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月の導き


第5話「デパートバトル!」


白騎士襲撃から3ヶ月という時が過ぎていった。
発生当初はニュースなどで大きく騒がれたが時が経てば殆どの人の記憶から薄れていった。
そしてそんなある日の夜のこと…

「ねえ、キュアン明日暇?」
「あん?なんだよ急に。」

いつものソファーに横たわりながら答えるキュアン。

「デートの誘いじゃないか兄貴〜」
「お〜若いの〜」

ヤジを入れるB.K.とベルギー。

「…デート?」

首をかしげるアニス。

「外野うるさい!ったくなんだよパイナ。」
「うん、実は…」
「もったいぶりやがって。さっさと言いやがれよ。」
「これよ!!」

パイナは一枚のチラシを見せ付けた。

「「こ、これは!」」

キュアンとベルギーの顔色が一気に青ざめる。

「ガノーセントラルデパート大バーゲン…」

アニスは冷静に読み上げる。

「これがどうしたんじゃ?」
「あ、姉ちゃんの衝動買いは人の域を超え…」

ベルギーは何か嫌な空気を感じ言葉と途中で止めた。

「なにか言ったかしらオ・ト・ウ・ト・ク・ン?」
「ゴ、ゴ…ごめんなさい〜」

パイナはそのままの視線でキュアンを見つめる。

「来てくれるわよね?キュウィーさん。」
「おい、強制になっているじゃねえか〜!!」
「あったりまえでしょ。年一度の大バーゲンよ!この日のために私がどれだけ貯めていたものか…」
「いいオーラがでとるのぅ。」
「おい、B.K.傍観してんじゃねえ〜!!」
「…ブルブル」

パイナの気迫はかなりのものであったのであろう。アニスもソファーの端で身を震わしていた。

「来てくれるわね?」

もう一度同じ言葉。
キュアンにはさっきよりも重々しく聴こえた。

「はい。」

泣く泣くそんな言葉が出ていた。




次の日…
5人は長蛇の列の中にいた。

「まだ開店1時間前だというのに結構人がいるね〜」
「ほんとだ…いっぱい。」
「当たり前でしょ。年に一回の大バーゲンですもの。いいベルギー。周りのヤツは全て敵よ!」
「おいおい。変な争い起こすな。」
「なに言ってるのよキューちゃん。ここは戦場よ!」

「ほ〜周りの者も、パイナと同じオーラが出ておる。実に興味深い。」
「B.K.!お前は何に関心してんだよ!」

こんな感じで時間は徐々に経過していった。
それと同時に人の数は段々増えていった。
前を見ても人、後ろを見ても人。
そんな状況になっていた。
そしてついに…

『ガノーセントラルデパート大バーゲンただいまをもって開始します。』

スピーカー音が天高らか鳴り響く。
それとほぼ同時に…

「「「わぁぁぁ!!!!」」」

周囲に歓喜の声が響き渡ると同時に大量の人はデパート内へと突入を開始する。

「さ〜みんな行くわよ!!離れるんじゃないわよ!!」

パイナは一括した後デパート内部へ突入。
他のメンバーも半分引きずる様な感じに中へと入った。

まずパイナはブランド品売り場へと駆け込んだ。

「今年こそゲットしてやるわよ!クラフィティー製のバックを!!」

組織にいた時の俊敏さをフルに活用し、目的の品を探しだす。

「これよ!」

手を伸ばした瞬間に、複数の婦人もバックの柄の部分を掴んでいた。

「私が一番初めに掴んだのだから私のものよ!!」
「あ〜らあなたみたいな貧乏人無勢がなに言ってるのよ。」
「オバサンには似合わないわよ。」
「オバサンですって!きー!!許せないわこの小娘!!」

売り場は修羅場と化す。





デパートに入ってあっという間に2時間はたっていた。
キュアンとベルギーはすでにぐったりとした顔つきになってた。
そしてその両手には前が見えないほどの量の包装された箱や袋があった。

「おい、パイナ。まだ他に回るところがあるのかよ。」
「お姉ちゃん〜もう勘弁してよ〜」

「なに言ってるのよ!!他の敵が食事に行っているこの間が一番狙いなんだから!!」
「他になに買うって言うんだよ!」
「さ〜いくわよ〜!!」

「ん?あれは?」

キュアンは箱の隙間からパイナのメモを盗み見ることに成功した。

(まだ半分も終わってないじゃねえか!!殺される。マジで…)

そう判断したキュアンは。

「パイナ少しトイレ行ってくる…」
「後にしなさい!今は買い物が先決よ!!」
「こっちは1時間も我慢してんだよ!」
「仕方無いわね。」

キュアンはその場に箱等の塊を置くと走りだした。

「ご主人様そっちにはトイレは…」

アニスはキュアンの後を追い走ってくる。

「げっ、バレる。仕方ない…」

キュアンはアニスを抱き抱えエレベーターへと駆け込んだ。

「ご主人様、どこへいくのですか?」
「誰にもみつからない場所だな。」

そういうとキュアンは最上階へとボタンを押した。

「最上階?」
「ああ、まあ行ってみればわかるさ。」

最上階に着くとそこには関係者以外立ち入り禁止を張り紙がされていた。
さらに扉にはテンキーが施されており一般客は入ることが出来ないつくりになっている。

「どうするんですか?」
「まあ、昔組織の仕事でココに来たことがあるんでな。」

キュアンはなれた手つきでパスワードを入力する。
すると扉は開かれた。
そしてキュアン達はそのまま屋上へと上がった。

「うわ〜高い…」

アニスは口をポカーンと開け驚いた。

「ああ、そうだな。なんたってこのデパートはこの街で一番高い建物だからな。」

とキュアンは説明する。
実際ガノーセントラルデパートは30階立ての超高層デパートなのだ。
そこの屋上から見える景色といったら凄いものである。
正面には海が広がっており、その後ろには山々が広がっている。
そしてその間にこの街がある。
さらに今日は雲ひとつ無い晴天であった。
アニスが感動するのも無理も無かった。

「ご主人様どうしてここを?」
「さっきも言っただろ組織の任務だって。
まあ、この場所に来たのは俺も嫌いじゃないという個人的な意見だけどな。」

するとキュアンは床に腰をおろし空を見上げた。
続けてアニスもペタンと腰を下ろす。

「しばらくここで休憩だ。」
「パイナさんに怒られますよ。」
「あいつに付き合っていたら命がいくらあっても足りんわ。」
「ふふ。そうですね。」

とアニスは笑顔を浮かべた。

「お前達が来てもう3ヶ月になるんだな。」
「はい。」
「あれから白騎士には動きが無いのが妙だな。」
「はい。お父様もそれについて調べています。」

「まあ、考えても仕方無い。
ゆっくり出来る時にゆっくりさせてもらうさ。」

丁度その時風が通りぬけた。

「気持ちいい風。」
「ああ、そうだな。」
「ずっとこのままだといいのに…」
「どうしたアニス?」
「このまま戦いなんていないでご主人様やお父様、パイナさんにワップルさんと一緒にいたいなって。」
「そうだなその為にも早く白騎士を倒さないとな。」
「はい。」



「さぁ、そろそろ戻るか。アニス。」

2人は立ち上がり振り向いた。

「!!」

そこには一人の少女が立っていた。
金色の髪と瞳の少女が…

「ふふ、こんな所にいたか『魔の落とし子』よ。」
「『魔の落とし子』?なんのことだ?」

一瞬その身が凍えるような殺気をその少女から感じた。

「ご主人様危ない!」

アニスが全力でキュアンを押し倒した。
とそれとほぼ同時に後方に爆発音が鳴り響いた。

ドーーーン!!!

後ろを振り向くと出入口が跡形もなく吹き飛んでいた。
そして再び少女の方を見た。
少女の手には一丁のショットガンがあった。

(一体どこから!?)

2人が驚く間も無く少女は再びその銃口を2人に向けた。

「次は外さない。」

(くっ!逃げ切れない!)

少女は無情にもその引き金を引く。


光が一閃する。




「生きている…」

キュアンはゆっくりと目を開けた。
目の前には漆黒の長剣を持ったB.K.が立っていた。

「B.K.!またお前か。我々の邪魔をするな!」
「お前さんたちの思う通りにいくと思わんでほしいの。サティ。」

そしてB.K.は剣を構える。

「ふん。今日は軽い挨拶だけにしておこうか…」

そういい残すと少女は消えていった。

「アイツは一体…。」
「白騎士と似たようなものじゃよ。」
「敵はアイツだけじゃないということかよ。」
「そうじゃ。しかしサティが出てくるとはな…只ではすまんぞい。」
「お父様…」
「まぁなにがあってもアニス。お前は守ってやるから大丈夫じゃ。」
「アニス限定かよ!」
「それより早く脱出じゃ。また一騒ぎになりそうじゃからな。」

キュアンとアニスはB.K.につかまり近くのビルへと飛びうつりデパートへと戻った。






「キューちゃん!!今までどこにいっていたのよ!
急にアニスちゃんとB.K.くんもどこか行くし…」
「あ〜すまん人ごみに巻き込まれてなかなか出られなかったんだよ。それより買い物はどうしたんだ?」
「も〜屋上で爆発があったみたくて急遽バーゲンも中止よ。まったく、なんなのよ!」

パイナの後ろを見ると半分死にかけているベルギーがいた。

「兄貴〜ひどいよ〜」
「あ、すまんすまん。今度なんかおごってやるからな。」
「兄貴絶対だよ。」
「さ〜帰るわよ〜。帰りはキューちゃんあなた一人で持ってきてね。」
「何で俺一人が!」
「言い訳できる立場かしら?」
「ごめんなさい…」

いつもの感じで家に帰る5人だった。
しかしB.K.だけは重い感じであった。


「ついに来るか…」


次回予告
ついに襲いかかる敵の襲撃。
その中には白騎士もいた。
そして…

第6話「消えた時間」
大いなる月の加護があらんことを…


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