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〜another stories〜




シアン=メシアヌス篇

第壱話


扉を軽く蹴って扉を開けた。
開いた扉の奥から、半裸の青年が現れた。
片手にタオルで、濡れた頭を拭いている。
その顔には、まだ少し幼さが漂っていた。
この男―シアンはシャワーを浴びて来たところだった。
いつものたまり場の部屋の奥に、シャワールームがあるのだ。
ふとシアンは、いつもと様子が違うことに気が付いた。
賑わっているはずのその場に、誰もいないのだ。
「ぁん?」と眉をひそめていると、テーブルの上に紙切れを見つけた。
動かしている片方の手を降ろし、もう片方の手でそれを手に取る。
それを目で読むシアン。
そして。
シアン:「ッHA!またあいつらか!?」
そう言った顔は、怒っているようでもあり、喜んでいるようでもあった。
シアンは、紙切れを床に投げ捨て、机の上に置いてある銃を手に取ろうとした。
その時、部屋の外に数人の足音が響いた。
銃に伸ばしかけた手を引っ込め、体ごと入口を見る。
開きっぱなしになっているので、外の光が部屋に差し込んでいる。
そして、その光が不意に消えた。
人がそこに立ったせいだ。
シアン:(Four persons ... It is enough for warm-up exercises.
(4人か…。準備体操には十分だな。))
タオルを床に放り投げ、おもむろにコンポのほうに歩き出した。
敵の銃口はそれを追う。
そんなことはおかまいなしのシアン。
コンポの前に立ち、右手を振り上げた。
そして―
人差し指を伸ばし、それをCDの再生ボタンまで振り下ろし、スイッチオン!
指を離してから数秒経ち、大音量のロックがスピーカーから流れ出した。
それにノり、首を縦に振る。
足が、身体全体が、自然とリズムを取り出す。
そんな状態のまま、敵のほうへ振り返り
シアン:「Since it will be impossible in satisfying me to you, it profits at least for my warm-up exercises!」
(あんたらじゃ、俺を楽しませることなんてできないだろうから、せめて、俺のウォーミングアップのために役に立ってくれよ!)」
と挑発。
が、言葉が通じていないらしく、相手は変わりがない。
それを見たシアンは
シアン:「ちッ、It's boring….(つまんねぇなぁ…。)」
と、顔をうつむかせる。
なので今度は通じるように標準語で言葉を発す。
シアン:「それじゃぁ…いくぜ!!」
と、敵に向かって走り出す。
走りながら
シアン:「Showy show started!!(派手なショウが始まったなっ!!)」
と言った瞬間、素早く近くにいた相手の懐へ突っ込む。
体勢をできるだけ低くし、右足を踏み込むと同時に、右の握り拳を相手の腹へ当てる。
口元をニヤリとさせ
シアン:「Caught it……(捕まえた……)」
一瞬、時が止まったような気がした。
右足で床を思いっきり蹴り、ジャンプする。
曲げていた右腕を伸ばして相手を宙に突き上げる。
シアン:「Please soar to Heaven!!(天国へ舞い上がれ!!)」
天国とまではいかないが、天井に相手の身体がぶつかる。
天井に軽くヒビが入る。
その衝撃と、ボディへのアッパーで内臓は潰れ、即死。
自分は、素早く地に降り、次の敵へと向かい出す。
敵の1人がアサルトライフルをぶっ放し始めている。
それを上手く避け続け、敵の1人に迫る。
勢いを殺さず、体勢を低くし、みぞおちあたりに狙いを定め、左拳をそこへ突き出す。
シアン:「How is the taste of the bullet of a fist?(拳の弾丸の味はどうだい?)」
当然殴られた相手は、答えられるはずもなく、面白いようにふっ飛んだ。
シアンの後ろに無数の弾丸が迫っていた。
間一髪のところでそれを避けた…つもりが、肩をかすっていたらしく、
血が垂れている。
シアン:「This crack ... It becomes a high price!(この傷は…高くつくぜ!)」
少しキレ、相手に向かい出す。
そこにまた銃撃が。
シアンは軽く嘲笑し、その場で腰を大きく反りかえした。
その動作のおかげで、全ての弾丸に当たらずにすんだ。
そのままシアンは、"ブリッジ"の体勢へとなり、両腕を思いっきり縮める。
そして!
その縮めた両腕をバネのようにしならせ、
さっきから銃をぶっ放している相手に向かって跳んだ。
ぎりぎり靴底が相手の顔面に当たったくらいだったが、
鉄が入っている安全靴が当たったのだ。
相手は勢いとともに後方に倒れる。
その上に、両足をきちんと揃えてバランスよく立つ。
そのせいで、完全にトドメを刺すことになった。
足元の顔面は、ぎりぎり人間の顔をとどめていた。
まさに言葉どおり頭上から残りの1人を見るシアン。
相手はちょうど、引き金を引かんとしているところだった。
シアンはそれを見ると、軽くジャンプした。
と同時に相手は、引き金を引いた。
シアンは右足を伸ばした。
相手はがむしゃらにぶっ放している。
それがシアンの右靴のそこに甲高い音を響かせながら当たっている。
当然この動作は、ほんのわずかな時間の間に行われていることだ。
シアンは、靴のことなんてお構いなしに、勢いを殺さず、弾丸ごと相手に突っ込む。
その足は、相手の銃に直撃。
銃もろとも、相手を蹴り倒す。
相手は当然ぶっ倒れる。
自分は、相手の顔の横辺りに着地する。
すかさず、右足で相手の横腹辺りをキック。
シアン:「Blow away to the GOAL!!.(ゴールまで吹き飛びな!!)」
まるでサッカーボールでシュートするかのごとく。
それを食らった相手は、もろに吹き飛ぶ。
その身体は、上手く開いた扉を通り抜けていった。
奇跡のような神業だ。
シアンは歓喜の声を上げ、
シアン:「Nice shot!!(ナイスシュート!!)」
と叫ぶ。
シアン:「This seemed to be the mark for a victory somehow.(どうやらこれが、終了点だったらしいな。)」
と、ゴールに見立てた開いた扉を見ながら呟いた。
コツコツと、銃を取りに向かう。
テーブルの上から銃を手に取る。
突然、シアンは銃を天に投げた。
銃が空を舞っている間に、付近の椅子の背もたれに掛けてあった革のコートを掴み、
素早く革のコートに両腕を通す。
そして、同じテーブルの上に無造作に置かれている、革のグローブ(手袋)を
両手にはめる。
全ての準備が完了した。
右手を開き、ふと前に突き出す。
そこへ、タイミングよく銃が降ってきた。
シアンは、腰付近に付いているホルスターに銃を収めた。
左手で、ホルスターとは逆の腰付近を触る。
手に金属の手触りが伝わってくる。そして、それが細長い円柱だということは、
シアンには既に分かっていた。
そう、ナイトスティックの事だ。
おもむろに、右左と拳を突き出し、空間を殴った。
シアンは改めて、握りしめていた右手を、さらにぐっと握った。
なにか手ごたえを掴んだかのように。
シアンは眼光を尖らせ、敵が押し寄せているであろう方角を見据える。
口元に笑みを浮かべる。
そして…シアンは歩み始めた。
この姿こそ、シアンの戦闘スタイルだ。
素肌に革のコート。色はブラック。
前は締めずに、鍛えられた身体が、白い肌が見えている。
そのコートの裏生地には、マガジンが数え切れぬほどセッティングされている。
いつ、弾丸が切れてもいいようにだ。
そして、コートの背中…腰付近には、ホルスターとナイトスティックが。
当然、ホルスターの中には、ブラックメタリックカラーの銃が眠っている。
ちなみにこのコート、防弾の効果をもっている。
手には、革のグローブ。手の甲には軽く金属が付属している。
足には、ブーツ方の安全靴。
彼の戦闘スタイルはこんな風貌だ。
シアンは、天国に舞い上がっていった相手のそばに立っていた。
付近に転がっているアサルトライフルを、手に取り、弾の確認をする。
シアンは口笛をした。
弾は使われていなかった。
それもそのはず、撃つ暇を与えられずに昇天したのだ。
シアンは満足げに、それを持って、辺りを見回す。
まだアサルトライフルは、転がっている。
シアンはその中から、1番弾の残っているものを手にした。
彼の両手には、アサルトライフルが。
クセでもある嘲笑をすると、敵がいる方角へと歩き出す。
そこには、締まった窓が。
銃口で窓を割り…窓枠に片足乗せ…そこから首を覗かせ、外の様子を見た。
「Wow!」と少々驚いた。
敵の数がすこぶる多いのだ。
それを確認したシアンは、腕を交叉させ、2つの銃口を眼下の敵勢に向ける。
そして―。
撃!撃!!撃!!!乱射だ。
シアン:「ョホホホォ〜ッ!!!」
叫びながら撃ちまくるシアン。
そして、引き金を引き続けながら、足に力を込め、一気に外へ跳んだ。
火力の強さで落下時間が若干遅くなる。
眼下の敵勢は何事かと、シアンを見上げる。
落下中、交叉していた腕を、徐々に開いていく。
そして最後には、双首の龍の口は、シアンの着地地点(真下)を向いていた。
龍の口から勢いよく火炎が吐かれる。
そのおかげで、真下の敵は全て消え、着地地点を確保することができた。
シアンの靴が地面に着くか着かないかのところで、双龍は火炎を吐くのを止めた。
そう、弾切れだ。
シアンは、両足できちんと着地する。
降ってきたシアンに動揺する敵達。
それら全ての敵を見渡しながらガンつける。
シアンはおもむろに、両方のアサルトライフルを空高く投げた。
2つのそれは、空中できれいに縦に回転している。
シアンは、両手を開いて、手を空に掲げた。
すると、その左右の開いた手に上手くアサルトライフルの銃口が。
シアンはそれを掴み、構えた。
そして、敵に向かってこう言った。
シアン:「Isn't a gun the usage only with right only shooting?(銃は「撃つ」だけが、正しい使い方じゃないんだぜ?)」
右腕のアサルトライフルを突き出す。
シアン:「Find well that there is also such usage by the eyes!!(こういう使い方もあるってこと…その眼でよく見てな!!)」
シアンは、ワクワクしていた。


つづく

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