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〜ギャラクシーガーディアンズ〜




第一章 『出会い』

第三話



ガイルは、内心焦っていた。
ガイルとは、この不良達のボスの名前だ。
ガイル:(くっ!あの女がここまでやるとは、女だと思って甘く見ていたか。)
そう、あの後ようかは、シヴァ皇子に言った宣言どおりに不良たちを、5分で倒したのだ。
が、しかし、ようかに「自分の強さでは敵わない」
と思った者がでてきて、逃げ出す者がいた。
なので結果的には、数人しか倒してはいなかった。
ようか:「さぁ、これで終わり?なら、次はあなたね!」
ようかは、切っ先をガイルに向けながら、
そう一喝した。
ガイル:「くそっ!シュウさえ来ていれば!」
ガイルは思わず声に出していた。
その時である。何か音がした。その音は風を切ったような音だった。
その音は、ようかの頭上へと落ちていった。
その音の正体は、鎖鎌の鉛の部分だった。
ようかは、一瞬の判断で、それを刃で弾いた。
そして、それが投げられたであろう場所を、ようかは見上げた。
この空き地の周りにある廃ビルの屋上を。
そこには、一人の男が立っていた。
???:(ふむ、さすがにこれくらいは、弾けるか。)
???:「ガイル兄。俺を呼んだか?この「鎖鎌のシュウ」を!」
そう言って、屋上から飛び降りる。
シュウと名乗った男。この男は、ガイルの弟であった。
不良達:「おぉー!!シュウさんが来てくれたぞ!!これで、俺たちの勝ちだ!!」
不良達全体の士気が上がった。
どうやら、この男、かなり強いらしい。
ガイル:「おぉ!シュウ。来てくれたのか。だが、どうしてこの場所が?」
シュウ:「ふん。久々に、アジトに戻ってみたら、この計画の事が、会議室のホワイトボードに、書いてあったからな。あと、一応、消しておいたぜ。
それと、扉の鍵を閉めておいた。鍵は、いつもの場所に置いておいたぜ。」
ガイル:「そうか。気が利くな。
で、何をしにきた?
ここに来たのも、偶然だろう?」
シュウ:「あぁ、そうだな。偶然だが…。
悪い予感がしたから、来てみた。
どうやら、その予感は、見事に当たったみたいだがな…。」
死傷している不良達を見渡しながら、シュウは言った。
ガイル:「あの女を、殺してくれるか?」
シュウ:「当然だ。」
と短く答え、ようかの方を向き、言った。
シュウ:「さて、今の攻撃は、俺からの宣戦布告だ!!どう答えるかはお前次第だ。」
それを聞いたようかは、静かに刀を鞘に収めた。
シュウ:「はっはっは。まぁ、いい判断だな。
この『鎖鎌のシュウ』の異名を持つ俺には、勝てないと悟ったか。」
ようか:「いいえ。」
とようか。
シュウ:「何?どういう事だ?」
と眉を動かした。
ようか:「これが、私の戦闘態勢です。」
シュウ:「貴様!ふざけていると、その首が宙を舞うぞ!!」
ようか:「やれるものならやってみなさい?」
ようかは、挑発的に言った。
シュウ:「おのれ!あの世で後悔しても遅いぞ!!」
そう言いながら、常人離れした速さで、ようかに突っ込んできた。
ようか:(速い!だけど、父さんほどじゃないわ。この速さなら、余裕で追いつける。)
ようかは改めて構える。
シュウは、少し疑問に思った。
シュウ:(何故この女は、刀を鞘になおしたのだろうか?
まさか!これは、「抜刀術」なのか?)
そう思い、念のため途中で速度を落とし、後退した。
ようか:「あら?私の首を、宙に舞わせるのではなかったのですか?」
そんな挑発を無視して、ようかに聞いた。
シュウ:「おい!貴様!お前の父親の名前は何だ?」
ようか:「はぁっ?!」
ようかは、驚いた。
まさかそんな質問を、戦闘中に聞かれるとは、思ってもいなかったのである。
シュウ:「おい!何というのだ!」
ようか:「ようま。」
ようかは、短く答えた。
それを聞いていたガイルが言った。
ガイル:「おい!まさか、『ようま』って、あの…
あの『妖刀のようま』なのか!」
ようか:「えぇ、その『ようま』です。」
そう言ったとたん、不良たちにどよめきがおきた。
ようかは、内心驚いていた。
ようか:(こんなに父さんがすごかったなんて…。初めて知ったわ。)
ガイル:「おい、聞いたか?シュウよ。」
シュウ:「あぁ、聞いていたとも。くっくっく、おもしろい。
あの伝説の『妖刀のようま』の娘と戦えるとは。
こんどこそ行くぞ!!ようまの娘よ!!!」
そういって、韋駄天のごとき速さで突進してきた。
どうやら、この速度こそが、彼の本気らしい。
ようか:(なっ!?速さが、増した!?)
が、驚いている暇などなかった。
シュウは、ようかの目と鼻の先くらいの所まで迫っていた。
シュウの鎖鎌での連続攻撃。
ようかは、すかさず、鞘を腰からはずして防御する。
その繰り返しが、数分間続いた。
その2人の攻防を、そっと見ているものがいた。
シヴァ皇子である。
シヴァ:(あの女、何という強さなのだ。できることなら、あの女を…。)
さすがに、連続攻撃を繰り出し続けていたシュウに、疲労の色が見え出した。
足の速さが、韋駄天並みでも所詮、人間なのだ。
一方、ようかは、シュウの単純な連続攻撃を全て見抜いて、防御を固めているだけなので、
まったく疲れの色は見えなかった。
そして、ついに、シュウの連続攻撃のテンポが遅くなった。
ようか:(今だ!)
そう、ようかは、ただ守っているだけではなかったのである。
疲れで、連続攻撃のテンポが遅くなるのを、待っていたのだ。
目にも止まらぬ速さで、刀を鞘から抜き、シュウの体を斬った。
シュウ:「ぐはっぁ!!」
シュウは、避けきれずに斬られ、倒れた。
ようかが、見下ろして言った。
ようか:「さぁ、潔く負けを認めなさい。」
そう言ったのもつかのま、シュウは飛び起き、後ろに下がって、間合いを整えた。
ようか:「そんな!?その傷でそこまで動けるなんて。」
シュウは、血が胸から出るのもかまわずに言った。
シュウ:「はっ、直に食らったが、そう簡単に死ねんのよ。さぁ、鎖鎌の真髄、
思い知るがいい!!」
そう一喝し、鎖がまを頭上で回し始めた。
周りの不良達にも、その風を切る音が聞こえるくらい速く回っていた。
ようかは、疑問を抱いていた。
ようか:(「鎖鎌の真髄」って何の事かしら。)
その時、ふと父が言っていたことを思い出した。

ようま:「おい、ようか。次は、対『鎖鎌』戦について教える。
まぁ、鎖鎌と戦うことは、滅多にないとは思うがな。
万が一という時があるし、よく覚えろよ。
『鎖鎌』という武器は、一見リーチがないように見えるが、
それは、フェイクだ。鎖鎌のリーチは、なんとこの刀を超える。
それは、鎖と遠心力がついた重りの鉛の部分があるおかげだ。
思った以上に、鉛が飛んでくるから気をつけろよ。
そして、戦い方は――――。」

ようか:(父さん。父さんが教えてくれた事、今、役に立ちそうだよ。)
そう心の中で、父に感謝し、防御の体勢をとった。
「鎖鎌の真髄」を、受け止める為に。
その時、鎖がまの回転速度は、ものすごいほどになっていた。
それに葉っぱを投げ込むと、こなごなに粉砕してしまうほどの速さである。
シュウ:「さぁ!あの世で、後悔するんだなぁ!!」
シュウは、その鉛をようかに目掛けて放った。
鉛と刀との間に、甲高い音が響く。
見事にようかは、それを刀で弾いた。
シュウ:「なっ!?ばっ、馬鹿な!このオレの鉛を弾くとは!」
ようか:「さぁ。これで…。終わり、よ!」
ようかは思いっきり刀を振り下ろした。
シュウの体は、首と胴体とで、半分になった。
ようかは、刃についた血を、ティッシュで拭いた。
赤く染まったティッシュを投げ捨てる。
そして、周りの不良を見渡す。
不良達:「あ、あのシュウさんが、こ、殺されるなんて…。」
やはり、動揺は隠せなかった。
シュウが来た時の士気は、当然なくなっていた。
ふと、唸り声が、ようかの耳に入ってきた。
唸り声:「うううぅぅぅぅ―。」
そして。
ガイル:「貴様ぁ!!よくも、弟を、弟を!!ゆ、許さん!!!
おい!!アレを持ってこい!!!!」
ガイルは、近くにいた手下にそう伝えた。
ようか:("アレ"って、何のことだろう?弟が『鎖鎌』。兄は『大斧』って、とこかしら。)
ようかは、予想した。
しかし、次の瞬間。
ようかは、驚きを隠せなかった。
ガイルの後ろから、アレを持った不良が現れた。
ガイルに、アレを差し出す。
ガイル:「よーし!コレで貴様も木端微塵よ!!!
骨の欠片も残さん!!!」
なんと、"アレ"とは、『グレネードランチャー』だった。
ようか:(じゅ、銃!?きついなぁ、対『銃』戦は。でも、『悪』は、倒さなきゃ。)
ようかは、自分に一喝した。
ようかは、刀を鞘に収める。
左手を鞘にあてる。
右手を柄にそえる。
抜刀術の構えをとり、目を閉じて相手の出方を静かに待つ。
ガイルは、自慢の銃に弾丸を詰める。
左手を銃にそえる。
右手の人差し指を引き金に置く。
いつでも撃てる状態をとり、相手に狙いを定める。

なんともいえない空気が、その場に溜まっていた。
遂に、ガイルが引き金を引いた。
と同時に、ようかの目が開いた。


つづく

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