戻る

〜another stories〜




シアン=メシアヌス篇

第四話



???:「すまんなぁ。遅れてしまったわ。」
とジーカーの肩に左手を置く。
右手は、撃ったときのままの状態だ。
振り向くジーカー。
ジーカー:「グ、グーシオン大佐!」
ジーカーの言葉を聞いているのか聞いていないのか、グーシオンと呼ばれた男は、
戦場を見渡した。
グーシオン:「まったく、酷い様よのぉ…。」
戦場には、無造作に兵たちの死体が転がっている。
そして、先ほど自分が撃った男を見た。
グーシオン:「ほっほぉ〜。どんな魔法を使ったのかは知らんが、無傷とはな!
これは驚いた!」
口では「驚いた」と言っているが、顔からはとても驚いているようには見えない。
シアン:「おい、オッサン!いきなり撃ってきやがって!!」
と激怒。
それを聞いたグーシオンは。
グーシオン:「いやぁ、すまなかった、すまなかった。して…撃たれたこと以外のことで、
怒っておるようだが…?小僧。」
シアン:「ッHa!ふざけんな!てめぇが命令して、俺の仲間殺したんだろうが!!」
その言葉を聞いたグーシオンは、戸惑った。
グーシオン:「待て小僧。わしは、「生け捕りにせよ」としか命じておらん!」
シアン:「嘘ついてんじゃねぇ!現に、殺されてるんだ!!」
そんな中、ジーカーが口を開いた。
ジーカー:「あ、あのぉ…大佐…。」
グーシオン:「ん?どうした。」
シアンも思わずジーカー(とかいう男)を見る。
ジーカー:「じ、実は私が、独断で「生け捕りは中止、
射殺してもよい」と命令しまして…。」
かなり声が震えている。
グーシオン:「こ、こやつ…なんということを!!」
グーシオンが声を張り上げた。
シアンは極自然に、銃をジーカーに向けた。
それに気付いたグーシオンは。
グーシオン:「おい小童。こやつは、わしが責任を持って裁いておく。
じゃから―」
言葉を途中でさえげるシアン。
シアン:「It's an impossible thing!(そいつぁ無理だ!)」
グーシオン:「ならば…わしが相手をしなければなるまいな…。」
そう言って、静かにシアンのほうを見る。
そして、銃を構えた。
シアン:「ha!It's a good idea…All are perfect, if you are killed and the man is killed.
(それは良い案だ。あんたを殺して、あいつを殺せば全て完璧だ。)」
グーシオン:「くっはっはっはっは!!面白いことをいうのぉ小僧が!…じゃが、口は禍の元じゃぞ?来い、小童ぁ!!!」
シアン:「ガキ扱いしたこと…後悔させてやるよ!!」
2人はほぼ同時に、引き金を引いた。
そこからが凄まじかった。
撃っては避け、避けては撃ちの繰り返し。
言葉では簡単に言えるのだが、それを見ていた兵士たちには、
2人がとても人間の動きをしているようには見えなかった。
それから、どれくらい時間が経っただろうか…。
突然、グーシオンがある提案を持ちかけてきた。
グーシオン:「小僧…このままでは決着がつきそうにない…。
別のことで、勝負をつけぬか?」
そう、この2人は伯仲の戦いをしていたのだ。
シアン:「ぁん?」
とグーシオンを睨むシアン。
シアン:(確かにあのオッサン、かなりの腕だ…。このままやりあえば、
正直、負けるかもしれない…。)
シアン:「OK」
と一言。
グーシオン:「そぉか。早撃ちで、勝負をせぬか?」
そう言うと、軽く説明し始めた。
少し大きめの石を空高く投げさせ、誰かの合図と共に引き金を引き、
先に意思に弾を当てたほうが勝ち。
というルール。
そして、グーシオンは続けた。
勝った方は負けた者に、何か1つ、聞いてもらうことにしよう。
と。
シアン:「面白そうじゃねぇか。」
説明を聞いたシアンが言った。
「じゃろう?」と自慢気な表情で、シアンを見た。
グーシオン:「石を投げる係と、合図をする係は、ジーカー、おぬしがやれ。」
と命じた。
それを聞いたジーカーは、「はっ、はいぃ!」と言って、石を探し始めた。
石はすぐに見つかった。
ジーカー:「い、いきますよ?」
と、グーシオンに問う。
グーシオン:「あぁ、早く投げろ。」
そう言うと、ジーカーは、石を空高く投げた。
石は宙に舞っている。
グーシオン:「ズルをするではないぞ?小僧よ。」
シアン:「そっちこそなぁ。オッサン。」
ジーカーが、手を叩いた。
それが合図だった。
2人がほぼ同時に引き金を引く。
連続して2つの銃声が辺りに響き渡る。
「どっちだ!?」という風に、兵士達が騒ぎ出す。
突然シアンが膝を落とした。
グーシオン:「残念じゃったのぉ。小僧よ。」
なんと、2人には分かっていたのだ。
どちらが先に石に弾が当たったのかどうかが。
シアン:「さぁ、焼くなり煮るなり…自由にしろ。」
と、両手を挙げて降参している。
悔しいが、真剣勝負だ。
相手がズルをしたとも思えない。
完全に、負けを認めたのだった。
グーシオンはシアンに近づき、こう言った。
グーシオン:「なぁに、殺すつもりはない。ただ…わしの弟子に…ならんか?」
それを聞いたシアンは思わず、呆れた表情で、こう言ってしまった。
シアン:「あんた…バカか…?」
と。


つづく

戻る