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〜another stories〜




シアン=メシアヌス篇

第参話



さて、着地して、敵に啖呵を切ったシアン。
両手に持ったライフルの構えを解き、腰を落として体勢を低くする。
と、おもむろに敵の大群へと走っていった。
もちろん敵は黙ってはいない。
アサルトライフルをぶっ放してくる。
それを避ける…ことはなかった。
なんと、右腕を振るって、手に持った銃で弾いたのだ。
そうやって、次々と弾いていく。
側面の弾にも反応して弾いているから凄い。
アサルトライフルは、当然ボロボロになっていっているのだが、
気にする様子はまったくない。
そして、敵との距離が完全に埋まった。
シアンは無傷だ。
口元に笑みを浮かべる。
相手の男の顔がひきつっている。
その男を、容赦なくシアンのアサルトライフルが襲った。
そう、殴ったのだ。
シアンが言った、「銃の別の使い方」とは、こういう事だったのだ。
男は倒れた。
が、シアンは既に別の敵を相手にしている。
シアン:「ふん!」
と重い一撃を食らわす。
そうやって、次々と大群の中を薙いでいく。
遠くからこの様子を見たものは、シアンが二刀で闘っているように見えるであろう。
たった10分程度暴れただけで、どれだけの人数が減っただろうか。
シアンは、仲間に合流する為に、この場を離れようとした。
片方に持っている(もはや銃の形状をとどめていない)銃を、残りたっている敵目掛けてブーメランを飛ばすように投げた。
それらは見事命中し、男を地に伏せさせた。
そして、近くに倒れている敵から、アサルトライフルを奪い、また先ほどのように構える。
そして、こう呟いた。
シアン:「偶には、こういう闘い方も悪くないもんだな。」
実は、このアサルトライフルを剣のようにして闘う。という闘い方は、シアンが
テキトーに思いついたものだったのだ。
そしてシアンは、駆け出した。
シアン:(無事でいろよな…。みんな!)
心の中で呟いた。

ジーカー:「くっ!報告では、敵はたった5人のはず!!
何故、我が方が負けそうなのだ!!」
先ほどから憤怒しているジーカー副隊長。
ジーカー:「いけぇい!容赦をするな!!殺せ!!!!」
そう戦場に向かって叫ぶ。
それを聞いた護衛のものが言う。
護衛:「で、ですが、命令では「生け捕りにせよ」とのことです!殺してしまっては―」
ジーカー:「うるさい!!ここまで我が方の兵が殺されておるのだぞ!!」
そう言いながら、護衛に睨みつける。
睨まれた護衛は、もはや何も言えなくなった。
確かに、最初来たときの150人からだいぶ減っている。
もしかしたら、半分は減っているのかもしれない。
護衛はしぶしぶ、各隊員達に無線で命令する。
「生け捕りは中止、抵抗するならば射殺してもよい」
と。

ここは、ポカフと戦いを広げている所。
そこにいる隊長格の兵の無線に、連絡が入る。
「生け捕りは中止、抵抗するならば射殺してもよい」
と。
隊長A:「了解!」
と返す。
周りにいた兵に問う。
隊長A:「今、殺してもよいという、命令が来た。どうだ?殺せそうか?」
兵A:「正直、あのランチャーが弾切れを起こさない限り、厳しいかと…。」
そう告げる。
「そうか…」といった表情の隊長。
それを聞いていた別の兵が言った。
兵B:「自分があいつの後ろに周りこみ、機会を作りますよ。」
隊長A:「できるのか!?」
兵B:「可能でしょう。あいつは、目の前の敵にしか目を向けてないようですからね。」
隊長A:「そうか!なら、任せた!」
「了解!」と答え、その男は、走り去った。
そして…。
完全にポカフの後ろに周りこんだ男は、隊長に報告をした。
兵B:「たった今、後ろに周りこみました。」
隊長A:「よくやった!」
と兵を誉める。
兵B:「さぁ…これでお前も終わりだな…。」
そう呟くと、アサルトライフルを構えて、引き金を引いた。
目の前に居る巨躯が方膝をついた。
それを見た隊長が叫ぶ。
隊長A:「今だ!撃てぇぇ!!」
それを聞いた周りの兵が、一斉に引き金を引いた。
巨躯は、完全に地に伏した…。

ここ、ロイと戦っているところへも、命令は来た。
その命令を聞いた隊長は悩んでいた。
隊長B:「あんなに強い奴を、どうして殺すことができようか…。」
その様子を見た兵が問う。
兵C:「どうしました?」
実はな…と隊長は説明した。
それを聞いた兵が言った。
兵C:「なんだ。そんなことで悩んでいたのですか。」
と、思いもよらぬことを言った。
隊長B:「な、なんだと!?」
驚く隊長。
兵C:「あいつの攻撃は、もはやワンパターンになってきてるんです。
私はもう見切りました。確実に…殺せます。」
隊長B:「そ、そうか!ならば…任せたぞ!」
兵C:「了解しました!」
そう応えると、ロイに近づいていった。
少し観察をした兵C。
念のためだ。
兵C:(ふむやはり…。次は、あぁくる筈だから…今だ!)
引き金を引いた。
弾は、ロイの肩を貫通した。
兵C:「私は、ただチャンスを作るだけでいい…。」
そう呟いた。
つまり最初から、殺す気はなかったのだった。
それを合図にし、銃口が一気にロイを見た。
ロイ:「ハッ!殺れるもんなら、殺ってみろよ!!」
ロイが叫ぶ。
それとほぼ同時に、一斉に銃口から弾が発射された。
ロイは、倒れた。

イーアが居た場所で、かすかに声が聞こえる。
そこの隊長の無線からだ。
「生け捕りは中止、抵抗するならば射殺してもよい」
が、返事がない。
そう、隊長は既に死んでいるからだ。
無線の声は、返事を確認せずに切れた。

シアンは、走っていた。
銃弾飛び交う中を。
隙を突き、敵に近づき、アサルトライフルで殴り倒す。
そんなことをしつつ、確実に味方に近づいていた。
どうやら、アレルのとこへ向かっているようだ。
シアン:(よかった…。まだ無事っぽいな。)
シアンの足は、加速した。
一気にアレルが戦っている付近まで近づく。
それに気付いた敵が居た。
シアンはニヤリと口を動かす。
走りながら、両方のアサルトライフルを、その男目掛け、投げつけたのだ。
男は、それを撃ち落そうとした。
その動作が、運の尽きだったのかもしれない。
シアンは、腰に付いているホルスターから、銃を取り出した。
男の心臓目掛け一発。
男はすぐ倒れず、立った姿勢をわずかながら保っていた。
先ほどから走っているので、その立っている男の目の前まで来た。
その刹那―
シアンは、左脚に力を入れ、跳んだ。
そして、右足を男の肩へと乗せ、さらに空中へと飛んだ。
ブロンドの長い髪が、空を舞う。
そしてシアンは、アレルの声を聞いた。
アレル:「って、おぉっと!余裕ぶっこいてる場合じゃねぇー!!」
シアン:「It's right!(そのとおりだな!)」
そう言いながら、着地した。

アレル戦の処へ命令が届いた。
それを聞いたと同時に、隊長が兵達全員に、無線で伝える。
それを聞いた兵たちは、攻撃の色を強める。
誰かが放った弾が、アレルの頬を掠めた。
その瞬間、兵たちの攻撃が、止まった。
突然目の前に、男が現れたのだ。
ブロンドの長い髪、黒の革のコート。
その男の手には、ブラックメタリックの銃が…。
その銃が、静かに構えられる。
そして、その男が何かを言った後、兵士たちの耳に、聞こえるくらいの声が聞こえた。
シアン:「楽しすぎて脳ミソが狂っちまいそうだ!!」
と。
その声と同時に、誰かが撃たれて倒れた。
それが再開の合図になった。
兵たちが、攻撃を再開した。

アレル:「まったく、ホンット遅いっての。
もう少し早く来てくれりゃぁ、俺が楽できたってのに。」
と、文句ばかりだ。
「ふぅ〜」とため息をつきながら「やれやれ」といった表情のシアン。
こんなことをしつつも、2人とも戦っている真っ最中なのだ。
アレルは、シアンが来てくれたためか、かなり余裕を見せている。
シアンは、もとから余裕を持ちつつ戦うのがスタイルだ。
その余裕が、不運を生んだ…。
アレルの胸部を、凶弾が襲った。
アレル:「シ、ア…ン…。」
その声を聞き、振り返るシアン。
その眼には、倒れていくアレルの姿が映った。
アレルの体が、完全に地に付いた。
その瞬間、シアンは叫んでいた。
シアン:「アレルぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!!!!!!!」
鬼のような形相で、兵士達を睨みつけるシアン。
その眼には、涙が。
アレルの近くへとしゃがみこむ。
そして、こう呟いた。
シアン:「ホント…俺が早く来ていれば…。」
だが、嘆いても仕方がないと思ったシアンは、アレルのベルトから、手榴弾を取った。
そして、それを敵に投げる。
爆発する前に、素早くそれに弾を撃ちこむ。
爆発。
その爆煙の中を駆けるシアン。
他の仲間のことが気になったのだ。
敵を撃ち殺しつつ、探すシアン。
その眼に、うつむけの状態の巨体が映った。
シアン:「ポカ…フ…。」
思わずこぼれる声。
ふと、左を見た。
そこには、ロイの無惨な姿が…。
これで完全に、四天王は全滅したと思ってしまった。
残りのイーアの生死を確認せずに。
シアン:「うぅぅぅぅぅぅぅぁぁぁぁあああああ!!!!!!!!!!」
シアンは叫んだ。
その叫び声を聞いた全兵士が、怯んだ。
シアンの体の周りに、白い煙のようなものが纏わりつき始めた。
シアン:「ハぁ〜……。」
そして、その煙の中を、稲妻のようなものが走り始めた。
すると突然、本能で感じたのか、ある方向へと駆け出した。
しかも、かなりの速さで。
人間で出せるか出せないくらいの速さだ。
その方向とは、敵の副隊長ジーカーがいる方向だったのだ。
その行動を無視するほど、敵は甘くない。
シアンに向かって、収集放火を浴びせる。
が、なんとしたことか、全ての弾丸が、白い煙のようなものに、弾かれているではないか。
よく見ると、弾くと同時に、徐々に、その白い煙のようなものが、薄れてきていた。
しかし、そんなことには気付かない兵士たち。
すっかり(弾を弾く)シアンに恐れ、攻撃を止めてしまった。
一気にジーカーへと迫るシアン。
そして、ジーカーの目と鼻の先に来た瞬間―。
大きな銃声が、辺りに響いた。
シアンのそれとは違う。
弾丸は、シアンの腹部に命中し、シアンをふっ飛ばした。
が、シアンは無傷だった。
そのかわり、先ほどのまで纏っていたものが、消えていた。
シアンは起き上がり、撃ってきた奴を見た。
シアンの眼に、リボルバー式の銃を構えた、ガタイのしっかりとした男が映った。


つづく

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