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〜ギャラクシーガーディアンズ〜




第二章 『始まり』

第三話



ようかがエルシオールに来てから、約1日が経った。
今エルシオールは、宇宙を航行している。
白き月へ帰るために。
ようかは食堂で朝食を済ませ、要の部屋へ向かった。
その途中、オセと出会った。
ようか:「おはようございます。」
と挨拶をする。
オセ:「あぁ、おはよう。」
とオセも挨拶をする。
オセ:「ここを通っているということは…、要の処へ行くつもりか?」
ようか:「あっ、はい。」
オセ:「あいつなら、部屋にはいないぞ。」
ようか:「えっ?ならば、何処に?」
と、オセに尋ねる。
オセは答えた。
オセ:「おそらく、トレーニングルームにいるはずだ。」
それを聞いたようかは。
ようか:「ありがとうございました。」
と頭を下げた。
オセ:「あぁ。それじゃ、俺は行くぞ。」
と言い、謁見の間の方へ歩いていった。
謁見の間の奥には、シヴァ皇子がいるのだ。
護衛の為に向かうのだろう。
ようかは、トレーニングルームへ向かった。

ようかがトレーニングルームに入ると、オセが言ったとおり、
要が居た。
要は、サンドバックに強烈なパンチを浴びせている。
その衝撃を受けるたびに、サンドバックが大きく揺れる。
ようか:(す、凄いパンチ力!あんな細い腕で何故!?)
と心の中で驚いていた。
ようか:(もしかして、無必要な脂肪は全て削って、
必要な筋肉だけを付けているから!?
もしそれが本当だとしたら…。
要は、強い…。)
ようかは、そう思わずに入られなかった。
圧倒するパンチが、先程からサンドバックに絶え間なく続いているのである。
それを見ているようかは、声をかけようにもかけられずにいた。
その時後ろから、声が聞こえてきた。
蘭花:「あっ、ようかさんじゃないですか。」
その声の主は、蘭花だった。
蘭花は、髪の毛をタオルで拭きながら、ようかに声をかけた。
おそらく、シャワーで汗を流した後なのだろう。
ようか:「あっ、おはようございます。」
と、挨拶をする。
蘭花:「あっ、こっちこそ、おはようございます。」
蘭花は髪を拭く手を止め、慌てて挨拶をする。
そして、ようかに声をかける。
蘭花:「要に、用事があるんですか?でしたら、伝えときますよ。」
ようか:「えっ?いえ、自分で伝えますから…。」
と、ようか。
蘭花:「だったら多分、相当待っておかなくちゃいけませんよ?」
ようかがその理由を聞く前に、蘭花はその理由を説明し始めた。
蘭花:「要、いつも毎朝、あぁやって、気が済むまでトレーニングをやってるんです。
その間は、完全集中で、こっちが声をかけても、まったく反応しないんですよ。
だから、さっき言ったとおり、彼女の気が済むまで、待っておかなくちゃいけないんです。」
と、ようかに説明した。
それを聞いたようかは。
ようか:(やっぱり要は凄い…。そして、強い。)
と再度思った。
蘭花:「そういえばようかさんって、何才なんですか?」
不意に蘭花が質問をした。
ようかはそれに答えた。
ようか:「一昨日、20才になりました。」
それを聞いた蘭花は。
蘭花:「あっ、やっぱアタシより年上だったんですね〜。
何か、大人っぽい雰囲気出てますもん。
フォルテさんとは、また違った。」
ようか:「そういうものって、わかるんですか?」
と、尋ねる。
蘭花:「はい、わかりますよ〜、充分。なんとなく雰囲気でわかります。」
自信たっぷりに答えた。
ようか:「は、はぁ…。そういうものなのですか…。」
ようかは、納得せざるをえなかった。
蘭花:「あっ、そういえば刀、まだちゃんと見せてもらってなかったですね。」
蘭花は言った。
ようか:「見ますか?」
そう言いながら、腰のベルトにはさんであった刀を、左手片手で抜く。
それを蘭花に差し出す。
蘭花はそれを丁寧に受け取り、興味深げに見まわす。
蘭花:「ようかさん。鞘から、刃抜いてもいいですか?」
と、ようかに許可を得ようと聞く。
ようかはそれに、快く答えた。
ようか:「もちろんいいですよ。でも、危ないので気をつけてくださいね。」
蘭花:「ありがとうございます!」
と言い、そっと鞘から刃を抜く。
偶然、天井のライトに一瞬、軽く反射して、美しく白銀に光る。
蘭花は思わず、その光景に見惚れてしまった。
が、それも僅かの事だった。
すぐに元の白銀の色に戻った。
蘭花:「ものすごく綺麗でしたねぇ…。」
ようかに言う。
ようか:「これが…刀の魅力です。」
ようかは、静かに言った。
ようか:「こんなに刀は美しい物なのに…。これは、命を殺める凶器なんですよ。刀は…。」
それに続けて、蘭花に尋ねる。
ようか:「何故、刀や銃などの凶器は、重いと思いますか?」
蘭花:「命の重さ…ですか?」
蘭花は即答した。
ようか:「そのとおりです。さすがですね。」
蘭花:「いつか…、フォルテさんから聞きましたから。」
蘭花はその時の光景を思い出す。

蘭花:「なんで、フォルテさんは、重くて使いづらい銃を持ち歩いてるんですか?」
フォルテに質問する。
するとフォルテは。
フォルテ:「重くて使いづらい…ねぇ。なぁ蘭花。何故、銃は重いか知ってるかい?」
蘭花に質問した。
蘭花:「いえ…。」
フォルテ:「そうかぁ。なら、教えてやるよ。ほら、銃持ってみな。」
フォルテは、懐から取り出した銃を、蘭花に差し出した。
それを受け取る蘭花。
それを確認したフォルテが言う。
フォルテ:「どうだい?重いだろ?」
蘭花:「はい…。」
と頷く。
フォルテ:「銃なんかの凶器の重さは、"命"の重さなのさ。あたしは、そう思ってる。」
真顔で言った。
蘭花:「へぇ…。」
と感心した。
フォルテ:「まぁ、いまのご時世には軽い武器なんかもあるよ。
例えば、暗殺専門の銃とかねぇ、そいつを使ってるやつは、
命を命と思わない奴が使うだろ?
つまり、そういう武器には、命の重さを感じることが出来ないのさ。」
と言い終えた直後。
「…って、自分でもよくわかんなくなってきたぁー。」と、頭をかきむしりながら
苦笑した。
蘭花:「あぁでも、なんとなくわかります。フォルテさんの言いたい事。」
フォルテ:「そういってもらうと助かるよ。」
と笑顔で返した。

その光景を、ようかに話した。
ようか:「さすがフォルテさ…」
???:「さすがフォルテさんだね〜。」
と、ようかの言葉を遮って誰かが言った。
ようかと蘭花が声の方向を見るとそこには、
壁を背もたれに、頭の後ろに手を組んだ要が立っていた。
要:「いい事言うわ。フォルテさんは。」
ようか:「要!?」
蘭花:「要!?」
2人はほぼ同時に言っていた。
要:「何?そんなに驚くこと?」
と2人を見る。
蘭花:「要って、気配消すの得意よね〜。」
要:「そりゃぁ、出が"忍の惑星"だからね〜。」
と得意気に。
ようか:「"忍の惑星"?」
と、それを聞いたようかが首をかしげる。
蘭花:「そっ。要は、くノ一なの。」
要:「とは言っても、忍術とかは出来ないけどね。」
「へぇ〜…」とようかは感心した。
蘭花:「あっ、アタシそろそろ朝ゴハン食べに行くね。じゃっ!」
と、蘭花は駆けて行った。
残った2人は、それを見送る。
要:「で、ようか、アタシに何の用?」
ようかに尋ねる。
ようか:「あっ、そうだった。これからの仕事、教えてくれる?」
要:「うーん、まだ言えないのよねぇ。"あれ"が終わったら教えれるんだけど…。」
ようか:「"あれ"って?」
要:「そう、"あれ"。それの事は、あとで教えるよ。
13時頃になったら、アタシの部屋に来てくれない?」
ようかに言う。
ようか:「わかった。じゃぁ、それまでフリー?」
要:「そういうことになるね。エルシオールの散歩でもしてたら?
この前きちんと案内できなかったとことかあるし。」
ようか:「そうするわ。じゃぁ、またね。」
そう言って、ようかはトレーニングルームから出た。
要はそれを見届けると。
要:「さっ!シャワー浴びて、朝ゴハン食べなきゃ。もうお腹ペコペコだしねぇ…。」
そう言って、シャワールームに足を向けた。

一方ようかは、クジラルームに足を向けていた。
ようか:(『クジラルーム」というくらいだから、ホントに鯨がいる…のかなぁ?)
という疑問を持ちつつ、ドアの前まで来た。
ようかがドアを開けると、その部屋の光景が視界に入ってきた。
ようか:(うっわ〜!凄い…!)
と心の中で感激した。
そこには、蒼い海と白い砂浜に青い空、極めつけにサンサンと降り注ぐ太陽。
その蒼い海が突然ざわめき始めた。
ようか:(何?!)
海は大きなしぶき音を上げた。
その途端、ようかの目の前が真っ暗になった。
ようか:(停電かしら…?)
そう思っていると。
???:「キューン!キュオーン!」
と、どこかで何かの鳴き声のような音がした。
そして、その鳴き声のような音と同時に、ものすごいしぶきが起こった。
ようか:「えっ?な、何?!」
と、困惑していると、誰かがようかに喋りかけてきた。
???:「宇宙クジラも歓迎しているんですよ。あなたがこの艦に来たことを。
ようこそ。この『クジラルーム』へ。」
ようかは声がした方向を見ると、そこにはニッコリとした少年が立っていた。
???:「初めまして。ここの管理人をしている『クロミエ・クワルク』と申します。」
と軽く礼をした。
ようか:「は、初めまして。私は…」
とようかが自分の名前を言おうとした瞬間。
クロミエ:「『紫劉ようか』さんですね。」
と笑顔で言った。
ようかが「えっ?何故知っているの?」という顔をしていると、
クロミエはそれに気付き、タネ明かしをし始めた。
クロミエ:「宇宙クジラが教えてくれたんです。」
ようかはそれを聞いても、まだ「えっ?」という顔をしていた。
クロミエ:「この宇宙クジラは、人の心がテレパシーのような能力でわかるんです。」
と、今は静かに漂っている海を見ながら言った。
ようか:「へぇ〜。」
と感心した。
クロミエ:「それにしても、驚かれたでしょう?先程のこと。」
ようか:「え、えぇ…。宇宙クジラ自体が初めてだったので…。
それに、こんな場所にいるとは思っていなかったから。」
ようかはこの言葉を発して、改めてこの艦のスケールと巨大さに驚いていた。
クロミエ:「それじゃぁ、驚かれますよね。あっ、ミニもいるんですよ。」
と、先程から肩に載せていたぬいぐるみのような生物を、ようかに見せた。
その宇宙クジラの子供は「キュー!キュー!」と愛くるしい声で鳴いている。
ようか:「うわぁ〜。可愛いですね。」
と笑顔で言っているが、心の中では。
ようか:(てっきりぬいぐるみかと思ってたわ…。まさか生きていたなんて。)
とか思っていた。
クロミエ:「せっかくお越しいただいたんです。中の方、見ていかれますか?」
と、向こうにある温室のような建物を指す。
ようか:「いいんですか?なら、お言葉に甘えさせてもらいます。」
ようかはクロミエに連れられ、その場所へやってきた。
中へ入ると、そこらの植物園にも負けないくらいの植物があった。
どれもこれも、ようかが見たことのないような植物ばかりだ。
それらを鑑賞していると、奥にヴァニラの姿があった。
なにやら小動物―ようかは知らないが「宇宙ウサギ」のこと―を、
膝を抱え、優しげな表情で見守っていた。
その光景を見たようかは。
ようか:(あったかい…。)
と思った。
そして、何故か「これ以上邪魔をしてはいけない」と思い、クロミエに小声で
ようか:「あの、失礼します…。」
と軽くお辞儀をして、退室しようとした。
それを見たクロミエは、その動作を察したように同じく小声で
クロミエ:「はい、またお越しください。」
と笑顔で言った。

『クジラルーム』を出たようかは、何処に行こうか悩んでいた。
それもそのはず、このエルシオールは広すぎるのだ。
そうやっているところに、フォルテが現れた。
フォルテ:「どうしたんだい?」
フォルテがようかに尋ねると。
ようか:「いえ、時間を潰そうと思っているのですが…。」
そう答えると、フォルテが
フォルテ:「じゃぁ、少し付き合わないかい?」
ニヤッとした表情で、ようかに言った。
連れてこられたのは、ある一室。
フォルテ曰く『秘密の穴ぐら』だそうだ。
フォルテ:「ここはねぇ、以前ルフト准将に特別に作ってもらった、
火薬式銃射撃訓練場なんだ。」
と、ようかに説明した。
「へぇ〜」とようか。
そんなようかにフォルテが
フォルテ:「どうだい?一発撃ってみるかい?」
ようかに言った。
ようか:「い、いえ…いいです。」
フォルテ:「そんな遠慮しなさんな。どうせ暇なんだろ?」
からかい半分の笑顔でフォルテが言う。
そして、銃をようかの手に乗せる。
その銃を持ちながら、ぎこちなく構える。
ようか:「で、では、失礼して撃たせていただきます。」
かなり緊張していた。
それを察し、
フォルテ:「そう緊張するこたないよ。気軽に「ドン!」と撃ちなって。」
ようか:「は、はい…。」
そう言われても、まだ緊張していた。
そして、ようかは、指を引き金に当て、人型の的に狙いを定め、一気に…引いた。
大きな爆発音と共に、銃弾が銃口から飛び出した。
その銃弾は的の頭部を見事に貫いた。
それを見ていたフォルテは
フォルテ:「おぉっ!凄いじゃないかぁ!初めてにしては、上出来だよ。どうだい?
刀は一旦休止して、銃の勉強をしてみないかい?」
と、ようかを誉め、勧誘する。
ようか:「ぃ…ぇ…」
ようかは、自分でもビックリしていて、声にならない。
そんなようかをお構いなしに
フォルテ:「いやぁ、案外構え方も様になってたし、アタシが教えれば、
かなりの腕になれると思うよ。」
感想を述べる。
ようかはようやく落ち着き、
ようか:「いえ、フォルテさんには悪いですけど、私はやっぱりこの刀が一番です。」
と、鞘を擦りながら言う。
フォルテはガッカリした表情で。
フォルテ:「そうかい?なら仕方がないねぇ。無理強いはしたくないしね。」
と言った。
それを見たようかは
ようか:「すみません。それでは、失礼いたします。貴重な経験ができて嬉しかったです。」
謝り、お辞儀をして部屋から出て行った。
部屋から出ようとするうしろ姿に
フォルテ:「あぁ、気にするこたぁないよ。またヒマならいつでもおいで。」
と言った。
ようかは首だけ向け、
「はい!」と笑顔で答えた。

ようかは廊下に出て、そろそろ約束の時間だろうと思い、要の部屋に足を向けた。

そのものは自由に空(くう)を徘徊している。
誰にも気づかれることなく…。


つづく

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