月の導き

第４話「戦闘」

閃光のごとく空を駆け抜けるムーンライトミラージュ

「すげぇ、なんて速度だ！」

初めての紋章機の運転に感嘆するキュアンだった。
発進してからものの数秒もしないうちにキュアンらは白騎士の紋章機の前に対峙することとなる。

「ご主人様。前。」

「ああ！見えているぜ！さあ復讐戦だぜ！！」

よりいっそう操縦桿を握り締めるキュアンだった。

白騎士も正面からの飛来物を感知していた。

「データ照合無。新型機確認。」

「この前はよくもやってくれたな！今度は俺の番だぜ！」

けん制を含めての両翼のビームランチャーを放つ。
白騎士の紋章機は特に回避もせずにいた。
そして真正面から受けた。
ようにみえた…

「んな！」
「敵紋章機より強力なエネルギーフィールドを確認。無効化されました。」
「ちっ！」

両者は一度すれ違い空中で反転する。

「多数の熱量接近。」

ムーンライトミラージュが反転するのを見計らって白騎士はレーザーファランクスを放っていたのであった。

「当たる！」
「Ｅシールド展開。」

アニスの正確な判断によりＥシールドで防ぐ。
数発だけすり抜けるがＡビーム装甲により中和する。
実害はゼロであった。

「サンキュー。」
「ありがとうございます。」
「今度はこれでどうだ！」

ムーンライトミラージュの各所にあるレーザーファランクスの砲門が開き発射される。

「回避行動。」

白騎士は巧みに旋回を繰り返しそのほとんどを回避する。
回避しきれないものはさっきと同じくエネルギーフィールドで無効化されていく。

「ちっ！またかよ。」

白騎士は次に多数のミサイルを放ってきた。

「ちくちょう！好き勝手にやりやがって！」

すぐさま旋回用ブースターを使用して紋章機の向きを変え回避に出る。
さっきと同様Ｅシールドを展開しながらだ。
それでもＥシールドを破り装甲に何発かのミサイル当たり爆発する。

「く！」
「きゃ！」

今度はさっきと違いコックピットに衝撃が走った。

「被害状況確認。損傷率５．３％支障ありません。」
「さすが防御型だな。」

その報告を聞いてキュアンは少しホッとした。

「アニス。」
「はい？」
「こいつにあのフィールドを突破できる武器は無いのか？」
「残念ながら今はありません。」
「今は？どういうことだ。」
「宇宙に上がればミラーフェアリーの使用が可能です。それのビーム反射攻撃の一点突破で。」
「よし！そいつでいくぜ！」

キュアンは白騎士の攻撃を振り切りながらなんとか宇宙へとあがった。

「よし！アニス。そのミラーフェアリーとか言う奴を使え！」
「はい。」

ムーンライトミラージュより多数の遠隔操作ユニットが射出された。

「いけ～！！」

とりあえずキュアンはビームランチャーとレーザーファランクスを放つ。
それに合わせてアニスがミラーフェアリーで軌道修正し、一本化する。

「！！」

ついにエネルギーフィールドを突き破りフィールド発生器を破壊した。

「へっ！これでどうだ！」

「ファントムウイング。起動。」

今度は白騎士の紋章機より遠隔操作ユニットが射出された。

「んな！聞いてねえぞ！！」

相手の遠隔操作ユニットはこっちものとは違い攻撃型。しかも数が半端ではなかった。

「攻撃。来ます。」

雨のごとく降り注ぐ白騎士の攻撃。
その攻撃は逃げる隙間すら与えてはくれなかった。
コックピット内に衝撃が走り、モニターにはノイズが走る。

「損傷率50％超えました。」
「畜生！！」

思わず手を叩きつける。
そんな時通信が入る。
Ｂ．Ｋ．からだった。

『大分苦戦しとるみたいじゃのう。』
「うるさい！」
『なんじゃ。せっかくいい策を持ってきてやったのにのう。』
「…なんだよ策ってのは？」
『今から送るポイントに白騎士を誘き出すのじゃ。』
「それでどうするんだ？」
『後は、わしが何とかするわい。』
「分かった。」

少し怪しみながらもＢ．Ｋ．の作戦に乗ることにした。
なぜなら他に作戦という作戦も無かったのも理由の一つだった。

Ｂ．Ｋ．の言うとおりすぐさまデータが送られてきた。

「指定ポイント。出します。」

アニスは画面に表示する。

「ここは！」

その指定ポイントはあの宇宙船のあった場所のちょうど真上に当たる場所だった。

「一体なに考えてやがる。だが、乗るしかねぇな。アニス！飛ばすぞ！！」
「はい！」

ムーンライトミラージュはＥシールドを全開して指定ポイントへと向かった。
すかさず後を追いながら攻撃を続ける白騎士。

「もう少しだ！」
「後方より超重力波反応！」

ふと後ろを向くとそこには右の巨大な砲門が向けられていた。
その様子に思わず戦慄が走る。
あの時と同じ感覚だった。

「ダークマタークラッシャー。」

そして放たれる漆黒の閃光。

「全シールド最大出力！」

ムーンライトミラージュは全てのシールドを展開と同時に回避行動に出る。
紙一重で直撃を避けることに成功した。
だが…

「ぐわぁ！」
「きゃぁぁ！」

今まで以上の衝撃がコックピットを駆け巡る。

モニターのほとんどが消え、コックピットも薄暗くなっていた。

「何とか耐えたか…大丈夫か？アニス！」
「はい…現時点で損傷率89％。メインエンジン停止。現在サブエンジンで何とか持っています。」

そこでＢ．Ｋ．から通信が入る。

『アニスにキュアン。よく頑張ったのう。あとはわしが何とかするぞ。』

レーダーを見ると、ちょうど白騎士の紋章機は指定ポイントにいた。
作戦は成功である。

白騎士が次の攻撃を始めるか否かのその瞬間。

「！」

今度は白騎士の紋章機強力な衝撃が走る。
何事かと白騎士は今の状態を確認する。

「なにが起きたんだ！？」

キュアンもその様子に驚くしかなかった。
モニターに表示されている白騎士の紋章機の右側半分が丸ごと無くなっていた。

「右翼消滅」

白騎士がそれを確認と同時に再び衝撃が走る。
今度は左側が無くなっていた。

その様子に唖然とするキュアンだった。
本当に消滅しているのだ。

危険を察知し白騎士はコックピットを開き脱出する。
それとほぼ同時に今度は両翼を失った紋章機自身が消滅していった。

なんとかＢ．Ｋ．の宇宙船に戻ってきた２人だった。

「でっ、どんな魔法使ったんだ？」
「ふぉふぉふぉ。アレじゃよ。」

Ｂ．Ｋ．が指差したのは一番奥に置いてあった純白の紋章機だった。

「調整中とか言ってなかったか？」
「ああ、そうじゃよ。」
「じゃあ、どうやって？」
「その隣を見るんじゃ。」

Ｂ．Ｋ．の言われるとおりその隣には全長70ｍはあるだろう巨大な砲台が置かれいた。

「アレはなんなんだ？」
「ドライバーレールガンじゃよ。」
「なんだそれは？」
「クロノ・ドライブを利用した攻撃兵器じゃよ。威力のことはお前さんも見たじゃろ。」
「とんでもねぇな。お前。」
「なにをいまさら言っておるのじゃ。まったく。」

キュアンは一つ閃いた。

「あれをムーンライトミラージュに取り付けられるのか？こいつ攻撃力が低すぎる。」
「ああ、それは無理じゃ。こいつはアルテミス専用に造っておる。
それにお前さんの集中力ではまず当たらん。やめておけ。
それよりムーンライトはいい機体じゃよ。
お前さんもそいつじゃなかったらとっくにあっちの世界に行っておるわい。
わしの娘も一緒に乗っておるというのに。」
「むすめ？」

突然の告白に驚くアニスだった。

「そうじゃ。大分言うのが遅れたがわしがお前の造ったんじゃ。つまり親同然じゃよ。」
「そう、なのですか。そうなのでしたらＢ．Ｋ．さんはお父様ですね。」
「お父様か。うんうん、それもなかなかいい響きじゃのう。」
「えらく不自然な親子だな。おい。」
「うるさいわい。本当の娘は…おっと。」
「本当の娘？お前何歳だよまったく。」
「それは秘密じゃよ。」
「また、それかよ。」

「それより白騎士はどうじゃった。」
「あと少しって所で逃げられてぜ。」
「そうか。じゃがしばらくはおとなしくなるじゃろう。」
「じゃねえと困るな。」
「さて、今日のところは戻るとするかのぅ。」
「？どこへだ？」
「パイナさんのところじゃよ。わしの研究所も白騎士にやられたからのう。」
「てめえ、居座る気かよ。」
「まあ、しばらくの間だけじゃよ。いくぞ、アニス。」
「はい。お父様。ご主人様も。」
「あ～わかった、わかった～。」

次回予告
戦いを忘れ休日を満喫するキュアンたちだった。
パイナの誘いでデパートに買い物へ行くことになった。
そしてそこでは新たなるバトルが繰り広げられのであった。
第５話「デパートバトル！」
大いなる月の加護があらんこと…

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