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〜ギャラクシーガーディアンズ〜




第二章 『始まり』

第二話



ドアを開け、ようかは部屋の外に出た。
要:「やっほー。さっ、一緒に行こう。」
部屋の前には、ようかが思ったとおり、要がいた。
ようか:「「一緒に行こう」って、何処へ?」
一応、聞いてみる。
要:「何処って、食堂に決まってるじゃん。ようかも、行こうって思ってたんでしょ?」
ようか:「そうだけど…。よくわかったわね。」
ようかは、素直に驚いた。
要:「まぁ、あたしのお腹が空いてたから、ようかも空いてるかなぁと思って。
それに、他の皆もこの時間帯に、よく行ってるから。」
ようか:「なるほど…。」
要:「じゃっ、行こっか。」
と、ようかの手を引っ張って駆け出す。
ようか:「ちょっ、ちょっと危ないって!ストップ、ストップ!」
要に叫ぶ。
それを聞いた要が止まる。
ようかに振り返り、
要:「何?早く行かないと、アレがなくなっちゃうってば。」
ようか:「そのアレって?」
要:「限定商品で20個しか作らないし、人気だから
すぐ売り切れになっちゃうわけ。OK?」
ようか:「わ、わかったけど…、いくらなんでも、急ぎすぎじゃない?」
要:「このくらい急がなきゃ、間に合わないの。というわけで、走るよー!
今度は自分で走ってね〜。」
と、走り出す。
ようか:「ちょっ、そんなに走ったら、危ないってば。」
と、要に言ったが、既に遅かった。
ようか:「あぁ、行っちゃった…。」
要が行った方を見ながらつぶやく。
ようか:「さて、私も行こう…。あんなに急がななくても…いいよね?」
と、自問自答。
答えは既に、決まっていた。
「ゆっくり行こう」と。

要:「この角を曲がれば、到着―!」
角を曲がった瞬間、要は何かにぶつかった。
要:「キャッ!」
???:「キャッ!」
2人は同時に小さな悲鳴を上げた。
要:「痛たた…。」
と、ぶつかった相手を見た。
要:「ごめん。大丈夫?」
???:「はい、何とか大丈夫ですわ…。」
彼女も要の方を見る。
要:「あっ、ミント〜!」
ミント:「要さん!」
要:「ミントも、アレを狙ってるってわけ?」
ミント:「と言うことは、要さんも?」
要:(ライバルに遭遇〜!こうしちゃいられない!早い者勝ちよ!)
と、食堂の方へ駆け出す。
ミント:「あっ、お待ちくださいな!抜け駆けは禁物ですわ!」
と、要を追いかける。
要:「よし、到着!おばちゃ〜ん、アレ、残ってる?」
と、食堂に着いた要は、早速、食堂のおばちゃんに聞いた。
食堂のおばちゃん:「おや、要ちゃんかい。ギリギリセーフだねぇ。あと、2つだよ。」
と、要にアレを差し出す。
要はそれを受け取り、席をさがすことにした。
一足遅れてミントが食堂に現れた。
食堂のおばちゃん:「ミントちゃんも、これがお目当てかい?」
アレをミントに差し出す。
ミント:「お察しのとおりですわ。」
アレを受け取ったミントは、席を探すことにした。
ちょうど夕食時のせいで、空席が見当たらない。
どうしようかと考えているところ、自分を呼ぶ声が聞こえた。
???:「ミント〜。ここ空いてるから、一緒に食べなーい?」
声が聞こえた方向を見ると、要が大きく手を振っている。
ミントは微笑み、その言葉に甘えることにした。
ミントが要の横の席に座る。
要:「よかったね〜。無事に手に入れることができて。」
ミントに言う。
ミント:「えぇ。本当に。よかったですわ。」
要に返す。
要:「それじゃっ、食べますかっ。」
ミント:「はい、食べましょう。」
要:「いただきまーす!」
と、元気よく。
ミント:「いただきますわ。」
と、丁寧に。
2人は、アレを食べだした。
みるみるうちに、2人の表情は溶けてゆく。
要:「この甘さがたまらないんだよね〜。最高〜。」
ミント:「絶妙ですわ。この生クリームにチョコレートなどなど…。幸せですわ。」
と、それぞれ感想を述べる。
どうやらアレとは、かなりの甘さのようだ。
このエルシオール内で、甘党の上位の2人には、最高の品であろう。

2人がアレに夢中になっている時。
ようかが食堂に入ると、カウンターの所で、食堂のおばちゃんと蘭花が話しているのが、
彼女の眼に写った。
その会話が、ようかの耳に入ってくる。
食堂のおばちゃん:「蘭花ちゃん、頼まれてた物、できたよ。」
蘭花:「ホント!やったぁ〜。じゃっ、早速それくださーい!」
食堂のおばちゃん:「じゃ、ちょっと待っててね。」
と、食堂のおばちゃんは、キッチンの方へ下がっていった。
ようかは、蘭花に近づき、声をかけた。
ようか:「こんばんは。フランボワーズ少尉。」
と、挨拶。
その声を聞き、蘭花はようかの方を見た。
蘭花:「あぁ、ようかさん。えっと、そんなにかしこまった
呼び方じゃなくてもいいですって。普通に、蘭花って呼んでください。」
ようか:「なら、そうさせてもらいます。蘭花さん。」
ようかは少し照れながら言った。
ようかの腰に差している刀に気が付いた蘭花が。
蘭花:「あっ!この刀ですね〜。悪の手からシヴァ皇子を護った刀は。」
ようか:「はい、そうです。」
蘭花:「うっわ〜。すごいなぁ〜。あの、触ってみてもいいですか?」
と尋ねる。
ようか:「もちろんいいですよ。」
ようかがベルトの間から鞘を抜こうとした時。
食堂のおばちゃん:「蘭花ちゃん。はい、おまたせ。」
と、食堂のおばちゃんがおぼんに料理を載せて、カウンターに現れた。
蘭花:「すみません、ようかさん。料理が来たんで、
またの機会に触らせてもらいますね。」
ようかに軽く謝る。
ようか:「いえ、気にしないでください。」
と蘭花に言いつつも、気は、ようかの視界に写る皿の中身にあった。
その中身は、真っ赤なのだ。
ようか:(な、何?何故、あんなに真っ赤なの…?)
そう心の中で疑問に思っていると、不意に
いかにも辛そうな臭いが、ようかの鼻を刺激した。
その臭いで、あの色の正体がわかった。
そう、料理が真っ赤な理由は、その料理がものすごく辛いからであった。
蘭花:「ありがとうございまーす!」
と言いながら、その料理を受け取り、お金を払う。
ようかは思わず感想を口に出した。
ようか:「それ…、ものすごく辛そうですが…。大丈夫なんですか?」
それを聞いた蘭花は。
蘭花:「大丈夫、大丈夫。このくらい余裕よ!」
と、笑って答えた。
蘭花:「それに、辛い物大好きだしね〜。」
ようか:「は、はぁ…。」
すごすぎてまともに返事が出来ない。
蘭花:「なんなら、ようかさんも食べてみます?」
蘭花が誘った。
ようか:「え、遠慮させていただきます…。」
ようかは、本気で断った。

ようかはその後、無難なA定食という物を頼み、要,ミント,蘭花と一緒に食べた。
今は、要を半ば背負う形で歩いている。
何故この状態になったかと説明すると。
蘭花が持ってきた激辛料理に興味を持った要が、一口それを食べてしまったのだ。
なので要は、倒れてしまった。
ということで、今に至る。
要:「う…ん…。へっ?あれ?」
ようか:「気が付いた?よかったぁ。」
と要に言う。
要:「何で、こんな状態に?」
ようかに疑問をぶつける。
ようかは軽く説明した。
それを聞いた背中の要が、ようかに謝る。
要:「そうだったんだ〜。ようか〜。ゴメンね〜。」
辛さのせいか、少し涙目になっている。
ようか:「気にしてくていいよ。これから医務室に行こうと思うんだけど…。」
背中の要に言う。
要:「医務室はダメ〜。」
と、懇願。
ようか:「じゃぁ、どこに行けばいい?」
ようかは、背中にいる要に尋ねた。
要:「アタシの部屋〜。」
ようかに言う。
ようか:「わかったわ。」
傍から見ると、まるで親子だ。
駄々をこねている子供をなだめる為に、親が
おんぶをしてあげているような図になっている。
???:「おい!」
不意に後ろから声が。
ようかは首だけを声に向けた。
要は、ぐったりしつつも、声の主に興味があるのか、彼女も首だけを向ける。
2人の眼に、ある人物が写る。
2人は同時にその主の名を言った。
ようか:「ハーバードランド副隊長。」
要:「オセ。」
ようかは、一礼をしようとする。
オセはそれに気付き、礼をやめさせた。
オセ:「礼はいい。それよりも、要がどうかしたのか?」
と、現状を聞いた。
ようかは、説明をした。
その説明を聞いたオセは、少し笑い、かつ要を叱った。
叱られた要は、反省しているようだ。
オセ:「すまないな。ウチの隊長はいつもこんな風だからな。
これからが思いやられるとは思うが…。」
ようかに言う。
ようか:「い、いえ…。」
オセ:「さぁ、要を。」
と、オセはようかに、要を要求した。
ようかはオセに従い、要を渡す。
オセは、要を担ぐ。
オセ:「じゃぁな。」
要:「ありがとね〜。」
2人は、ようかに別れを告げ、去っていった。
ようかは要に。
ようか:「お大事に〜。」
と言いながら、見送った。

ようか:「ふぅ…。」
とため息。
部屋に戻ったようかは、刀の手入れをしていた。
いつもの習慣だ。
その途中。
ようか:「父さん、母さん、今頃何してるのかなぁ。」
家が懐かしくなり、両親のことを浮かべていた。
感傷に浸っている。
ようかは、鞘から出している刃を見つめた。
ようか:(こんなんじゃダメじゃない!)
自分を叱った。
気を取り直して、刀の手入れを再会した。

そのものの存在には、誰も気付いていない。
エルシオールの廊下を舞う謎の影。
そう、誰も気付いてはいない。そのものには…。


つづく

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