、踏み込む。



そして、お互いの「空間」が触れ合った・・・その時。





「おらー!くだらない戦いはやめーーー!!」

緊張をぶち壊す能天気な声が響く。
開いた扉の向うに二人の人影。

【ミュートラルが現れました。今から退治に向かいます。】

そう書かれたスケッチブックを掲げた少女、セアラ・カリュアド・ラフィット。

「仕事だからー早く行かないと上官にクソ叱られるよー!」

能天気な声の持ち主、エリアーデ・シュールストロムが無駄に大きな声で叫ぶ。

「えええええ!?今この凶剣士をぶっ倒すところだったのにー。」
【給料下がりますよ?】
「仕方ない、この勝負はおあずけね。」
「そうじゃな・・・しかし、次は容赦せぬぞ。」

朱磨莉の扱い方は簡単。
金に絡む話を出せばいい。

「で、今回はどれくらい湧いてきたの?」
「30体だそーですよ!」
「30体・・・余裕だな。」
「じゃあ、さっさとミュートラル片付けて牛丼屋に行きましょう!」
「もちろんパピーのオゴリでね☆」
「ええー!?」
「冗談冗談☆」


今日もワイバーンエンジェル隊は宇宙へと駆けていく。








そして、天が定めた出会いがもうすぐ・・・。






「うはーっ!腹へったー!!」



続く
戻る