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第1章
Introduction:アムシャ・スプンタ【不滅の聖性たる利益者達】



宇宙は広い。



終わりの無い、ただ黒い空間。



宇宙にはフロンティアがまだたくさんあるようだ。














とある場所のとある秘密の要塞。



そこに奴らはいる。









「・・・さて、みんな揃ったか?」
「いえ、現在スプンタ・アールマティが席をはずしています。」
「そうか・・・しかし構わん。」


会議室とおぼしき場所には6人の仮面をつけた者どもがいる。





「ところで・・・T-1が動き出したのは皆知っているな。」

最初に口火を切ったのは『スプンタ・マンユ』。おそらくこの集団のリーダーであろう。
「はい。」
「存じております。」

それにうなずくのは『ハルワタート』と『アムルタート』。仮面をつけていてよく分からないが声と体付きからして二人とも女性であろう。

マンユ「このT-1が先ほどトランスバール軍の遊撃隊に回収された。」

神妙な面持ちであることが仮面の下からでもわかるスプンタ・マンユ。

「でも、まだT-1は『覚醒』してないっしょ?だから焦って今すぐ対策を取らなくても・・・。」

意見するは『ウォフ・マナフ』。他の皆に比べて群を抜いて背が低い。

マンユ「案ずるなウォフ・マナフ・・・、それは私かて承知の上だ。」
「いや、新芽は新芽のうちに摘み取るべきだろう!今すぐにT-1を抹殺せねば!」

力強く言うのは『フシャスラ・ワルヤ』。非常に体つきのよい野郎である。

マンユ「フシャスラ・ワルヤ、だが今は様子を伺ってもいいだろう。」
フシャ「だがしかし・・・!」
アムル「あなたはそうやっていつも猪のように突き進んで、最後にはしっぺ返しを喰らうタイプでしょ?」
ハルワ「そうよ。あなたは力があるのは分かるけど、何の作戦もなしに突っ込んでいくのは頭が悪いやつだけよ。」
フシャ「く・・・っ。」
ウォフ「(だっせー・・・。)くすくす・・・。」
フシャ「笑うな!貴様!!」
マンユ「悪ふざけもここまでにしてもらおうか。」





一気にその場が静まる。






そして今まで唯一沈黙を保っていたやつが口をあける。




「じゃあ、フシャスラにT-1の監視役をやらせればいいんじゃないですか?」




奴の名は『アシャ・ワヒシュタ』。ほっそりとした体に似合わない長刀を腰にぶら下げている。

マンユ「・・・確かに、フシャスラ・ワルヤの言い分も正しい。T-1がいつ『覚醒』するか分からんからな。」
フシャ「では・・・!」
マンユ「ああ・・・フシャスラ・ワルヤよ、お前にT-1の監視役を任せる。少しでも『覚醒』の兆候があればすぐにやつを殺せ。」
フシャ「ははっ!」
アシャ「よかったね、フシャ。」
ウォフ「ところで、アールマティはまだ帰ってこないのかぁ!?」
ハルワ「アイツ、ホントにのろまなんだから・・・!」







「すっ、すいませ〜ん!!!」







アイドルのような能天気な声とともに最後の1人、『スプンタ・アールマティ』が部屋に飛びこんできた。







ハルワ「もう!食料の買出しに一体どれだけ時間かけてるのよ!」
アール「すいません、ちょうどタイムサービスの時間だったもので・・・ついつい買い込んじゃって・・・。」
ハルワ「こっちは腹すかしていくら待ったと思ってるのよ!」
アール「ふぇ〜ん、すいませ〜ん・・・。」
アムル「まぁまぁ、落ち着いてハルワタート。」
ウォフ「とにかく、早く飯作ってくれ!」
アール「は、はい!今作ります!」



厨房へと駆け足で急ぐアールマティ。



ウォフ「・・・で、さっきの話の続きなんだけど。」
マンユ「どうした。」
ウォフ「フシャスラに監視役やらせるのは別に構わないけど、あいつ直接行動するタイプだから相手に気づかれるんじゃない?」
フシャ「バカヤロー!俺がそんなおろかな男に見えるか!?」
ウィフ「見えるから言ってるんだよ。」
フシャ「何!!?」
マンユ「落ち着けフシャスラ・ワルヤ。お前には特別部隊を授ける。」
フシャ「特別部隊?」


鸚鵡返しに聞き返すフシャスラ。


マンユ「ミュートラルとは格が違う、強力な戦闘用変造人間部隊だ。そやつらを指揮しながら監視をすればいい。」
フシャ「はっ!ありがたき幸せ!」
アシャ「すごいじゃないの、フシャ。」
フシャ「そ・・・そうかな?あははははは!!」
ハルワ「ほんと・・・馬鹿よねぇ・・・。」


馬鹿みたいな高笑いをあげるフシャスラにハルワタートも若干呆れ気味。


そんな折に





アール「みなさ〜ん!御飯の用意ができましたよ〜!!」



食堂から響くアールマティの能天気な声。


ハルワ「やっとできたの!?遅すぎ!」
アムル「まぁいいじゃない。早く行きましょう。」
ウォフ「おっしゃ〜!俺が一番乗りじゃい!」
フシャ「あっこら!待て!!」


4人は食堂へ向かう。

そんな中。


アシャ「・・・・あなたは行かないのですか?」
マンユ「まだそのような気分ではない。」
アシャ「そうですか・・・しっかし、『同胞』をこのまま放っておいて大丈夫ですか?」


スプンタ・マンユは動じない。


アシャ「本当は自分が一番焦りを感じてるのでは?・・・同じ『全能の神』ですからね。」
マンユ「・・・・まぁ、お前の言うとおりだ。私も『奴』はとうに現世からは消滅していたと思っていた。それが、私としたことが大きな勘違いをしていたようだが。」
アシャ「そうですね。『全能の神』すなわち『唯一神』がこの世に『2人』もいたら、それこそ大問題ですからねぇ。しかもそれが裁判で解決するようなことではありませんし。」
マンユ「・・・案ずるなアシャ・ワヒシュタ。なぜ我らがこうして『リボルドイビル』なる小悪党どもの裏方をしているのか・・・知っているであるだろう。」
アシャ「『遺産』が欲しいんでしょう?」
マンユ「そう・・・我らの目的・・・超科学文明ガロメアの『遺産』・・・。」
アシャ「なんだっけ・・・確か、ガロメア文明の創始者、アーガス・ティアーム・マジェスタが書き残したという・・・。」




「「アガスティア・レコード」」




アシャ「ふふっ、見事にハモりましたね今。」


アシャはそう言って微笑む。


アシャ「じゃ・・・俺はそろそろ御飯でも食べてきますね。あんまりアールマティちゃんを待たせないほうがいいですよ、あの娘結構怒ると怖いらしいですから。」
マンユ「うむ・・・。」


アシャは足早に部屋を出て行く。
しかしスプンタ・マンユは神妙な面持ちを崩してはいないようだ。


マンユ「・・・もうすぐか・・・・・・。」











その頃


「うぉぉぉぉ!でけぇぇぇぇぇ!!!!」


シュートの目の前には巨大な機械のカタマリが見える。
トランスバール皇国軍軍用超弩級機動空母『ザラスシュトラ』。
その全長はあの巨体がハエに見えるほど。
その中へ天使達は帰還していく。
シュートは、損傷を受けた巨体の修復のために一緒にやってきた。

「うぉぉぉぉ!スッゲぇぇぇぇ!!!!」

内部はとてつもなく広くまるで宇宙に浮く大都市。
このようなものを見せられて興奮しないほうがおかしい。

シュート「スッゲ!もうほんとスッゲ!!」
朱磨莉「当たり前でしょう。帝国が最先端技術をフルに活用した最新型の空母なんだから。」
シュート「そうなのか!・・・えっと・・・誰だっけ?」
エリアーデ「そういえばまだ自己紹介してなかったっけ。」

なんとも基本的なことに今更気づいた天使達。

エリアーデ「あたし、エリアーデ・シュールストロム。よろしくっ!」
朱磨莉「伊達朱磨莉よ。」
パピー「パヴィヨンルージュ・ボルカンです!パピーって呼んでくださいね。」
セアラ【セアラ・カリュアド・ラフィットといいます。】
カズミ「・・・カズミ・御坊・アンティーヴと申す。」
シュート「俺はシュート。シュート・D・ルヒーラーってんだ。」
朱磨莉「そういえば、あんたが載ってた機体、なんて名前なの?」
シュート「えーと・・・そういえば遺跡から持ち出したってきりだから名前付ける余裕なんてねーかったすわな。」
パピー「じゃあこの場でつけちゃったらどうです?」
シュート「だな。そうすっか。・・・じゃあ・・・えーと・・・うーん・・・。」

長考モードに入ってしまったシュート。
その時、自動扉が開き、中からやたらに小さい人影が現れた。

「みなさんお帰りなさいませ。」
朱磨莉「隊長!」
カズミ「ただいま帰還いたしました次第です。」
シュート「あー!そうだ!こいつの名は」
「あら?そちらの方は?」
シュート「んぁ?」

シュートが振り向いた先には小柄な少女がいた。
青いショートカットの髪、頭から『生えている』耳みたいな物体。

シュート「お前さんどったんよ?迷ったのけ?」
カズミ「こら!シュート!隊長に無礼にも程があるぞ!」
シュート「はぁ?」
「いえいえ、初対面の人には大体そう思われるのでもう慣れっこですわ。」
カズミ「まぁ・・・そうですが・・・。」
シュート「へ?何?隊長?」

シュートは場の事態を完全に飲み込めていないらしい。

「えーと、シュート・D・ルヒーラーさん、でしたっけ。初めまして。私、トランスバール皇帝直属第3遊撃隊『ワイバーンエンジェル隊』部隊長、『ミント・ブラマンシュ』と申します。」
シュート「・・・ちゅーことは、こやつらの上司さんでございますか?」
ミント「ええ。そういうことですわ。」
シュート「・・・ところで、あなた様は年齢はごいくつでごじゃいますかね?」
ミント「初対面の人に聞く質問ではありませんわ。」
エリアーデ「えーと確か、今年で22歳・・・だったよぉな。」
シュート「22歳!?嘘ーん!!」
ミント「本当ですわ。」
シュート「・・・・・・。」


あいた口がふさがらないシュートであった。



続く
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